#25 今日の健康活動
なみのりが無いのに崖上から水辺に落ちて詰んだかと思った。「そらをとぶ」の有用性を実感しながら更新です。
1日更新サボって次の日に出すのが日常回……謎の背徳感。何故だ??ポケモンやってたからか()
「くぁあ〜〜っふぃぃ〜」
ものすごい奇妙な音の欠伸をし、お天道様の祝福を受けた布団を捲り上げながら上半身を起こす。
伸びとともに体を捻り枕元の置時計を確認すると、そこに表示されている時刻は、AM10:30。
俺が昨日ログアウトし就寝した時刻は午前9時30分頃ということは…。
なんと脅威の25時間睡眠である。
やっぱり凄い疲れてたかと改めて思いつつ、気分のリフレッシュのため気怠い気持ちと格闘しながら布団を跳ね除ける。
今は夏休みだし別にこのままダラダラと寝てても良い。だが、過度の睡眠と怠慢は疲労に繋がるし、パリッとした気分でNEOをやりたいからな。
快適なゲームライフの為にも朝の活動は大切。妥協しないのが吉だ。
部屋を出て台所へ直行し、冷蔵庫を開いてキンキンに冷えた牛乳を取り出す。
そしてコップに入れたそれを掴み、グイっと一気飲み。
「ぷはぁ……やはり朝イチの牛乳は美味いな。」
飲み干して空になったコップを机に置く。カコンと鳴りながらそこに収まったコップを再び手に取り、シンクで洗い始める。
置かずにそのまま洗えば良いじゃないかって?それはそうだが、この無駄な動作が俺の毎朝のルーティーンなのだ。
「おっさんくさいよそれ」
む。飲み干した姿を見ていたのであろう妹からの小言がリビングから飛んでくる。テレビを見ているようで、所々音声が流れてくる。NEOの特集をしているようだ。
「飲む?」
「いらない、もう飲んだから。」
「そか。」
既にカルシウムは摂取していたらしく、にべもなく断られたので大人しく自分の朝食を用意するとしよう。
作ると言っても料理とは言えない簡単な代物だ。
パンをサクッと焼き、冷凍されていたナゲットを温め解凍。パンにナゲットを畳むように挟んで、間にマヨネーズとケチャップを大量投入する。
更にピクルスとチーズを加え、そしてマスタードを少々。
それでお手軽ナゲットサンドの完成だ。
出来上がった朝食を皿にのせ、リビングに持って行く。テレビを見ながら朝食を食べるのは少し行儀が悪いが、NEOの特集を見ておこうかな、と。
悠彩が座っているソファの隣にある椅子を引っ張り、テレビが見えるところに設置する。
『【NEO】行き詰まる攻略』というテロップが画面左上に表示されており、ゲストらしき人3人と司会1人、芸能人が1人といった様相だ。
もぐもぐ
「……美味い」
ジャンクだな。
司会者がスライドを切り替える。そこに表示されたのは、NEO内で現在分かっているマップのようだ。
『えーこちらをご覧下さい。NEO内最大の図書館、【中枢国立図書館】の第4レベル閲覧区域で発見された、現在攻略が進んでいた陸地の地図です。』
『なんというか、大陸と言うほどの広さはありませんね』
ゲストのうちの1人の女性が司会役の人にそうコメントをする。
『いいご指摘ですね。実はこの資料により、今まで攻略をしていた場所が「島」であったという発見がありました。』
「ふーん」
まだ攻略を初めてすらいなかった俺には無縁な話だが、攻略班の頑張りによって自分たちの場所に対する認識が出来上がって皆喜んでいる……らしい。
『島の名前はアーク第1島と言うことで……』
「なーなー、NEO攻略って今行き詰まってんの?」
画面左上のテロップが少し気になったので、NEO内の先駆者である妹に質問。
その圧倒的な知名度から、プレイしていなくてもある程度の噂や情報はSNSに流れてくる。
が、そのような噂を聞いたのは初めてなのだ。
気になると言われれば気になるわな。
「ん、まぁそうかな〜。」
曖昧な答えた方をする妹を少し怪訝に思う。なにか理由があるのだろうか。
「詳しく教えて」
「じゃあ後で遊ぼ。」
別にそんな交換条件にしなくても遊ぶのに、と思いながらも了承の意を示す。
「いいけど。」
その返答を聞くとテレビから目を逸らし、こちらを向いて話す体勢に移った。
「よし。えーっとね、先週?一昨日かな?くらいに、攻略がストップしちゃったんだよね。」
ストップとはこれまた変な表現だな。
「と、言うと?」
「最前線……1番進んでるギルドから、マップ端に辿り着いたっていう報告があったんだって。『煌光の剣』っていうギルドなんだけど、割と信頼が厚くてギルドマスターに独占欲が無いから情報を殆ど秘匿しないの。」
なるほど。
「そんな人達からの報告だから、信憑性が高いってことか。」
そんなに信じられてるということは、それなりの魅力と人望があるのだろうか。
「そういうこと。勘違いしないで欲しいんだけど、別にそのギルドマスターが良い奴とかいうことじゃなないからね。どちらかと言うと、私は嫌いな部類。」
露骨に表情を曇らせ、気分が悪いと言うような雰囲気を主張する彼女。個人的な因縁があるようだし、あまり触れないでおこう……。
「話戻すけど、さっきテレビで出てた地図あるじゃん?だいたい丸型のあの島をシックスパックみたいに分けると、右下が初期スタート地点で、左下、左真ん中、左上、右上っていう順番で攻略が進むの。」
なぜシックスパックに分けたのかは知らないが突っ込まないでおこうか。
「右真ん中は?」
「システム的に入れないっぽい。」
なんだそれ、やはりゴミゲーか?
