8話 マスターに聞き込み
「おぉ、ここが第2の町か」
第1の町ワンダは王都でイタリアのフィレンツェのように家が所狭しと並んだ大きな町だったけど、第2の町はスコットランドのエディンバラのような自然との融合がある街でどこか落ち着いた雰囲気がある。ゲームとしてプレイするのではなく観光のためにプレイする人がいるというのもうなずける。
「ま、観光は今度だな」
図書館なんかもあるみたいだが、とりあえず蛮人の宴に行って情報収集しないと。あそこであればだれか何かしら知っていそうだ。
「転移門あたりはやっぱ人が多いな」
第2の町に来たばかりだがしっかりと探索するのは次回の楽しみにして、周りをちらっと見るだけでワンダの町へと転移する。
初めてこの世界に降り立った光景と全く同じ光景見て随分と昔のことのように思いながらにぎわった大通りを抜けおなじみの鍛冶屋に入る。
「いらっしゃい、あら、コーラじゃないか。武器かい?メンテナンスかい?」
ギルマスダルマンの妻であるアンネさんが出迎える。
「いや、奥部屋で休憩をしようかなと」
事前に教えられた合い言葉を使い、剣の飾られた奥部屋のからくりを作動させ現れた階段を下りていく。
やはり、こういうのいいな。男のロマンだ。いや、女性でもテンション上がるか。先生も喜びそうだ、こういうの。
「あら、コーラさんいらっしゃいませ。平原に現れた強いモンスターと戦闘になったそうですが大丈夫でしたか?」
あれ、何で知って....まぁマスターなら知っててもおかしくないか。狩人に町に伝えてもらうようお願いしたしな。
「死にそうになったんですけど……あ、そういえば町にもう大丈夫だと言わないと……」
「それなら大丈夫ですよ、すでに世界樹の上で重装甲虫が落ち着いたことは確認されてますので」
「ならよかった。でまぁ、死にそうになった時にアザレアさんという方に助けていただいて……なんだかんだあってお使いを頼まれたんですけど、今日はそのことで聞きたいことがあって。」
「アザレアさんにですか、どのようなことを聞きたいので?」
「えっと、姫薬草と月光草、硝子蝸牛について集めないといけないんですけど場所はわかるのでそれ以外の何か詳しい情報を知っていたりしませんかね?あと、ぶどうジュースお願いします。」
「ええ、よく知っていますよ。....姫薬草はそう難しい所にあるわけではないのですが、普通にとると枯れてしまうため、周りの土ごとポットに入れて採取しないといけません。こちら、ぶどうジュースです」
ふむ、どこでポット売ってるかな。お花屋さん探してみるか。あ、美味しい。
「月光草は採取自体はそう難しいものじゃないのですが、とれる場所が極端に少なくここらへんだとツァーリ山の頂上にしかありません。ですが、途中でモンスターが生息するのでお気を付けください」
「硝子蝸牛ですが、令月高原の水場の近くに群れている個体が見つけるのであれば楽でしょう。名前の通り殻が極めて透明の、倒すと青くとても美しく輝くそうですが....特殊な硝子で出来ており体も透明なため見つけることが難しくなっています。また、倒す場合は傷をつけずに攻撃をしてください。それとこちらが姫薬草の生えている場所の地図になります」
モンスターの強さはわからないが、レベル1の俺で行けるか?ま、重装甲虫以上に強いなんてことないだろうし何とかなるはず。
「全ての情報をお教えしてもコーラさんの為にならないでしょうし全てはお教えしませんでしたがコーラさんであればなんとかなると思います。自ら考え行動してくださいね」
「流石マスター、ありがとうございます。めちゃくちゃ助かりました」
まさかマスターに聞いただけでほしい情報がすべてもらえるとはな。もう少し聞き込みとか第2の町の図書館とか行かないといけないと思ってたからちょっと拍子抜けだな。
「いえいえ、また何かありましたらご相談ください」
とりあえず、花天月地の森にあるらしい姫薬草から取りに行くか。
「お、これかな?」
姫薬草をとるためのポットを買いにお花屋さんに来た。こういう用事がないと来ないような場所だったが思いのほかおもしろい。色とりどりの鑑賞用花もリアルにはないような配色のものがあったり見ているだけで面白いし、生花じゃないと効果の出ない素材としての花も売っていて見ているだけで異世界に来たような感覚になる。みんなも行った方がいいと思う。
「あれ、お兄ちゃんだ。何してるの~?」
「あ、エミリーちゃん」
なんでここにエミリーちゃんが!?
