はらはら
はらはら……はらはら、と。
穏やかな日射しの中、柔らかな風に白い花びらが舞う。
はらはら、はらはら……と。
見事に咲き誇った桜の古木から、白い花びらが舞い落ちる。
それは、居並ぶ緑の土饅頭を、白く愛らしく飾り付けていく。
――あの日、遭難しかけた僕らは、『誰か』の導きによって助かった。
そう……幼い僕が、友達だと認識していた、いつも一緒の『誰か』によって。
今なら分かる。
あれが……〈はらはら〉なんだ。
そう――〈はらはら〉だ。
僕ら子供が危ない真似をしないかと、はらはらと見守り――
そして、かかる危険を『払い』、災いを『祓う』。
……確たる証拠は何も無い。あくまで僕の推論でしか無い。
だけど、もしかしたらあれは、その存在の根本にあるのは――この土饅頭の下に眠る子供たちなのではないだろうか。
彼らの境遇を思えば、恨み辛みを残した怨霊になったとでも言う方が、説得力はあるのかも知れない。
――けれど彼らはきっと、それとは真逆の存在になったのだ。
この神社の境内で祝詞が――それを童唄として唄い継ぐ子供たちがいたから。
かかる災いを、祓い祓い、祓い祓いと……そう唄われたから。
その願いが、言葉が、彼らの良心と結びついたのではないだろうか。
まるで言葉遊びだけど。
そして言葉は、それだけでは単なる形に過ぎないけど……。
そう――想いが強く重なることで、言葉は『言霊』にもなるのだから。
はらはらと……はらい、はらい。
はらはらと……はらい、はらい。
やがて〈ほらほら〉と結びついて〈はらはら〉になった彼らは……。
子供たちを戒め、危険から遠ざける、言い伝えとしての役目とともに。
実際に、はらはらと……子供たちを見守っていたのだ。
そして……実際に、幼い頃、彼らに助けられていたからこそ。
僕は、ずっと――彼らのような存在を、信じていられたのだ。
……ふと、ここへ戻ってくる切っ掛けになった、院生同士の口論を思い出す。
彼らは――僕ら少数派のことをへらへらと嗤った連中は、今回の出来事を僕がレポートにまとめたところで、やはり信じようとはしないだろう。
……だけど、もうそれで良いような気がしていた。
僕の胸中は、ここに来たときよりずっと穏やかだった。
なぜなら、僕は……彼らが、見ようとしないゆえに決して知り得ないことを知れたからだ。
親兄弟や人間の友人ばかりでなく――まだまだ未熟な僕を見守り、助けてくれる存在が世界の中にいることを知れたからだ。
なら……それでいいじゃないか。
「お礼というには、ちっぽけだけど」
僕は、カバンに入れていたチョコレートの封を切ると――1つずつ、均等に、土饅頭にお供えしていった。
そして――
はらはら……はらはら、と。
はらはら……はらはら、と。
舞い散る花びらに、一層白く着飾っていく土饅頭たちに手を合わせて。
行ってらっしゃい、と言ってくれた祖母に、行ってきますとしばしの別れを告げて。
僕は、故郷を後に……寮への家路に就いたのだった。
ほぅぅーーーら、ほぅぅーーーら…………と。
吹き抜けていく、大らかな春風の声を聞きながら。
……さて、今回のコラボ作執筆にあたり、使用したお題はこちらとなります。
【<お題> 3つ以上適宜利用
『そんなに白い目で見たって何も無い・見えるものしか信じられないなんて・並べられたお菓子・大事な事は口に出来ない・はらはら』
(診断メーカー『5つのお題ったー』https://shindanmaker.com/35731)】
――そして、今回コラボさせていただきました砂礫零さまの作品はこちらの方になります。
【 https://ncode.syosetu.com/n7997gh/ 】
……さて――。
まずは、今回コラボにお誘い下さり、また何も知らないボンクラを色々と面倒見て下さった砂礫さんに多大なる感謝を捧げます。ありがとうございました!
自作の出来についてはさておき(オイ)、楽しませていただきました!
ちなみにコラボをするとなって、共通のお題で――ということで上記のお題が出たとき、「あ、じゃあ〈はらはら〉っていう妖怪の話で」と、いきなり得体の知れん方向に決めてかかったのはボンクラでございます。すいません。
そのとき閃いた話をほぼそのまま形にしたのが本作ですので、ボンクラはいいのですが、砂礫さんにしてみればさぞかし振り回されたことだろう、と……。
それでもニコニコと(勝手な想像)、舞台設定の資料を集めて下さったり、あらすじやこの後書きの共通項を作ってくれたりと、あれやこれやと至れり尽くせりにボンクラをお助け下さった砂礫さんには本当に頭が上がりません……!
読んで下さった皆さまに置かれましても、ちびーーっとだけでも楽しんでいただけたならいいのですが、実際どうなんでしょうねコレ……。
いやしかし、なにはともあれ、ご覧いただいたというだけで感謝に堪えません……ありがとうございました!
――そしてすいませんでした!(とにかく先に謝っておく)