個人的意見ではあるが、システム制限のせいで入れないエリアがあるオープンワールドはオープンワールドではない。オープンワールドの皮を被った箱庭だ。
まぁだが実際はそうでは無いのだろう。
国が絡むほどのゲームでその程度の完成度な訳がない。
というか、右真ん中の正体についての見当はもうついているのだが。
「それで『煌光の剣』の連中はマップ右上端まで到達したんだってさ。」
ふーん、なるほどね。
「それで、行く先が無くて困ってるのか。」
「そんな感じ。まぁまだ発見されてないクエストとかイベントとか色々あるし、クリアされてないのはもっとあるから、なんとも言えないけどね。今の所は閉鎖空間の箱庭ってわけ。」
まぁ、そんなもんか。
というかQSEの活動方針その③、外の神を殺すというやつの「外」は島の外という意味っぽいな。
多分。
確定では無いし、考察しすぎで発見の興奮が失われるのは嫌だから過度な考察はしない方向で行こう。
「色々ありがと、理解深まったわ。」
教えてくれた妹に感謝しながら椅子から立ち上がり、食器を片す為に1度キッチンへ戻る。
パンからはみ出てしまったのであろうケチャップとマヨネーズが付着しているのを水洗いし、食洗機(乾燥オプション付き)に投入。軽い油汚れくらいならそれがどうにかしてくれる。
「上戻るの?」
ポチッ
ブオーンと唸るような音を立てながら食器乾燥機が動き始める。
「おう、続きやるから。」
「じゃあ一緒に遊ぼ?」
テレビを消し、リビングのソファからこちらを伺っている。
俺はいいんだが……
「忙しいんじゃないん?」
「忙しい。」
「じゃあダメじゃんか。」
むー、っと頬を膨らませているのがキッチンからでも見える。彼女の所属しているVR事務所では、夏休み初めに連日○○時間配信とかいうイベントをやるそうで、ここ数日はとても忙しくなるらしい。主にゲームとか企画とかで。
その中でNEOもやるのだろうが……まぁ配信中には遊べないわな。
「来週くらいなら大丈夫?」
「……うむ。たぶん。」
「じゃあそこくらいで一緒にやるか。」
まだ少し不満そうだか、仕事だからしょうが無いし何より彼女自身も楽しめるだろうから、いいイベントである。
俺にはどうしようも無いので彼女を放置し自室に戻る。
そしてトイレと水分補給を済ませ、VRチェアに座る。
日課のゲームはどうしようかと少し迷うが─────
「新しい世界が楽しみだからな〜」
────まあいいか。
と、いうことで。
「開始っと。」
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お手軽ナゲットサンドは果たして美味いのだろうか?
やったことないんだよな……
誰か作ってみて感想くださあ
ゲーマー家族な彼らは、いつも誰かしらがゲームしているので同じタイミングで食事をすることはほぼありません。そのため、彼らは腹が減ったら自分でなにか作って生きています。ほかの家事も同じで、1回の稼働時間が長い洗濯機などは前日の夜に洗い物を集められ次の日の朝に使用されます。
そんなこんなで彼らは非常に高い家事力をそれぞれ持っているのです。




