#22 助け舟が来た。今にも沈没しそうだ。乗りますか?YES/はい/はんぶん
更新でーす。あんまり進みません。
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諸事情により機関の名前をちょっと変えました
「と、とりあえず少し移動しましょう。私の走るコースに付いてきてくださいぃ。」
そういって立ち上がった彼女は、軽快に屋根の上を伝い移動を始める。
屋根の上をスライディングしたり、路地を飛び越えたりする彼女は、先程の気弱な姿からは想像出来ないほどの躍動感が感じられる。
オドオドビクビクしている割には凄い動けるんだな。もっと自信持てばいいのに。
俺が追いつけない事は想定していないのか分からないが、割と無理あるだろっていうコースを選んでいる。わざわざそんなとこ行く必要あるのかな?と思ってしまうような複雑な移動経路だ。
そんなこんなで隠れながらアクロバティックに移動すること約5分。
どうやら目的地に到着したらしく屋根から飛び降りる彼女に続き、俺も壁を伝い蹴ったりしながらながら降りていく。
屋根の上から降りるとそのまま路地を走り出す彼女
壁を蹴り、木箱やなんやらを飛び越えたり滑り抜けたりしながら
最終的に彼女が立ち止まったのは、裏路地の途中の端にある古ぼけた井戸の前。
壁を蹴って井戸の前へ到達すると、ちょうどそのタイミングで俺の耳に入るものが。
〘スキル【軽業】がレベル上限に到達しました〙
〘スキル【軽業Lv10】がスキル【立体機動Lv1】へ進化しました〙
〘スキル【壁走りLv1】を獲得しました〙
「お?」
あまりにピッタリなタイミングで鳴ったアナウンスに思わず声がでる。ちょうど到着した瞬間にスキル獲得とは、なにか作為めいたものを感じる。
もしかして、わざわざ難しいルートでアクロバティックに移動してきたのって…………
「あ、あの〜、す、スキル獲得出来ました……?」
「……うん。出来たよ。」
今の俺は凄い微妙な顔をしているのだろう、と思いながらも平常心を装い返答する。
「よ、良かったです!じゃあ、【壁走り】を発動しながらついてきてくださいぃ……」
この言い方はやっぱり、狙ってスキルを獲得させたっぽいな……
おっとぉ?きな臭くなってきたぞ?何者だこの子。確実にただのNPCじゃない。
ただのNPCが、スキルを獲得するための完璧な動き方を把握しているわけがないし、妙に動きがいいと言うことはしっかりとした実戦の戦闘経験があるのだろう。
少し顔色を伺うようにこちらを見つめた後井戸に飛び込んでいく彼女の姿を見送りながらも少し頭を悩ませる。
正直、Flannelとかいうヤツらの厄介そう具合は半端では無い。だから完全に撒くためにもお金と装備と隠れ場所とが色々いる。
そこにちょうどいい助け舟が来たと思ったんだけど────
「────急に現れたカルパチア号も同じくらい胡散臭い、と。」
うーん、どっちかだよなぁ……。
どっちも信用出来ないし怪しいし何されるか分からんのよなぁ……。
あー、まぁでもアイリスとかいう人よりは、オドオド少女の方が優しそうだし、そもそもNPCだから遺恨も残らんだろう!
自分の中の考えをまとめ、井戸の淵立つ。
井戸の中を見下ろしてみるが、真っ暗で何も見えない。この先には何があるのだろうか?
少しの迷いの裏で隠しきれない好奇心が湧き上がってくるのを自覚する。
ここに飛び込むとなると尻込みしてしまうがどうにかなるだろう!
深呼吸。
よし。
ケツイがみなぎった。
「よっと。」
掛け声と共に飛び込み、そして俺は暗闇に呑み込まれた。
◇
【壁走りLv1】を発動すると、段々と下向きの重力が緩和され、横向きの重力が加わるのを感じる。そして30秒程壁を滑るように落ちていった。
ズドン
足に衝撃を感じると共に、臓物を持っていかれているような某「落下感」が消失する。
落下中の暗闇から一転し急に光に当てられたことで目がチカチカする。
目を押さえること数秒、目が光に慣れてきて周囲の状況を捉えられるようになり目を開く。
視界が正常になり1番最初に目に入るのは────
「不気味な遺影…?」
校長室によくある歴代校長の写真、のようにたくさんの写真(ただし黒塗り)が壁に並べてかけてある。
お?なんだ悪趣味か?悪い感じの組織か?
