03 クルガート邸の庭園の花
ご主人様のお屋敷には、二か所お庭があります。
一か所目は家の前にあるお庭です。
たくさんの華やかなお花さんが咲き乱れる、カラフルなお庭です!
噴水も豪華で、私の背丈の何倍もあるんですよ!
もう一か所は裏庭です。
珍しい植物とかお野菜とかが生えてるんです。
ちょっと地味かもしれませんが、こっちのほうが広いですね。
お料理に使うお野菜を収穫したり、ちょっとした薬草を採取するところです。
そんなお庭にも当然仕事はありますが、私は出禁です!
お庭仕事の才能がなくて、草花を枯らしてしまったり、剪定が変だったりで、迷惑をかけてしまったので。
(小さい頃家族と一緒にお花さんを育てた事もあったけど、なぜか私のだけぜんぜんそだたなかったんだよね)
だから表のお庭はともかく、裏のお庭にはあんまりいく事がなかったのですが、ちょっとしたビックイベント到来です。
10年に一度しか咲かないと言われている、珍しい花が咲いているみたいなんです。
それで、普段お庭さんにいかない他の使用人さんたちも、最近散策する事が多くなったんですよ。
私も早く、みたいなあ。
そういうわけで、お仕事を終わらせ、時間をつくった私は、裏のお庭へ。
ここ数日失敗続きで、休憩の時間がひたすら短かったですから、なかなか機会がなかったんですよね。
でも今日は、目立つ失敗もなかったので。大丈夫ですっ!
(さーて、噂のお花さんはどこかな)
わくわくしながら中庭を歩きます。
件のお花さんは、人が集まっていたため、すぐにわかりました。
「わぁ、すごく綺麗!」
そのお花さんはまるで、宝石でできたみたいです。
透き通ったはなびらに、金色と銀色の茎が生えます。
植物じゃなくて、誰かが作った人工物だって言われたら、間違いなくだまされちゃいますね。
このお花、とてもロマンチックな花ことばがあるんです。
それは「永遠にあなただけを愛する」です。
一途な愛を証明したい時にはぴったりですね!
でも、こんなに綺麗なのに、花束にしちゃうのはもったいない気がしますし、可哀想です。
私としては、こうやって眺めるのが一番だと思います。
ご主人様がそういうの欲しいかって聞いてきた事あったけど、私は首を振りました。
贈り物は嬉しいですけど、生き物とか植物とかはやっぱり気になっちゃいますから。
お花を眺めていると、庭師のゾルゾーイさんに声をかけられました。
「チヨも花を見にきたのかい?
「はいです!」
ゾルゾーイ・アラクネ・テンキーさんです。
100歳以上というかなりご高齢の方なのですが、なぜか若々しい見た目をしている不思議なおじいさんです。
なんでも昔人魚のお肉を食べて不老不死になったとか言ってましたけど、他の使用人さん達は冗談だと言っています。
一体何が本当なんでしょうね。
そんなゾルゾーイさんは普段は優しい人なんですけど、お花を踏み荒らす人には容赦しません。
おっきなハサミをもって、100回謝るまで追いかけまわされるんですよね。
悪戯で叱られたことのある使用人さん達が涙目で言ってました。
でも、故意にやった事でないなら、寛容な方なんです。
私もお仕事で何回かお花さんを台無しにしてしまった事があるのですが、優しく許してくださいました。
「綺麗な華にはとげがある。この花にもとげがあるから、気を付けるんだよ」
「はい、わかりました!」
ぱっと見ただけじゃ分からないけど、幻の花にはとげがあるみたいです。
お手伝いで何度も花のとげにやられた経験のある私ですから、触らない方がよさそう。
「そういえば、枯れてしまった花をいくつか厨房に持って言ったから、今日か明日あたりにはお花のお茶が飲めるかもね」
「本当ですか! とっても楽しみです」
ゾルゾーイさんが育てたお花は、お茶として飲めるものもあります。
いろんなお花がありますけど、黄色くて小さいお花のお茶が、とっても美味しいんですよね。
楽しみだなあ。
後で楽しみがあると思うと、仕事も心なしかうまく進むような気がします。
そんなやりとりがあった後。
入れ替わるようにご主人様がやって来て、幻の花を見ていきました。
普段は花なんて興味ないってスタンスですけど、さすがに珍しいから見に来たみたいですね。
ゾルゾーイさんとあれこれお話したみたいです。
私にプレゼントしようとしていたようですけど、結局ご主人様は別のもので代用したみたい。
数日後。
仕事が終わった後、寝室に呼び出されました。
「これをお前にやる、嬉しいだろう? さあ、受け取れ!」
こんな感じに渡されたのは、髪飾り。
例のお花を模した装飾品でした。
でも、本物みたいにとっても綺麗で素敵。
思わず見とれちゃう。
たしかちょっと前に町でみかけたやつです。
その時は、ちょっといいな、欲しいなって思って我慢したんですよ。
お値段も高かったですし。
庶民として生きてきた私にはちょっとまぶしすぎるというか。
なんて言ったら、「おれの贈りものが受け取れないだと」と圧を受けたので、最終的には受け取ってしまいましたが。お返しを考えなくちゃいけないですね。
あ、ちなみにやはりその後はご主人様にベットの上で玩具にされました。
毎度の事ですけど、よく飽きませんよね。
私ですか?
もちろん途中で気絶してます。
悩みに悩んで考えた私は、お花の刺繍のハンカチを作って私ました。
不器用なので何度も手を怪我しましたが。
教えてくれたリア姉さん、ありがとうございました。
あんな綺麗なお花を独り占めするのはもったいないですし。どうせなら綺麗な物を見た思い出や感動は分け合いたいですからね。
永遠にあなただけを愛する。
私のこの気持ちもご主人様に伝わると良いな
それからすぐ幻の花は枯れてしまいましたが。
思い出はちゃんと心の中にしまってありますし、形として残っているので寂しくありません。
また10年後に咲くみたいですけど、その頃私はどうなってるんだろう。




