#8 鬼ごっこしようぜ!part2 やっと観念したか!?じゃあ今からバトルな!!
1つ質問です。
割と自明ではあるんですが。
作品内でバンバンネタバレが進んでいくのと、読む側で考察の余地があるのどっちがいいと思います?
個人的には2つ目なんですが、伏線敷くなら綺麗に敷きたいので、凝りすぎて更新スピードが落ちる恐れが……
1つ目の場合は主人公がゴリゴリに考察しちゃいます
何とか熊の攻撃を捌きながらも、森の深部に突入していく。
木々の枝々を飛んだり跳ねたり渡ったりしながら逃げてるのだが、ツキノワグマも一筋縄では行かないようで、しっかり着いてきている。
というかスピード差のせいで割とすぐ追いつかれるから、クマの攻撃を弾いたり避けたりしながら進んでいく。
隙を見て攻撃したりしているのだが、まったくゲージが減らない。というか、変化はあるのだが、ダメージとして反映されないのだ。
「おらよっ!」
再び追いつかれたので、進路にフェイントをかけて熊を逆方向に慣性を持たせ、距離を離そうとする。
辛うじて当たらない引っ掻きに合わせ、避けながらその腕を剣で切り裂こうとする。
(しっかし、厄介だな)
何が厄介かと言えば、その皮膚、というより毛並みである。どういう理屈なのか知らないが、剣を刺すことが出来ないのだ。
なので、どの攻撃も撫でるようなものになり、高ダメージが入らない。
一応突破口、とまでは行かなくとも、ヒントは見つかっている。
俺が今使っている刀、このエリアのボスに対しての特攻を持っていると書いてあった。
ここまでの戦い(逃げ専)の中であんまりピンと来てなかったが、都度都度反撃をしていれば察しがつく。
「よい…しょっ!」
俺を噛み殺そうと、跳躍して飛んできたところを、進行方向
を急に切り返して避ける。
これまでの攻撃パターンから程度予測して、この位置まで誘導したんだ。クラっとしてもらうぞ。
俺が避けたその先には月環樹の巨木が根を張り構えている。時に、トラックのようなスピードで巨木に頭突きしたらどうなるだろうか?
普通のゲームならすぐにでも復帰するだろう。
なにせ、物理エンジンの完全再現のコストは計り知れないのだ。そこまで現実を再現することは難しい。
しかしこのゲームは普通では無い。
超現実に準じた物理法則を取り入れた、国家の手も入っている近未来ゲーだ。
そして次の瞬間に答え合わせの時間が訪れる。
「よし!読み通りださすが国のお抱えゲー!!」
高い運動エネルギーを持った熊が頭から高速でぶつかれば、もちろん熊になんの影響もないわけが無い。外皮が堅くても内側は堅くないだろ?
そしてその影響は脳震盪として現れる。
高レベルモンスターの高耐久を持ってしても免れない気絶。たかが数秒されど数秒。
突破口を解き明かすには十分な時間!!
スキル発動!
「『乱斬』!!」
刀身が先から根元まで輝いている、【終ノ光刀】による多数の斬撃が熊を襲う。
「こっちも読み通りだ!特攻ってこういうことか!」
スキル発動が終わり、終ノ光刀の刀身の輝きが消える。そしてまた、根元から少しずつ輝き始めている。
さっき、ダメージが通らないと言ったがそれは少し語弊がある。
ダメージを与える術が無かっただけであって、実際は変化の蓄積が、この刀の輝きによって行われていた。
その蓄積こそが、ダメージに繋がる基盤になるはずだ。
……俺の読みがあっていればの話だけど。
この刀は、輝きのゲージ、つまり特攻ゲージが無ければ、初心者武器と大差ない攻撃力の無力な武器である。
だが、ゲージ性の特攻に大きな意味があるのだ。
そして、さっきのスキルによって、その変化の蓄積がもはや隠しきれないレベルまでに到達した。
のっそりと熊が起き上がる。
「逃げながらの下準備にしちゃあ十分な成果じゃねぇか?」
自慢の銀色だった毛並みが、所々黒い毛が覗く、汚れたような毛並みになっている。
今までの、ゲージを消費した攻撃と今のスキル。その攻撃の跡、つまり傷口の毛が黒色に変化している。
恐らく、銀色の毛並みに、こいつの耐久力が乗っているのだろう。
事実、前までの攻撃の蓄積で黒くなった場所をスキルで攻撃した時、しっかりとダメージエフェクトとポリゴンが出て、僅かではあるがゲージが削れた。
「どうだい熊公。レベルが全てじゃねーんだぜ?現に危ういんじゃねぇかぁ?ノーダメの種が割れちまったもんなぁ?」
ここからが本当の戦いだ。今までは、ダメージを与える方法が不明だったから逃げに徹していたが、攻撃手段を作れたならこっちのもんだ。
あとはチクチクにしてやんよ。鹿みたいになぁ。
このゲームのAIは優秀と聞いているので、もしかしたら「激昂」みたいな状態がある可能性を考え、ついで程度に挑発しながら起き上がった熊との睨み合いを続ける。
幸いというかなんというか。この森林の中で、割と開けた場所に出ている。勝負を仕掛けるならここだ。
間合いを測りながら見合う。
緊迫。
全身の神経が研ぎ澄まされる。このレベル差だと、一撃カスっただけでも戦闘不能だ。ノーダメージで削り切る…!
