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巨大なプレッシャー

 「構わん。申してみろ」


 「訓練はまだ1日しかしてませんし、戦の事も分かりません。勿論、部隊の事も分かりません。けど、自分なりに役に立てそうな事を考えました。先程食べた米は如何でしたか?」


 「愚問だな。今までワシが食べてきた米なんか食えたもんじゃないな。甘みが全然違う」


 「では、もしその米がここ尾張で作れるとしたらどうしますか?」


 「なに!?貴様は作れぬと言わなかったか?」


 「はい。私は農業の事は分かりませんが、この時代でも未来でも農業の根本は然程違わないと思います。

 なので、先程食べた米の品種、種籾をまずは尾張の色んな村にお渡しします。

 そしてそれを育てる為の肥料もお渡しします。肥料に関してはほぼ間違いなく今の時代よりは優秀です」


 「ほーう。あの米を尾張全体で育てるか。良いの。先の粥に入っておった黄色のやつは育てられんのか?」


 「あれは、ニワトリの卵で・・・。この時代もニワトリっているんですかね・・・?」


 「なに?卵だと?それに、にわとり?貴様は卵をワシに食わせたのか?」


 えっ!?肉だけじゃなく卵もこの時代ダメなのか!?


 「えっと・・・はい。卵です。1番の特徴はコケコッコーと鳴く鳥なのですが・・・」


 「時告げ鳥かっ!?!?貴様!まさか時告げ鳥を食わせたのか!?」


 「えっ!?そんな驚くところですか!?肉を食べた訳じゃないのでそんなに驚かなくても・・・」


 そこから暫く信長の、如何に時告げ鳥が神聖な生き物かを聞かされた。迂闊だったか・・・。未来の食べ物、まあまあ卵使ってる事あるから作りにくくなるな・・・。


 「すいません。私が居た未来ではあのニワト・・・時告げ鳥の卵はかなり栄養価が高く、あの卵と肉を合わせた料理なんかもありまして、それはそれは美味しく・・・って信長様!?」


 信長、プルプル震えだした。


 「食わせろ。そのにわとりとやらの卵と肉を食わせろ!寺の坊主も肉食をしておる奴も居る。南蛮の奴らも肉を食ってると聞く。

 帝や公家の連中が元は肉食禁止令を出したがそもそも何故ワシらがそれに従わねばならん。

 時代を変えるならばワシがまずは試してやる」


 そんなお粥に卵の味は無かったと思うけど美味しく感じたのかな?まあ、最初怒られたけど結果オーライかな?


 「分かりました。昼餉にでもお作りしましょうか?」


 「ならぬ!!!今作ってこい!!」


 はい、出たよ。天上天下唯我独尊さん。


 「分かりました。また台所借りますね」


 正直徹夜明けで体がクタクタだから帰って寝たかったんだけど・・・無理だよな。急いで作ろう。そこでまた炊事場に行き、みんな寛いで居たが下がってもらい、ネットスーパー見ながら悩む。一から作ろうかと思ったがやはり体力の限界なため今回は某有名会社のレトルトの親子丼と即席米を購入した。


 《親子丼の素》¥200


 《即席ご飯》¥100


 さっさと親子丼の素を湯煎して、米は本当はレンジでチンしたいが無いので中身を鍋に出して少し水を加えてふっくら炊いた。

 良さそうな深めのお櫃に盛り付けしてお盆に乗せて信長さんの所に戻ろうとしたら炊事場の人達がこちらを何回も見ながらスーハースーハーしていた。

 そりゃ良い匂いで美味そうに感じるだろう。これでみんな抵抗なく食べてくれたらいいんだけどな。




 「お待たせしました。一応まだ病み上がりなので無理せずに食べられる分だけでお願いしますね」


 「ふんっ。ワシはもう大丈夫じゃ。それより早く渡せ。うんっ!?何とも香ばしい匂いじゃ。どれ?まずは一口・・・・・・!?!?(ハスッハスッハスッ)」


 おうおう。信長さん、病み上がりなんのその。現代人顔負けなくらいがっついてるよ。オレは親子丼より牛丼の方が好きだが、さすがにまだ牛は権力者には早いよな。


 「中々美味いではないか。この甘辛い何とも食べた事ない味付け、貴様を腹が出とるだけと侮っておったわ。これは毎日でもいける。もう一杯よそってこい」


 え!?マジで!?まだ食べるんですか!?勘弁してくれよ!!


