#20 再び始まる鬼ごっこ(プレイヤーver)
実は今日僕の誕生日なんです。おめでとう自分。
ちなみに言ってなかったけど
◆⟵視点の切り替わり
◇⟵場面の切り替わり
です。
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◆
モグモグモグモグ、ごっくん。
「それで?俺に何の用?」
私が探していたこの男は色んな意味で理解不能だった。
手に持っていた焼き鳥を目の前で喰らい咀嚼し飲み込む。そして満足そうな顔をした後、噴水の縁の上から私たちを見下ろしながらそう問いかけてくる。
「貴方、アイリス様を無視しておいてぬけぬけとッ!」
「リル、落ち着いて。」
「でも、!」
「いいから。」
「………はい」
私に窘められられ、ギリリと男を睨みつける女の子。ギルド『Flannel』の大事なメンバーの内の一人、『リルティアス』。金髪ツインテールの可愛い子だ。
気が強く喧嘩っ早いのが玉に瑕で、今もこの人にすぐ斬り掛かってしまっていた。
が、この男の態度は寛容な私も流石に少し不愉快だ。私たちのことを舐めているような気配がありありと伝わってくる。
「貴方、さっきの無視はちょっと酷いと思うけど?少し不快だったわ。」
少し、気持ちが滲んで語気が強くなってしまった。そう反省しながらも男の反応を伺う。
何を思ったのか、男は少し意外そうに目を見開いた。
「ああ、さっきのは俺に話しかけてたのか。そりゃ悪かったね、このゲームを始めて1日も経ってない初心者に君たちみたいなプレイヤーが興味あるとは思わなかった。」
「はぁ!??」
昨日に続き再びの驚愕。
聞き間違いだろうか?いや、確かにこの男はそう言った。
このゲームを始めてからまだ1日も経ってない、と。
馬鹿な。そう思わざるを得ない程の非現実的でフィクショナルな発言だ。どんな不具合があれば初心者が一日で未開拓エリアをクリア出来るというのだ?
明らかな嘘、明確な虚言である筈なのだがこの男には何かあると頭の片隅で主張する私もいる。
事実、コイツの装備は初心シリーズ、初期装備だ。
それだけで信じられるかと言えばもちろん信じられない。だがそう嘘を付くメリットもあまりないだろう。
後ろをチラリと見ると、絶句しているギルドメンバー達が見える。私と同じ気持ちなのだろう。
ふぅ、と色々と混乱している頭を抑えながら息を吐く。まだ色々と整理出来ていないが、ずっとここで話している訳にも行かない。
「とりあえず、こんな所で話す訳にも行かないわ。移動しましょう。」
「……何処に?」
怪訝そうな顔で男が問う。
何故か分からないけど、私たちは随分警戒されているみたい。
まぁリルがちょっとやんちゃしたし仕方ない、と自分の中で割り切る。
「すぐ近くに喫茶屋があるの。」
「……ふーん」
何か含みを感じる返答だが、気にしててはキリがない。この男、なんというか非常に胡散臭いのだ。
まぁいい。
後ろに振り向き、ギルドメンバー達に目配せをする。
行き付けの喫茶屋で、彼女達も場所を知っている。先に席取りをしてもらおう。
彼女たちはちゃんと私の意志を汲み取ったようだ。喫茶屋の方向へみんなが歩き出す。
そうして、ギルドメンバーのみんなの意識が1度あの男から外れた。
「じゃあ私たちに付いてきて…………え?」
………………居ない?
◆
結論から言おう。俺は逃げた。
何でかって?いや常識的に考えてあんな怖い奴らに付いてく訳が無いだろ。
通りすがりに斬りかかってくるやばい奴に、化け物みたいなスピードで回り込んでくる女侍。そしてそのヤバいやつらが狂信しているあのアイリスとかいうプレイヤー。
怖すぎんだろ……新手の宗教か?
