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 今酒を飲んでいる。さっきまでバーにいて、生ビールとバランタインという名前のウイスキーのロックをあおっていたところである。何せ金が無い。二杯が限度なのだ。閉店の一時間半前に入店し、そこからの二杯、ゆっくりと飲ませていただいた。そして帰宅し、道々何か書こうと思い立って、今こうして文の連なりを編み込んでいる真っ最中なのだが、これは苦行に似ている。いざペンを、私の場合は厳密に言うとペンではなくて現在パソコンがないためスマートフォン、もっと言えばアイフォンであり、それの前にキーボードを用意して座ってみたものの、今さっきまであれを書こうこれを書こうと、座る前まではなんやかんや想像を膨らませていたのにいざ座ってみると何も思いつかない。本当に、才能の乏しさに我ながら恐れ入るというか、でもまあ世に言う作家の方々も文を書くときは苦労しているのだろうし、私を襲うこの困窮は別段私だけとは限らないのだろうし、そう思うとなんだか安心してきて、でも書かなければならない時に何も思いつかないのは困ったものだし、どうしようという心境なのである。なにかこう、ボタンを押すだけで書くことが泉のごとく頭の中に湧き出てくる不思議な道具などないものかしらと思ってみたりするが、それこそサイエンスフィクションの世界の話で、愛嬌のあるネコ型ロボットが持つポケットに頼っとけといった話で、そんなものなどこの世に存在しないし考えるだけ無駄かとも思うのだが、意外や意外、では小説においてそういう話を書けばいいのではあるまいかと着想ここに得たりという風に私とて物書きの端くれ、書くことにまだまだ飢えているのであって、良い小説を数多く残したいと思うのは体の深奥からの生き甲斐なのだ。その生き甲斐のために日夜創作に励んでいるのだ。私とてまだまだやれると、もういい歳をして何も花開かない、蕾にすらなっていないのかもしれない、今の私はそんな状況なのだ。なんとしても、なんとしても花開きたい、そのためにはまず蕾を、タネを成長させて蕾をこさえなければならない。タネに水をやり、肥やしを与えて、ぬくく温度を保ち、大事に、大事に育てていく。そして蕾になる日を今か今かと待ち焦がれる。蕾になっても戦いは続く、蕾を開かせなければならないからだ。蕾になったら、とにかく害虫を駆逐し、良好な日当たりを確保するに限る。そうして、ふわっと、蕾が満開に花開くのをひたすら待ち続けなければならない。今の私はまだタネの段階である。とにかくひたすら、書くことに没頭せねばならない。

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― 新着の感想 ―
[一言] 百鬼様おかえりなさい。 気になる点にあげるべきか迷ったのですが、 この第一話に書かれている内容はとても文学的でこの主人公の影を追いたくなる内容だと思います。夏目漱石の文章を彷彿させられました…
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