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New Eternity Online -PSだけで往く新世界-  作者: Amane Rinne
月の神獣は山頂に吼え、深き何かはただソコに
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#14 ジャンケンの真髄と称する圧倒的力技

何の回だこれ。更新です。昨日の更新がなかったのは……まぁ察してください()


対ドイツ戦、日本の逆転勝ちアツすぎた!!!!

キワキワスレスレな角度でよく捩じ込んだ!

実に残念だ。


カーテンの隙間から覗く日光が無慈悲にも目を焼く。鳥の囀りと共に起床した(機体から出た)朝6時。現在の時刻である。


ほぼ徹夜。従来ならそのまま寝ずに学校コースの苦労をかけた結果がこれかいちくしょー。

確かに長時間活動は疲れるし、事実疲労していた。だからといって刀が勝手に動くのは疲労とか関係なしに予想外すぎるんだわ。動くなよ物が動かないのは常識だろうが。


まぁ死んだのはしゃーないし、いい区切りだ。うん。きっとそうだ。


不貞腐れながらもVR機体から立ち上がり、惰性でそのままベッドインする。夏休みが始まったとはいえ、毎日この調子では死んでしまう。流石に死にたくは無いので睡眠だ睡眠。


ベッドに横たわり、目を閉じる。このまま深い眠りに……



バァン!!!



勢い良く弾かれるようにドアが開かれ、ズカズカと入ってくる少女が1人。気付かないふりをして目を瞑りベットに伏している悠に向かい直行し───



「起きろー!!!」


「ぐえっ───ッ何すんじゃぁおめえ!!」


「起こしに来てあげたんだよ!!可愛い妹に向かってなんだその態度ー!」


「もっとマシな起こし方あるだろーが!!!」


────勢いのままベッドダイブ。華奢な少女ながらもしっかりと成育した体躯。その重力(・・)はもはや兄が容易に受け止められるものでは無くなっていた。全身に分散されてはいるためその全てが1箇所にかかるようなことは無いものの、衝撃は衝撃。内臓がダメージを負ったような錯覚に陥る。


事実ちょっと前までは腹ごと内臓が削れていた訳だが。


不機嫌な時に睡眠を妨害する妹。少しは怒りそうになったが、疲れているのでそんなエネルギーはない。直ぐに自分の上に横たわる妹の上半身を起こし、そのまま場外(ベッド外)へ送り出そうとするも、頑なに退こうとしない。


労力の無駄だと判断し、言い聞かせるのと上から退かすのを諦め、呆れたような視線を送りながらベッドへ脱力する。


「何しに来た。」


「理由がなかったら来ちゃダメだった?」


上に乗ったままニヤリとした表情で返答する。


「……お前もうそんなお兄ちゃんっ子じゃねーだろ。」


「む」


「なんだよ」


少しむくれた様に頬を膨らませ、いじけた素振り(・・・)を見せるが直ぐに悪戯な表情になる。


「あきねちゃんから聞いたよ。NEO始めたって。」


「……そうだな。」


意図せずともピンポイントで今の地雷を踏んでくる妹に少し辟易するが、まぁ仕方ないことだと切り捨てる。


「遊ぼ?」


え、眠いんだけど。


「今から?」


「ダメ?」


「眠いんだけど。寝たいんだけど。」


少ししょげたように俯く悠彩。


「─…私と遊びたくないの?」


む。

はぁ、と心の中で溜息をつく。あざといと言うかなんと言うか、罪悪感を呼び起こす言い方を意図的にしてきている。


計算尽くな表情なのだ、そんなに乙女な妹では無い。どちらかと言うと破天荒な部類。それでも無視する気にならないのが狡いと思う。


どうせ、面倒なクエストでも見つけて、手が足りないとか言うのだろう。


(まぁでも……)