「──────!!!」
俺が逃げ出したのに気づいたのか、広場から奴らの俺を探す声が聞こえる。
怒り心頭で俺を探しているのだろう。何故かは知らんがな。
本当はギルドに行きたかったのだが、不幸なことにあの不審者達の進行方向と被ってしまったのが非常に宜しくない。
ひとまず先に防具屋に行ってこの初心装備を変えよう。あとどうにかしてプレイヤーネームの表示を隠せないだろうか?近づくと頭上にプレイヤーネームが出る仕様なんだよな。
広場から少し出た当たりに今俺はいる。この近さだと見つかるのもすぐだろう。さっさと移動しようか。
◇
何とか姿を隠し、撒きながらも目的地に到着。
俺は防具屋に来た。来たのだが───
「────……金がねぇ……」
そうだわ。俺金欠だったわ。だから俺ギルド行こうとしてたんだわ。
くっそ、『聖白の眼装』なんであんな高ぇんだ?めちゃくちゃ値切っても5000弱って……
ゴミゲーめ、システムもゴミなら民度も低いようだ。
NPCも性根がきっと悪いに違いない。聖白の眼装の元値は2万モネくらい。
とんでもないぼったくり具合だ。そんな値段なのだし、値切ってやっとちょうどいいくらいだろう。
いや、もっと値切って置けば良かったかな……
後悔先に立たずと言うのはこういう事か、と妙な納得をしながらもどうしようかと頭を悩ませる。
が、それも長くは続かない。
「──いたぞ!あそこだ!!」
「げっ」
まぁた見つかった。
めんどくせぇな、と零しながら裏路地に入っていく。
なんか段々と俺の事探す人数が増えてんだよな。あのFlannelとかいうギルドのギルドメンバーではなさそうなイカついプレイヤーとかも鬼ごっこに参加し始めている。
何か手を打たないとこのまま捕まっちゃいそうだな。
せっせと足を動かし裏路地を爆走しながら考える。
むーん、とりあえずどうにかして金を増やせればいいんだけど。
まずは今の状況を切り抜けないとだな。
げっ
入り組んだ裏路地を走り抜け、繋がる先から出ようとする。が、我が逃走を阻むものを発見。
待ち伏せされてる。恐らく、俺を発見した奴らと連絡か何かを取っているのだろう。
どうしよ?
……顔見知りじゃないことにかけるか。
「おーい!!」
待ち伏せしている奴らの方に手を振りながら駆けていく。
少し驚きながらも、手を振り返してくる彼ら。
「例の奴、お前らの方行かなかった!!?」
「え、いや来てねぇぞ?」
「マジか!!じゃあ俺ちょっと他の路地見てみるわー!」
「お、おう。──────あれ、今Uって」
初対面の俺に話しかけられて少し吃りながらもそう答え、2人で道を塞いでいたのを俺が通るために両脇に避けてくれる。ありがとな!!!
そのまま飛び出すように路地から出て、すぐそこに積んであった木箱の上に登る。
そして跳躍を使って屋根の上へ。流石に民家の上までは探しに来ねぇだろ。
「ふぃー、逃げんのも精一杯だな。」
何とか乗り切って一息つく。
屋根の上からさっきの裏路地を覗いてみると、俺を追ってきた奴と待ち伏せしていた奴らが口論しているのが見えた。
俺に騙されたことに気づいたらしく、慌てているようだ。
愉快愉快。
「愉快なのは良いんだが、どうしようマジで。」
ずっと追われたままゲームすんの?そんなのやだよ俺。
「……あのぅ、もしかしてなんですけど〜お困りでしょうかぁ?」
「うん。お困り。」
マジで困るなぁ、主要施設を使おうとしたらFlannelに取り押さえられてまう。もうちょい丁寧に対応しとけばよかった。
「良ければなんですけどぉ、少しうちの組織に来ませんかぁ?匿いますけどぉ……。」
「え?マジ?じゃあお願いしようかな〜」
上手く隠れられる所があれば良いんだよな〜。ありがたい。
「いや誰!?!????」
「ひぅっ」
誰!?なんでナチュラルに屋根の上で話しかけてくんの!?!?え!?!?
俺の大声にビックリしたのか、ビクビクしている女の子が俺の横に座っている。
オドオドしていて気弱そうな、小動物系の女の子。PNを確認しようとすると、頭上に表示が無いことに気づく。
NPCか?
でも普通のNPCにしては挙動がおかしい。明らかに。屋根の上にいるプレイヤーに話しかけてくるやつが居るかよ。
どういうことだ?特殊なフラグでもいつの間にか建てたか?
うーん
「あのぉ〜、お悩みのところ申し訳ないんですけど、こんな所で話すのはやめて、一旦私の組織に来ませんかぁ〜?」
これは正論だわ。
昨日のやつの感想にあった質問についてです。
他のゲーム作品でよくシステムとして、「街の中では攻撃ができない」的なものがありますよね。
NEOではどうなの?ということで、お答えします。
結論から言うと、攻撃出来ます。キルも出来ます。
出来ますが、デメリットが大きいです。
まず1つ目は、PKを行った街に入ることが出来なくなります。いわゆるブラックリスト的なものに載るからです。
2つ目はそもそもPKに対してのデメリットがあります。具体的に言えば、デスペナの増加。
そして3つ目は、すぐに保安機構が飛んでくるってとこですね。
普通に考えて、人に攻撃して負傷したら怪我して血が出ますよね?NEOにおいて、その血はシステムによって「ポリゴン」に変換されます。保安機構はそのポリゴン、つまり血を彼らの技術力によって検出して追いかけてきます。返り血だって検出する恐ろしさです。
まぁそんなこんなで、街でPKする旨みは皆無です。なのでPKプレイヤーたちはみんな街の外で狙います。だから街の中は「比較的」安全です。




