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ショートショート7月~

年下の・・・・娘

作者: たかさば

共通の趣味の集まりで知り合ったアユミちゃんは、私とかなり仲が良くて。

年下ではあったけれど、ずいぶん一緒にあちこちに出かけていた。


月に一度はイベントに行って。

年に一度は遠出をして。


近からず、遠からず、そんな距離感が心地いい、関係。


知り合って二年が過ぎた頃、私は故郷を離れることになった。

その年の冬。


アユミちゃんの作ったなべをつつきながら、楽しく談笑してたら突如、会話が途切れた。

いつになく真面目な顔をして、私と向き合う、可愛らしい…女の子。


「……あのね。私、実は男なの。」

「ふーん。」


ああ、この鍋美味いな後で作り方聞こう、そんな事を考えて水菜をつまんでモグモグ…。

目を丸くする、アユミちゃん。


「驚かないの?!」

「まあ、アユミちゃんはアユミちゃんであって、うーん、性別は気にしてなかった。そうなんだ。ねえ、餅巾着食べちゃってもいい?」


アユミちゃんの目に、みるみる涙がたまって、ぼろぼろこぼれて。なんだどうした一体何が起きたと焦り始めたんだよね。


「ずっと、隠してることに罪悪感があって、辛かったのに!!!」

「気付かなかった、ごめんごめん。」


ド派手に泣くアユミちゃんのお化粧は崩れに崩れまくったけど、相変わらず可愛かった。

しまった、女の子泣かせちゃったよ!!…違う!!男の子だった…ってねえ。


混乱しつつ、豪快にタオルで涙を拭いてあげた、あの日を思い出すなあ……。


「もう、いつぶりなんだっけ?」

「ずいぶんだね、うん。泣いちゃった日以来だー。」


私の目の前には、気のよさそうなおじさんが一人。


歩ちゃんは、私が故郷を離れるタイミングで女装を卒業しちゃったんだよ。

それで普通に就職して、結婚して、今は娘さんが二人いる。

年に、二、三度電話してたからね。最近はSNSもあるし。

たまたま出張でこっちにくるっていうんで、急遽会うことにしたんだ。…なにげにあの日以来初の対面、意外と違和感なく話せるもんだな。


「なんかばれないようがんばってた自分がおかしくて。」

「ばれるも何も、性別なんて疑わないでしょ、普通…。」


一人暮らしを始めた一番の目的が女装だったそうで。

性別を偽って知り合った友達第一号が私だったそうな。


何回かアパートにお邪魔したけど、全然気が付かなかった。

よっぽど歩ちゃんが気を張ってがんばっていたんだろう。

…私が無頓着なだけかもしれない。たぶんこっちが正解だ。


「学生時代にやりたい放題やれたから思い残すことなくてね。」

「まあ、あれだけモテてたらねえ、そりゃ満足もするでしょ……。」


そう、歩ちゃんはモテモテで、私がガードしてたぐらいでね。

イベントではいつも写真お願いしますーとか言われてて大変だったんだよ…。


「今はいいよね、おとこの娘が堂々としてるもん。しってる?」


娘さんに昔の写真見せたらえらくほめられて大喜びなんだよ、この子。


「知ってるよー、良いよね、いろいろとさあ。時代は変わったよねえ。」

「ふふ、僕たちが、変えてきたのかも、知れないよ?」


私の目の前の、年下のおじさんは、そういってにこにこと笑った。

…いつまで経っても、年下のおとこの()は可愛いもんだ。


昔、モテモテだった歩ちゃんに、いいなあモテて、私も可愛くなりたいなって言ったらさ。


「そのうちすっごくかわいくなるよ!」


って言ってくれたんだけどさ。いったい私は、いつかわいくなれるんだ。おかしいな。おかしいぞ。



目の前でイチゴパフェを可愛く頬張るおじさんを見つつ、私は焼肉定食をがつがつと食べたのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 私、実は男なの、に、ふーん。 なんか寛大ですね。 おじさんでも、可愛いと。まぁ、パフェ食べてたら、可愛いかもしれません。はい。
[良い点] わお! [気になる点] パフェを頬張るのは間違いなく可愛い [一言] タイトルの・×4 が絶妙な距離感ですごい。
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