永遠とも思えた緊張の糸が刹那ブツンと張り切れる。起爆剤は熊による、跳躍からの噛み付きの予備モーション!
(……来るっ!)
大砲が如く襲い来る熊の顎を横に飛んで回避する。即時に飛んできた横殴りの引っ掻きをパリィで逸らす。
『穿刃』
弾きによって生み出された怯みモーション。そこに最もスキル硬直の短いスキルを、【終ノ光刀】の特攻ゲージを消費しつつ撃ち込む。
長いスキルモーションは命取りだ。しかし、短いとはいえ硬直は硬直。
解けた頃には再び、俺を貫かんとする豪爪が迫る。普通に避けても間に合わないので、脚力強化スキル「跳躍Lv1」を発動し、あえて熊の方へ跳ぶ。
横薙ぎの巨腕を避けながら、顎に縦で回転しながら蹴り抜く。ダメージとしては反映されずとも、多少脳を揺らしているだろう。ダメージとして反映されなくても、リアリティの高さから出来る、上等な攻撃手段だ。
「終ノ光刀の特攻ゲージを消費しないとダメージが入らないのは厄介だが……」
このレベル差でも……!
蹴り抜いた勢いのまま一回転し、仰け反りながらも噛み砕こうとしてくるのを再び顎を蹴り、急降下で離脱。
あまりの勢いに、地面に打ち付けられそうになるが、空中で即座に体勢を立て直す。
ギリギリではあるが、「跳躍」の効果時間内に着地し、そしてそのまま地を蹴り、脚力強化によって高速で肉迫する。
確かに俺の数倍もの大きさで、俺を一撃で屠れる力を持ち、俺が認識しても避けられない様なスピードを持ち、俺の攻撃を通さない堅さを持っている。
「だがなァ!!」
接近してくる俺を確認した熊は、先程と同じく横薙ぎで対応しようとする。だが、その腕が届く前にジャンプをする……フリをする。
(読み勝ったァ!)
ジャンプしていればちょうど俺が居たであろう場所を、噛み砕かんとする顎が見える。
さっき接近した時に、まだ跳躍の効果が持続していると思わせ、誘導した。
さっきと同じ轍は踏まないという心掛けの素晴らしいAIだな。正直賭けだったが……
勢いのまま、熊の脚の間をスライディングで滑りぬける。そして、そのまま熊の背後にあった月環樹の幹を蹴り、その反動で熊の後頭部へ到達。
「跳躍Lv1」の効果が切れていても、勢いをそのまま流用すれば壁キックだってできるのだ。
後ろに回り込んだ俺を見つけようと、体ごと後ろを振り向く熊。
だがそれは俺の思惑通り……!!!びっくりしただろ!?振り向いたら目の前に突っ込んでくる俺がいるんだからなァ!
確かにお前は強え。Lv差もステータス差も絶望的だ。
「だが!!そんな暴威、今まで何度も跳ね除けてんだよ!!」
今までは感じたことないであろう「痛み」を教えてやるッ
歯ァ食いしばれッ!!
「【天ノ叛逆】!」
特攻ゲージが再び溜まり、光を湛える【終ノ光刀】。それが、【天ノ叛逆】の効果により、さらに光が強くなり、刀身が伸び、普通の人の身に余るような巨大な刃へと変貌した。
大剣とも呼べる大きさになった剣に、運動エネルギーを乗せて胸元の三日月に突き立てる!!
「グォァァァァァアァァァ!!!」
耳をつんざくような咆哮が空気を揺らす。急所であったのか、スキルの効果かは分からないが、なんにせよこいつのHPバーが大きく削れ、幸か不幸か、半分を下回った。
「よっしゃァ!このまま倒しきってやるよ!!」
体を覆っていた銀毛も、再三の攻撃で大半が失われ、今となってはほぼ真っ黒となってしまった。
体力が半分切ったことによる特殊行動が発生する可能性を考え、集中して構えながら熊を観察する。
……あれ?変だな。咆哮が止んだきり、動く気配がない。いや、正確に言うと、動いてはいるのだが、俺を攻撃したり、建て直したりする気配が見えない。
身を捩ったり、唸り声を上げたりして、なんというか、俺と戦ってる余裕が無いみたいな……
僅かな異変が加速していく。
体表に僅かに残っていた銀毛が、周りの漆黒に侵食されるように消え去る。
「……なんだあれ?バグか?」
体表が黒く染った瞬間、熊の全身がブレ出す。そのブレが少し収まった後には、辛うじて熊の雰囲気と形が読み取れるだけの異形となった。
目は無く、より巨大化した体と、未だにブレが残っている胸元。元の柔らかい毛皮は跡形もなく、のっぺりとした漆黒の体表が怪しげに光を吸う。
「どういう……」
ワールドアナウンスによりその正体が明かされる。
『エリアボス【弓月ノ神獣】に特殊状態〘深化〙が発現しました』
『エリアボス【弓月ノ神獣】が【朔月ノ深獣】への形態変化を開始』
『成功しました』
『あなたは深淵種MOBと敵対関係にあります』
『特殊シナリオ【異端】を開始します』
なんか自分で書いてて少し読みにくかった回。しっかり映像として映し出せば、割といいアクションしてるんだけど
自分の描写力が足りなかった。惜しい。
ちなみに、本来のツキノワグマはこんなに弱くありません。普通なら瞬殺の瞬殺もいい所です。じゃあなんで戦えてるかって?
別の何かに力を割く必要があったから。