確かに疲労しているがどうせ夏休みだ。明日まるまる寝れば良いだろう。ここまで言われたら断る方が後味が悪いし。



いいよ。


と、口を開こうとするがそれを待たずして再び悠彩が口を開く。


「じゃあさ!ジャンケンで決めない?」


「──ジャンケン?これまた唐突だな。」


「別にいいでしょ。今日こそ勝たせてもらうから覚悟しときなよ。」



ジャンケン、勝敗を決めるにはもってこいの楽で簡単なゲームである。しかしそこに少しでも心理戦の要素を入れるとその様は大きく変化する。


ブラフやフェイク、ポーカーフェイスまたは表情操作。あるいは思考誘導などなど。その奥深さは計り知れない。


とまぁ、心理戦ジャンケンはとても奥深いわけであるが。



「じゃあ私が勝ったらあそんでね?」


「おっけー」


「あと分かってると思うけど……」


柔和な雰囲気であった彼女の視線が鋭くなり、咎めるように悠を射抜く。


「ハイハイ、わざと負けたりはしないから。」


「ちゃんと……ね」


彼らが行うのは心理戦ジャンケンでは無い普通のジャンケンであった。

まぁ普通とは程遠い駆け引きがあるのだが。


「じゃあ行くよ──」





今日こそ絶対に勝つ。そう意気込んで私は神経を研ぎ澄ませていく。


私はゲーマーだ。自他ともに認める、無類のゲーム好き。その根底には、勝率に対する欲求が多くの割合を占める。


腑抜けた声。眠そうな目に、明らかに疲労しているといわんばかりの表情。そんな様相でも油断出来ないのがこの兄である。


昔は勝てていたこともあった。だがある時期を過ぎた途端、敗北の連鎖が始まってしまったのだ。そして数年経た今でも、未だ勝てない。一回も。


少しは申し訳なさを感じるものの、こうでもしないと万が一にも勝ち目がないという現状が腹立たしくも免罪符として己の中で成立していた。


私は兄に勝ちたい。


それに、ここ数ヶ月ずっと他のゲームにかかりきりで昔のように一緒に遊ぶことが無くなっていたのも問題だと思う。


勝ちたいのもあるけれど、それ以前に一緒に遊んで欲しいのだ。


昔の私は、兄の後ろをついてまわる健気な妹だったと聞く。今はそれほど仲良くは無い。成長するにつれ、その距離は少しづつ遠くなっていた。


でも!兄離れをしたとはいえ別に嫌いになるとかではないし、もちろん尊敬してて目指すべき相手なのに、急に構ってくれなくなるのは違うでしょ!


そう心の中で憤慨する。


そっちから誘ってくれないなら、こっちが仕掛けてやるから。


じっ……と見つめ合う。

どちらが始めるか迷っているようだ。


「好きなタイミングでいいよ」


戦いの主導権を譲る兄に、そんなに私の相手は余裕なのかと悶々とする。


けどそんなことを考えていても仕方ないし、長く考え込んでいては変に思われてしまう。


ふぅ。と息を吐き精神を整える。

泣いても笑っても1度きり。


いざ勝負────



「最初はグー、ジャンケン────」





普通のジャンケン。心理戦を含まないそれは、とある1点において勝敗が決定される。


それはもちろん〘運〙だ。


3手×3手の合計9組からなる勝敗決定

だがそれは一般人に限るものであった。その一段階上に、異次元とも言っていいフィールドが存在する。



反射神経によるものだ。振り下ろされている拳の変化に対応して自身の出す手を決定するという、ある種超人的な能力を持ってしなければ行えない行動。


だが彼らはそのまた上を行っていた。



初速の形はグー。さぁお兄ちゃん、どう変える?


周りの色が失せ、行動のみが視界からの情報として限定的に処理される。

過度な集中によって周りの時間が遅くなったように錯覚するほどの高速思考。

たかがジャンケンのはずであったがそこには過度な能力行使が行われていた。


だんだん落ちていくお兄ちゃんの手。

順々と落ちていくが未だ変化は……ッ!!

