#24 我思う故に我ありと言うが、我思わないのに存在する場合はどうなのだろうかという議論
割といい感じに纏められたと思った話。
そういえば僕ものすごく誤字りまくりですね。いつも報告ありがとうございます。
ここで嫌なところが、作者にしか分からない誤字があるところ。所長は16代目です。6代目ではございません。失礼いたしました
作者誤字修正のために気づかないうちに少し変わってるかもしれませんがご了承ください。
─────と、話すべきことはこれくらいだろ。」
「……なるほど。」
所長──アリア・ジークフリートの口から語られた情報を頭の中で整理する。
長くなると言うから座って聞いていたが、長くなると言っても話していたのは10分程度だった。
その中には雑談やミモザとの戯れが含まれていたので、内包されていた情報量は大したことは無い。
洗練された情報量の中に、超重要な真実が!………なんてこともなく、ただただそれっぽい情報が与えられただけだった。
だが、ちゃんとした情報が得られなかったのは所長が話そうとしなかったとか、俺に対する嫌がらせとかでは無いようで。それにもれっきとした理由があった。
所長曰く、「私もあんまり知らないんだよな。」と言うことである。
なんだそれ?と思ったが、本当に知らないらしく、彼女自身も困っているようだ。
現在は16代目であるようだが、どこかの代で情報伝達が上手く行われなかったタイミングがあるっぽい。そのせいで、現在情報としてあるのが、基本方針だけ。
しかもその基本方針がだいぶ大雑把なようで。だいたい3つ。
大まかに言うと、
その①、死ぬ気で世界の治安を保つこと。
その②、正体を大々的に晒さないこと。
その③、外の神を殺すこと。
の3つだ。
これが、現在俺及び所長、ついでにミモザちゃんが知っている「QSE機関とは何か」である。正直何を言ってんのかよくわからんし、所長も分からんらしい。所属している本人すらよく分かっていない組織ってどうなんだ?とは思うが、仕方ないのだろうか。
ちなみに俺が勧誘された理由はただの人員不足だそうだ。妥当というか、安牌な理由だな。
そんな自分のことすら分からない組織に入ろうとするやつなど居ないだろうし、人員不足なのも道理。まぁ、存在を秘匿してるってのもあるのだろうが。
「じゃあちょっと、気になったことを幾つか聞いてもいいですか?」
整理し終わったので質問タイムとしよう。
「おう、なんでも聞け。」
「じゃあまず、勧誘したのが俺なのはなんでですか?他のプレイヤーでも良かったと思うんですが。」
俺はこう言ってはなんだが、普通の人では有り得ないほどのイベントとフラグを発生させている……はずだ。心当たりが多すぎて、どれを参考にされたのか分からない。それが分かればこの機関に対する本質的理解も深まるだろう。
「それはマリーから話を聞いたからだな。なんだかんだ有耶無耶に言いくるめられて釈然としないってモヤモヤしてたぜ、アイツ。」
「へぇ、親交があるんですか?」
「あー、まぁマリーと私は幼馴染みたいなもんだから。」
それか。所長と団長は個人的な関係があったのか。そこで出てきた「変なやつ」を気に入ったのだろう。
これは……組織の方針とかじゃなくて純粋に所長の好みっぽいな。
「じゃあ、俺とミモザちゃんの他に所属しているのってどれくらいですか?」
割と歴史がある組織らしいし、規模的には3桁は見積もっていいんじゃ……
「分からん。」
「は?」
「ああ、すまん。言葉の綾だった。」
ああビックリした、きっとなにか重大な誤解が……
「ここ数年、他の支部と連絡を取り合っていなくてな。もしかしたら潰れてるかもしれんな!ということだ。」
は??
そう冗談じゃ済まないことを、ガハハハハと豪快に笑いながら言う彼女に、思わず正気を疑うような視線を向けてしまう。
ミモザも少し呆れるように笑っているのを見ると、これが彼女の平常運転らしい。
ああ、ただのヤバいやつか(納得)。
「まぁ、お前が来てくれたお陰でようやく大々的に行動を起こせそうだ。私は嬉しいぞ。」
「え?まだ入るって決めた訳じゃ「は?」ひぅっ」
この女、気に食わなくなるとちょくちょく威圧してくんの怖すぎだろ……
「えっ?ユウ君入らないのぉ……?」
ミモザちゃんまで入る前提で話してるの!?
