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ヒューマンドラマ的な

夢は覚める・幻は覚える

作者: 海堂直也

ハッキリとは覚えていない。


ただ、もう一度瞼を閉じれば

“良い気持ち”になれる。

そう感じていた、だから素直に瞼を閉じる。

だが思い出せない。

瞼の裏に投影されるのは何か“良くない予感”

“悪い”と断言できないのは

自身の性格の問題だと思う。


「おはようございます!眠そう……ですね。」

務めてにこやかに声をかけてくれるこの女性は、私の記憶に新しい。異動初日の挨拶で八王子に住んでいた、という共通点だけで私との距離を縮める役を仰せつかったらしい。


「何だぁ〜ボケェ〜っとして、程々にしとけよ。」

何故ニヤニヤしながら声をかけてくるのか理解に苦しいこの男も当然、私の記憶に新しい。数日前も“良い気持ち”が思い出せず、どんな夢だったか呆けている所へ現れた、妙に共感されたのは覚えている。


「調子はどうかな。」

どんな漫画家でも嫌味な奴を描いてくれと言えば

こうなるであろうこの人は勿論、私の記憶に懐かしい。

事あるごとに同じ台詞で登場し、何につけても厳しかった“じいちゃん”だ。


小学生だった私に《書道・剣道》を文字通り叩き込んでくれた。お陰様で、どちらも段持ち、人生の武器になっている。

大人になって感謝しようにも遅く

仏壇の凛々しい顔よりも

昇級試験に合格した時の顔を 

ハッキリと覚えている。


ただ、もう二度と目の前に現れて欲しくない。

そう感じていた、だから素直に瞼を閉じる。

だが消えない。

瞼の裏に投影される“その姿”

“居る筈がない”と断言できないのは

自身の性格の問題だと思う。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 私の読解力不足で最初よくわからなくて、感想を読んで何度か読み直して理解しました。写真と思い出はまた別ですもんね。タイトルが深いですね。 [一言] 夢幻企画の参加作品を拝読中です。
[良い点] タイトルが言い得て妙ですね。 このストーリーを短く現しています。 まぶたの奥の記憶。 大事にしたいものです。 企画参加ありがとうございます!
[一言] もう過去の、二度と会えるはずのない人だったりするのに、“忘れられない人”っていますよね。 ただ、記憶の中のその人の印象が、強ければ強いほど、客観性が薄れるというか……。 勝手に理想化してたり…
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