07 悲鳴しか出ませんよ
さて、これからの私ですが、さすがにこのまま付近をうろうろしているわけにはいきません。
いくら右も左も分からない私でしても、それがまずい事ぐらい分かりますからね。
できれば別の町に移動したいとこですけど、うまくいくかなあ。
(問題は普通に走ってたら、探された時に追いつかれちゃうかもってところかな)
あっちの世界に比べてちょっと文明が後ろになってますけど、この世界には馬車とかはあるので、そういうのに乗せてもらえたらと思うけど。
私、お金持っていないんですよねー。
はぁー。
悩みながらも、とりあえず一生懸命走ってると、空がゴロゴロ。
むむっ、これは雨の予感。
見上げると、ずっしりと重い雲の方々が鎮座しています。
ただでさえ、お先真っ暗なのに、物理的に真っ暗になってどうするんですかっ。
ああっ、ゴロゴロ言わないでください。
雷落としなんて物騒な方法で明るくされても困りますっ。
ゴロゴロが可愛いのは猫ちゃんだけですから。
泣き面に蜂状態で、泣いちゃいますよっ。
まだ泣きませんけども。
(大変な時だけど、頑張って考えなくちゃ。じっとしてても、何も解決しないもんね)
無い知恵絞って考えてると、視界の隅で小さな影がごそごそ。
おや、一体誰でしょうか。
よーく見てみると、ボロボロの服を着た子供達が、捨てられたごみを漁っていました。
ファースト、異世界の貧しい子供達!
です!
着るものにも不自由している子供たちを見ていると、私の判断が本当に良かったのかちょっとだけ不安になっちゃいます。
少なくとも、あのお屋敷でなら、食べる物も、着る物にも、寝る所にも困らなかったでしょうから。
(でもだめですっ!)
エフさんは、なんだか危ない感じがしましたし、人に自分のすべてを無条件でゆだねるというのはそのぅ。
うまく言えませんが、よくない気がしますっ!
なんて考え事をしながら見つめていたせいか、子供達に気づかれてしまいました。
「なんだよ姉ちゃん。なんか文句あんのかよ」
あさってたゴミが外れだったのか、ぽーいと投げてこっちを向きます。
ひときわ目つきの鋭い男の子にガンつけられました。
十歳にも満たないくらいの年齢ですね。
「い、いいえっ何もないですっ!」
おかまいなく、と言ってその場をはなれようとしましたが、通せんぼされてしまいます。
「あん? こんな日に一人で出歩いてるなんて、カモにされても文句言えねーぞ。出すもん出しな」
そして、脅されました!
ひぃっ、とお口から悲鳴が出ました。
出す物って、これじゃだめですか?
「あの、あのぅ。私お金たぶん持ってないです。家もないんです。というか知り合いもいないです。えーと、お力になれなくてご、ごめんなさい」
お菓子すらももってませんから、本当にあげられるものないんですよね。
「はぁ? 何言ってんだこの姉ちゃん」
私はちょっと申し訳ない気持ちになって謝ります。
何か持ってたら、あげても良かったんですけどね。
あのお屋敷で食べ物くらい持ってこれば良かったかな。
でも、お世話されるのはノーセンキューなのに、都合よく盗むのはよくないし。うーん。
私が服のポケットをがさごそしていると、呆れた声。
「なんなんだよ姉ちゃん。変な奴だな」
「なんなんだと言われましても」
異世界から来た人って言われたら、信じてくれるかなあ。
無理だよね。
私だったら、信じられないですし。