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人間なんて現金なものさ。最近の環境保全活動の高まりを見てみろよ、火星を人間の住める場所にすることが不可能に近いと判明して、途端だ、途端に地球を大事にしようという声が大きくなってきたんだ、じゃあなんだ、火星が住めるのなら地球などどうでもいいということか。結局、人間は自分が一番なのだ、万物の霊長が聞いて呆れる。偉そうに、この地球に同居している命たちに対して自分たちが一番だと頭から見下しにかかっているだろう、ゴミばかり出すくせに。人間の命は地球より重い、なんて、ちゃんちゃらおかしくて失笑だ。人間の命より地球の方が、はるかに重い。比べ物にならないんだよ、だから比べるな。そんなことを言われると、逆にこっちまで恥ずかしくなってくるだろう。考え方は人それぞれだ、確かにな、間違っている考え方もあると思うぞ、全員の考え方が全部正しい、なんて、あり得ない、間違っている人間は間違っているんだよ。人を殺してもいいという考え方は間違っていないのか? 他人の物を盗んでもいいという考え方は間違っていないのか? 人それぞれ、人による、と言う言葉の裏は、自分は間違っていない、という意味なんだよ。そのための論理操作だ。平気でいくらでも言う人間は、きっと人生をなめているに違いない。人による、とか、人それぞれって、二度と使って欲しくないね。私が気を付けても他人が気を付けなければ意味がない、人によるって、言う人間の考え方が間違っていないという意味では決してないからな。間違っているかもしれないからな。考え方に間違いとかあるのか、って、そら、間違っている人間がよく言うんだよ、考え方は自由だ、とかさ。人間が互いに知り合える範囲は、点なんだ。線ではない。点同士で知り合ってるんだよ、その点以外はわかりあっているわけではない、黒い箱なんだよ、中身が不明だ。だから、簡単に人間を信頼してはいけない。思わぬしっぺ返しをお見舞いされることにもなりかねないからね。人は人に対して狼でありうるんだ、油断してはいつか喉笛を噛み切られるぞ。羊の皮をかぶっているからね。剥ぐと狼だった、ということが多いわけさ。よくあることなのだよ。距離を置くべきだ、少なくとも、下手に群れようとしないことだね。群れたがる人間もいるにはいるが、私はあまりいいとは思わないな。人間ほど嘘をつく生き物はいない、簡単に人間の言うことを信じてはいけないんだ。息をするように嘘をつく者もいるからな。特に小説なんて、嘘のかたまりじゃないか、書けるからって偉いとは、私は思わないね。嘘が上手いということさ。その嘘に振り回されるなんて、それをあえて望むなんて、人間は変わっている。人間の常に持っている特徴の一つとして、責任転嫁ばかりする、というものがある。要するに、自分は悪くない、という考え方だ。違うぞ。悪いのは君だ。他の誰でもない。君のせいだ。それを認めない限り、君に幸せは訪れない。根本的に、自分が悪いと思った方がいい。裁かれるくらいがちょうどいいんだよ、人間は。愚かなんだから。