「先輩って呼んでくれたのにぃ……」
「あ、入る。入ります。だからそんな泣きそうな顔しないで〜。」
ミモザちゃんの秘技、天然泣き落としが炸裂。元々そんなに嫌な訳でもなかったので流れるように了承する。
よし、と満足そうに頷いた所長を傍目に見ながらため息をつく。なんか釈然としない入り方だが、これで環境が整うだろう。
とりあえずこれからは、QSEの行動方針に則りながら攻略を進めて行こう。
内なるモチベーションが湧き上がって来たところで、疲れがだいぶ蓄積していたことを思い出す。
「そうだ。メンバーが1人増えた事だし、色々と用意しなきゃだな。身分証に装備に、金も欲しいんだっけか?それと……」
俺が入ると決まり、嬉々とした顔でこれからの行動を考えている所長の言葉を遮る。
「あ、その前にお願いしたいことが。」
「なんだ?」
「眠いので寝る場所を……」
「ああ、そんなことか。それなら地上に宿屋があるだろう?そこでいいだろ。」
そうできるならそうしていた。だがそういう訳にも行かないのだ。厄介な奴らがまだ俺を探してうろついているだろうから。
「それはちょっと諸事情があってですね……無理というか難しいというか。」
俺も実情を知らないし、なんで追いかけられてるか分からない。そのせいで非常に曖昧な説明となってしまうが、所長は気にする様子もない。QSEの事を言ってられなかったな……自己状況の認識は同程度しか進んでなかった。
「そうか?じゃあ仕方ない。強行突破だな。」
そう答える所長。なんとも、性格が出ているというかなんというか。まだ出会ってすぐだが、掴みやすいキャラクターだな。
「QSEの行動方針その②を忘れたんですか?所長ってつくづく脳筋なんですね。」
「新人が誰に物言ってやがる。そうじゃなくてだな。物理的じゃなくて、権力でどうにかすんだよ。」
それは強行突破とは言わないだろう。というツッコミは内側に秘めておき、とりあえず従っておこう。早く済むだろうから。
「そうですか。じゃあ頼みます。」
「おうよ。」
何故か凄いイキイキした表情で部屋から出ていった所長を放置し、椅子に座り寛ぎながら紅茶を1口ちょびっと飲む。
さっきからずっと置物のように固まっているミモザを一瞥すると、ギギギ、と音を立てそうな動きでこちらを見つめ返してくる。
構って欲しい……のかな?
無視しようかとも思ったが、それは良くないと先程学んだので───
「そういえばミモザちゃんはなんでQSEに?」
ちょっと話し相手になってもらおう。
「!あ、えっと、じ、実は!私のおじいちゃんが先代の統率者なんですっ……」
話しかけられたことに驚いたのだろうか、少しどもりながらもそう教えてくれる。ちょっと嬉しそうだな。話したいけど喋るのが苦手なのだろうか。
「へぇ〜そうなんだ。凄い人?なんだね。」
「は、はい!そうなんですっ!私のおじいちゃんはすごくてっ」
余程おじいちゃんが好きなのだろうか、先程までの縮こまった態度が嘘のように消え去り、どこが凄いだのかっこいいだのとマシンガンのように喋りだす。
この国で1番強かった、英雄と呼ばれていた、魔物の暴走を1人で食い止めた、などなど。彼女が語る人物像が本物であればよっぽどの凄い人なのだろう。
「それで今その人は何処に?」
「あ……それは……」
嬉しそうだった顔が急激に暗くなる。
しまった、地雷踏んだか。
「いや、いい。ごめん。俺が無神経だった」
「っ……」
また泣きそうになってしまっている彼女を見て申し訳なく思う。ミモザちゃんにはなにか辛い過去があるようだ。それが今の気弱な態度に繋がってしまっているのだろうか。
気まずい空気になってしまい、沈黙が続く。
「よう!一室確保したぞ!……ってオマエ、またミーちゃんを……」
「ちが、わだしまだ泣いてまぜん」
涙声でそう言う彼女。信憑性ゼロな言葉だが、なにかを察したのだろうか、言葉を留める所長。
「あー、そうか。じゃあユウ、とりあえず着いてこい。」
鼻をすすりながら俯いてる彼女を見ながら、俺は所長の後を追って部屋を出た。
こんなつもりじゃなかったんだけど、思ったより重くなってしまった。
実は作成秘話(笑)の中に、シリアスタグをつけようか迷ったというものがあります。
そのほんの一端です。
ここからはようやく通常の攻略が始まります。お待たせしました。
QSEのくだり、こんな長くするつもり無かったんですけどなんか長くなりました。
まぁ書けちゃったからしゃーないわな