僅かに手が開きはじめたパー!?なら私はチョキを……いや、また変わった!!

小指と薬指だけ握り始めた─チョキかッ

いやこれはブラフ!小指と薬指が完全に握りきってない!開き直してパーにするつもりか!



もう手を変える時間はない!勝った!!私はチョキを出せば────





「───ポン」


あーあ。

呆然とする悠彩の顔が目に入る。俺がグーで悠彩がチョキ。

俺の勝ちだ。


申し訳なさを隠しながらも妹の顔を窺うと、俯いて肩をブルブルと震わせている。その顔を覗き込んでみると、如何にも悔しそうに歯ぎしりしているのが見えて、思わず目をそらす。


そんな怖い顔しなくても良いのに。


……あら、石像のように固まってしまった。

十数秒間微動だにせず固まったままの妹がさすがに心配になり、顔の前で手を振って正気を確認する。


「おーい悠彩、だいじょうぶ?ちゃんと生きてる?」


ハッと目を見開き石化が解除されるのを見て密かに安心する。

が、拳を強く握り締め歯をギリリと食い縛り俯くのを見て違う思考が浮かぶ。


「……………………」


あーちょっとまずいかな。


「あのー、悠彩さん……?」


恐る恐る声を掛けるも、何かがリミットを超えてしまったようで。


「うるさいっ!!ちくしょーーー、おやすみばーかっ!!!」


再びバァン!!!と扉を開き、その勢いのまま部屋を飛び出して隣の部屋──悠彩の部屋へドタドタと駆け込む音が聞こえる。


部屋に残された俺はベッドにポツリと横たわっている。

はぁ、と再び溜息。

拗ねんならやんなきゃいーのに、と思いながらもベッドから立ち上がる。


勢い良く開かれた反動で再び閉まりかけていたドアを開け、スタスタと隣の部屋へ。

『悠彩の部屋(無断入室禁止)』と看板がかけられているそのドアをゆっくりとゆっくりと開くと、ベットの上で顔を枕に埋めながら足をドタドタとさせているのが見える。


まったくお年頃な妹だ。手がかかるもんだな。


「なーなー悠彩」


そう呼びかけると暴れ回っていた足がピタッと止まり、少し顔を上げて耳を傾ける気配がする。


「お兄ちゃんさ、さっきまで眠かったんだけどちょっと目が覚めちゃって。悠彩が良ければなんだけど、一緒に遊びたいなー、なんて……」


ピクっ、と反応を見せる。これは押せば行けるかな。


「ちょっと1人じゃ寂しいから、お兄ちゃんのためにも一緒に遊んでくれない?」


「…………ほかのひと呼べばいーじゃん」


枕に顔を埋めたままモゴモゴと声をだす。


「悠彩がいいんだ。悠彩と遊びたい。」


「…………ほんと?」


顔を上げ、こちらに向き直る。これは勝ったな。


「ホントのホント。他の人じゃなくて悠彩じゃなきゃ俺ダメなんだ。」


「……じゃあ仕方ないなぁ。しょーがないから私が遊び相手になってあげる」


少しボーっとした後にはにかみながらそう答える妹を見て、一安心する。


まったく難儀だなぁ……



「じゃあ早く遊ぼ!」



「あ、ちなみに俺まだチュートリアル終わってないよ」



「は?昨日から今日の朝まで何してたの?」


怒られた。

何の回だこれ。

妹とジャンケンさせる回でした。

ちな妹は兄離れ済みのお兄ちゃんっ子なクール系です。親しい人にはベタベタしてあんま親しくない人に対しては冷たい系の。

次回チュートリアルです。

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― 新着の感想 ―
[一言] お兄ちゃん離れしたお兄ちゃんっ子? 妙だな……
[一言] 初期リスが変な所に〝ポンッ〟、だったからね
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