08 般若さんからの逃走
そんなやり取りをしていたからか、制服を着た大人の人に話しかけられてしまいました。
「おい、怪しい奴だな。そこで何をしている!」
「やべっ!」
驚いた男の子達は逃げようとするけど、その中で足が遅かった一際小さな女の子が捕まってしまいました。
私も足が遅いので、シンパシーを感じちゃいます。
っとと、そんな事考えてる場合じゃないですねっ。
「浮浪児のガキか。ゴミなんぞ漁りおって。見苦しい連中め。お前らのような人間がいるから治安が悪化するんだ」
女の子の服を掴んでぶら下げた、制服姿の男性は警察か何かなのでしょうか。
苛々した様子で、舌打ちしてます。
全体的に良くない人ですって感じのオーラがぷんぷん。
たぶんこの方、不良さんしてた方がしっくりくる人です。
男の人は、何か思いついたみたい。
「嵐の日に見回りなんてついてないと思ったが、ちょうどいいサンドバックがいるじゃねーか」
まさかのまさか。
ストレスのはけ口にするつもりみたいですっ!
ななな、なんて人なんでしょう。
いたいけな子供に対して、サンドバックだなんて。
悪人ですっ!
世の中、こんな分かりやすい悪い人がいるんですねっ!
警察(仮)さんに捕まった女の子は、お顔が真っ青。
がくがく震えて、とても可哀想。
私は逃げたかったけど、ここで見捨てるとなんだかずっと、心がもやもやしそうだったから、勇気を振り絞ります。
「だ、だだだ。駄目ですっ。小さな子供を殴るだなんていけない事なんですよっ。大人として恥ずかしくないんですかっ!」
でも、言葉は思いっきり震えていましたけどもっ。
私も体をがくがく震わせながら、警察さんに対峙します。
だけど、警察さんは自分の行いを改めてはくれないみたいですね。
「なんだと! なら、まずお前から思い知らせてやるっ!」
わ、わぁーい。
異世界に来て2回目の危ない人エンカウントですっ!
ううっ、私って運がないんでしょうか。
女の子を解放した警察さんが、腕を振りかぶります。
私は思わず目をつむってしまいますけど、なかなか衝撃はきませんでした。
「いてっ、誰だ石を投げたやつは!」
目を開くと、真っ赤な顔の警察さんが、周囲を見回しています。
もしかして、誰かが助けてくれたのかな。
私は今の内に、その場から逃げようとします。
へたりこんでいる女の子の手をとって、逃避行の第二弾ですねっ!
「早く逃げよう! ついてきて!」
だけど、そんな私達に気が付いた警察さんが後を追いかけてきましたっ!
「まて、このくそがきが!」
ひいい、怖い。
怖いですううう。
般若の形相が追いかけてきました!
私も女の子も涙目で、大変です。
だけど、逃げたはずの他の子供達が、追いかけてくれる警察さんにゴミを投げつけて助けてくれました。
そのおかげで、なんとか私達も逃げきる事ができました。
じゃあ、さっきの石もなのかな。
きっと根は良い子たちなのかも。