表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

TSUKIYOMI

作者: 赭[u]

 1993年。

私は、月面探査機TSUKIYOMI。月の鉱物が、色々な感情を発しているとの情報から、調査のために私が開発された。


 研究者チームは、YURI.UMI。

CHAN-TSUBAMEMOTO。

JEF。この3人が私を作って、月に送った。

 

 月に送られる前、JEFが遅いランチを食べながら、「君も、サラダ食べる?」と聞いてきた。私は、なんのことか、さっぱりわからなかった。すると、「君、ウサギなのにサラダ食べないなんて、変わってるね。」とJEFが言った。


 後ろを通りかかったYURI.UMIが、「ウサギじゃないのよ。月面探査機なんだから、サラダは食べないわよ。」と言った。そう、私はウサギという動物の形を模倣したらしく、長い耳をしている。


 CHANは、パソコンに向かってクールに微笑んでいる。「何にも食べないわよ。その代わり、寿命は3年ね。」


 私は、まだ地球上にいた頃、3人と過ごした日々を懐かしく思う。月面に一人でいるのは寂しい。

 

 耳から、HANDを出して、ひとつの鉱物を手にした。その鉱物の記憶をスキャンしてみる。眠っている鉱物が目を覚ます。


《アームストロングさんは、いつ来るの?》


 宇宙飛行士の姿が、私の内臓ハードウェアに映し出されている。蓄積されているメモリによると、1969年に月面着陸したアメリカの宇宙飛行士だ。


以下TSUKIYOMI 内蔵映像

 アームストロングは、鉱物を手に取り眺めた。

《君は、美しいね。》

 アームストロングの声が聞こえてきた。鉱物は、嬉しそうに輝いた。

《ホントに?》

《うん。美しい。リビングルームに飾りたいな》

《ホント?地球に連れてってくれる?》

《うん。いいよ。でも、ほかにも、調査しないといけないことが、たくさんあるから、また、後でね。。。》


 ボーマンは、悲しいことに、鉱物をもと置いてあった位置に置き直すと、宇宙空間に消えてしまった。

 でも、月の鉱物は、キラキラ輝きながら、その後、何年も、何年も、ボーマンが自宅のリビングルームに飾るために、戻ってくるのを待ち続けた。そのうち、鉱物は、意識がぼんやり霞み始めた。


 TSUKIYOMIは、宇宙飛行士に恋をした鉱物をスキャンし終わった。

 月の鉱物は、今はもう、意識や記憶もなくなって、ただの鉱物になっていた。

 TSUKIYOMIは、そっともとの位置に戻した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