 「信長様!?さすがに食べ過ぎでございます。まずはまだ病み上がりなため今日はこの辺にしておいた方がよろしいかと・・・。

 その代わりデザート・・食後の口直しで甘味をお出ししますので。

 それと当初の時告げ鳥は、如何ですか?もし許しが出るなら上手くいけばこの時告げ鳥を育てられるかもしれません」


 「そうか。さすがに食い過ぎか・・。ワシは今まで食に興味が無かったが貴様が持ってくる食べ物には興味が湧く。さすがに徹夜でここまで働かせるのは酷よの」


 あれ!?珍しく優しいやん!?暴虐で我が儘な人かと思ったけどやっぱ部下の事も考えられる人じゃん!


 「それと時告げ鳥か・・・・・・・。うむ。ワシは最初こそ抵抗があったが、これを皆が食して尚も肉食をせんと申すなら、それはそいつを素直に褒めてやれ。

 この飯に陥落せん奴はまず絶対居らぬ。それ程美味い!ワシの語彙力ですら表せんくらい美味い。

 それとこれから言う事は後日、皆にも言うが決定事項だ。

 即刻、あの米とにわとりとやらを量産しろ!その指揮を貴様に任す!分からぬ事は勝家に聞け!最初の村は貴様を匿ったあの村に行け!」


 「え?あ!?はいっ!!分かりました!必ずや成功させてみせます!」


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 変な沈黙が続く・・・・・。



 「何か?何か忘れておらぬか?ん?先程は貴様は甘味を出すと申したな?甘味とは甘いあまいあじと書くよな?後は・・・分かるな?」


 今までも何回も感じた主に八兵衛村長や茂左衛門さんらと似たプレッシャーをオレは感じた。否!それより凶暴なプレッシャーを。


 するとそこでソーッと襖が開いた。


 「何やら香ばしい匂いがしております。殿が何かお食べになられましたか?」



 そこには、例の天上天下唯我独尊奥さんが居た。あっ!これは詰んだやつだ。オレは素早く紙皿、使い捨てフォーク、ショートケーキ二つを買い2人に渡した。


 《紙皿12枚》¥200


 《ショートケーキ2個》¥800


 《使い捨てフォーク10本》¥300


 「これまた芸術的な甘味だな。初めて見るが味の方は・・・何ぞこれは!?甘い!?!?ワシが餓鬼の頃に親父から食わせてもろうた小豆餅より甘い!?お濃も、はよ食べてみよ」


 「そんな焦らさなくとも・・・・・・誰ぞある!!」


 「はい!ここに!」


 「今すぐ妾の腰紐を持って参れ!今すぐじゃ!」


 「お待たせしました!腰紐をここに!」


 側女さんも早っ!!信長さんの小姓も大概だけど、側女さんも負けてないんじゃないか!?5秒くらいしか経ってないぞ!?


 「うむ。これで良い。下がってよいぞえ」


 「はい。濃姫様、差し出がましく・・・・あまりがっついて食べるのは・・・・」


 「さ・が・れ」


 おう。濃姫さんめっちゃ怖っ!!顔は可愛いのに怖過ぎワロタ。側女さんも歴戦の猛者みたいな老婆なのに半泣きになってるじゃん!!


 「殿?大変美味しゅうございまする。妾、こんな美味しい食べ物初めてです」


 あまりの変わり様、猫撫で声にまたもやゴッドファーザーに改造してもらった身体から寒気を感じた。


 「うむ。剣城よ!大儀であった!此度の事に後日、褒美を出す!農業の事、にわとりとやらの事もしっかり励めっ!下がってよいぞ」


 「ほんに、かえ・・・剣城殿様?大変美味しゅうございました。また、楽しみにしてますえ」


 おいっ!!また蛙と間違えそうになっただろっ!?糞がっ!!!


 「はっ!より一層励みます!では、失礼します」


 そう言い、やっと解放され疲れた体で柴田家に向かう。

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