いや、エミリー様って呼んだ方がいいかもしれないトプスさんの所まで連れて行ってもらった恩はものすごく大きい。エミリーちゃんがいなければ俺は今の職業にも、普通じゃないスキル構成も手に入れられなかっただろうからな。うんやっぱり、エミリー様だな。EMG、エミリー様・マジ・ゴッド。
「ちょっとね、姫薬草っていうのを取りに行くのにこのポットが必要で買ってたんだ。エミリー様は?」
「そうだったんだね!あれ?エミリー様?」
「いや、何でもないよ。そんなことよりエミリーちゃんはどうして?」
おっとつい口に出てしまった。
「お父さんが誕生日だからプレゼントを上げたいなと思ってお花を買いに来たんだ。でも、結構お花って高いんだね....」
確かに小さい子が自分のお小遣いで買うには生花はなんだかんだ言って結構な値段がするよな。
「いらっしゃいませ~」
お店のドアがカランと鈴の音を立てる。プレイヤーか、来る人は来るんだな。ん?見た目があまりにも普通の幼女だったから気が付かなかったけどあの名前って....
「あら、コーラさん先ほどはお疲れさまでした」
やっぱりそうだよな、スク水来てないから長内妖女ってPN見ても一見普通の名前だし気が付かなかった。やっぱりファーストインプレッションって大事だな。スク水の幼女ってイメージしかなかった。
「あー、さっきは助かった」
「いえいえ、特に何も出来ませんでしたから。それよりも、そちらのよ、少女が何やら困っているようですが?」
「ああ、お父さんに上げるためのプレゼントが思ったより高かったみたいで」
「そうですか、それでは私が取ってきましょう」
「え!いいんですか!?」
「あぁ、エミリーちゃんのためなら喜んで取ってきて見せよう」
こいつ確信犯だな。やはり、スク水幼女はロリコンだったか。うん、見た目と名前で分かってた。とりあえず、今日はログアウトしたい時間まであまり時間もないし姫薬草取りに行かないと。
「じゃあ、エミリーちゃんまたね」
「うん!またね!」
「それと長内妖女さんは明日同じ時間空いてますか?空いてたら飯奢りますよ」
「えぇ、大丈夫です。私おすすめの店を紹介しますよ」
さて、思わぬ出会いもあったが必要なものは買ったし早速姫薬草を取りに行くか。ちょっとエミリーちゃんが心配だが妖女さんが悪いことするような感じはないし何ならエミリーちゃんをうまく助けてくれるだろ。
「お、これかな?」
地図に表示された通りに花天月地の森のとある場所に行くと木々が開け木漏れ日がさしている場所に姫薬草が群生して生えていた。
「えっと、これがいいかな」
群生している中でも特に大きなものを周りの土ごとポットに移す。
「意外とあっけなく終わったな」
途中ウルフとか兎とかと戦闘があって3レべまで上がったが特にスキルも覚えなかった。こんなもんなのかな?重装甲虫戦の最中レベルアップした時はめちゃくちゃスキルとか称号獲得したけどあれは1週間戦い漬けだったからその分が溜まりに溜まって一気に獲得した感じだろうし、正直どれくらいスキルを獲得できるのかわからん。今のとこレベルで解放されるスキルもなさそうだしな。
ま、今日は街に戻ってログアウトしますか。町の外でログアウトすると体が残って好き放題されちゃうみたいだからちゃんと街に戻ってログアウトっと。トイレとかで緊急ログアウトされて死に戻るケースもあるみたいだし気を付けないとな。
それじゃまた明日、世界。
リアルで未成年者がお酒を飲むとアルコールを感じないようになっています。なのでワインを飲んだら美味しいぶどうジュース(割高)になります。