「あのっ!」
少し下を向くと、俺に話しかけてくるぴょこぴょこしたアホ毛が見える。
屋根に座ってる時に話しかけられたし、移動中はあんまり近づかなかったからどれぐらいの身長差分からなかったんだけど、割とあるんだな。
「あ、あれは遺影なんかじゃ、ありません!栄光ある歴代統率者様の影像です!!」
「ほーん」
エイゾウ?なんだそれ。動かないから映像では無いだろうし、影の像ってことか?多少の疑問が浮き上がるが、とりあえず続きの言葉を待ってみる。
少しの間が出来て静けさが帰ってきたのを感じながらも彼女を見つめていると、目を泳がせプルプルしながらも口を開く。
「だ、だからっ、その、バカにするのは!ゆるっ、ゆるし……」
「ゆるし?」
ぷるぷる
「許ひましぇ……ぅぅ、何でもないです……」
可愛い(確信)。
何だこのkawaii生き物は……
俺がさっきからちょっと警戒していたのを察したのか分からないが、機嫌を損ねないように頑張って喋ろうとしながら精一杯自分の組織?の長の栄誉を守ろうとするその姿になんとも言えない庇護欲が湧く。
俺の中の秘めた母性が刺激され、思わず頭を撫でてしまう。
「ぅぇっ?………ぁぅぅ」
可愛い。非常に。
この可愛さで何かを企むわけが無いな。疑っていた俺が悪いわ。
「かわいい」
(ごめんね、バカにするつもりはなかったから。)
「!?…恥ずかしいですぅぅ……」
しまった逆だ。まあいいや。
恥ずかしがりながら体を捩りそっぽを向くその姿にまた癒しを見出す。この可愛い生き物に癒されながらも、イベントが進行しなさそうだなと思い、少しキッカケを作ろうと思い立つ。
色々考えることや気になることがあるのだが、とりあえず撫で続けながら大前提となる質問をする。
「それでここは何処なんだい?」
その質問にビクッと反応を見せ、しまった!といった具合に目が開かれる。かわいい。
「はっ!わ、忘れてましたっ!」
撫でられながらもこちらへ完全に向き直り、「こほん」と咳払いのようなものをする彼女。その目で俺の目を捉えながら、少し手を横へ広げながら────
「た、対外調停機関『QuietusSanctionEngine』へようこそっ。わ、我々は貴方の訪問を歓迎します!」
「わ、私は『ミモザ』。ミーちゃんって呼んでください!貴方のセ、ン、パ、イになるんですよ!」
と、ミモザと名乗る少女は、無い胸を張りながら高らかに宣言しニコニコしてコチラを見つめていた。
人探しで初っ端から懸賞金かけて懸賞首にするのおかしくね?アイリス頭おかしいんか?というご指摘を頂いたので、同じく疑問に思ってるかもしれない方向けに理由を載せときます。
コピペです。
前提条件として、アイリスちゃんは非常にアンチが多いです。それはプレイヤーにもNPCにも。
もう1つの前提条件として、NEOの世界においてお金の重要性は他のゲームよりずっと重いです。
まず、初っ端から懸賞金かけてるのが頭おかしいということですが、通常の場合人探しには冒険者ギルドを仲介して依頼という形で成立させるのと、ゲーム外でSNSを活用して人を探す形が主です。
前者のメリットとしては、NPCも探せる、ゲーム内通知によりリアルタイムで必要な情報だけが得られる点です。
この場合は、情報提供者→冒険者ギルド→システム→依頼主、という順で情報伝達が行われます。
後者のメリットとしては、拡散力がとても大きいことが挙げられます。ですがアイリスは「有名人」なので、過剰に反応が集まるSNS上だと本当に必要としている情報かの取捨選択が難しく、また1度ゲームから出ないといけないので情報が必ずしも新鮮とは言えません。
よってこの場合は前者の方法で人を探すのが適切ですが、ここでまた問題が発生します。
Flannelなどの超大手ギルドは、冒険者ギルドを介さない流通ルートによってアイテムやモンスタードロップを捌く場合があり、Flannelはまさにそのようなギルドです。
こういう形は冒険者ギルドにとってはあまり良い形とは言えません。ですが、その時に生じる反対意見などを金や権力でねじ伏せていた節があるので、冒険者ギルドとの関係は良好どころか敵対寸前くらいなんです。
よって、冒険者ギルドを仲介する前者の方法も使えません。
そこで登場するのが、冒険者ギルドを介さず、システム上のみでやり取りが発生する懸賞金制度。懸賞稼ぎにはアイリスのアンチが多くいますが、その大半は金で黙ります。前者の、冒険者ギルドを仲介する方を金の力で無理やりやることも出来るのですが、かかる金額が懸賞金の方が大幅に少ないので、結局は懸賞金をかけるという形に落ち着きます。
なんでそこまでするの?っていう疑問があると思いますが、それはいつか分かります()彼女の過去的な話をどこかに入れるので。
ちなみにAliceちゃんについてですが、あの子はおつむがあまり宜しくないのと、立場上人探しをする機会が非常に少ないせいで、冒険者ギルド仲介の依頼制度を知らなくて、リスナーの提言を懸賞金関係として誤認したせいで懸賞金をかけているのであって、あの子は普通に冒険者ギルド仲介でやった方がいいです。急を要する訳でもないし、大半のプレイヤーは冒険者ギルドに一度は行くのでそのタイミングで通達が行きますから。




