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弱気な僕。  作者: Scorpius
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プロローグ

「―――今日もよろしくたのむな」


 昼休みの時間、自分の席に座っているとそんなことを言われた。


「はい……」


 僕の名前は、宮田恭介みやたきょうすけ。1ヶ月前に入学式をむかえたばかりの、どこにでもいる普通・・の高校1年生だ。


 顔は、良くもなく悪くもなくといった感じ。背丈だって平均ぐらい。別に性格が最悪とか、変な趣味を持っているわけでもない。

ただ、僕は人見知りだから最初は大人しくして、そのうちクラスメイトと打ち解けて、みんなで遊んだり笑い合ったりする―――――はずだった。


「焼きそばパン3つだかんな」


「分かりました……」


 僕は、いじめられっ子というのになった。今のようにパシリは当たり前だし、ほとんど毎日、何かと理由をつけて、お金をたかられる。


「走って行け!5分以内だ」


 無理だろそんなの。購買までどんだけ距離あるか分かってんのか……とは思っても口に出すことなんてできない。

そんなこと言おうものなら、3人にボコボコにされる。


 逆らうことのできない僕は、不本意ながらも走りだす。廊下を全力で駆けて、階段を1段飛ばしで下りる。

その途中、すれ違う生徒は「またか」とか「大変だな……」なんてことを言ってくれる。


「コラッ!廊下を走るなぁー!何度言ったらわかるんだ!」


「……すいません先生。急用です」


「またか、宮田!いつもいつもそんなこと言って!」


 うるさいな……。先生だって、絶対に僕の事情は分かってるはずなのに……。まぁ、教師なんてそんなもんだって分かってるけどさ。面倒なことには首を突っ込まないんだ。


「本当に今日は急がないとダメなんです見逃してください」


 毎日用意している言葉を棒読みで言って、先生の横を走り抜ける。……ほら。やっぱり今日も追ってこない。

知らないふりをしているけど、絶対いじめについて知っている。だから、表面的にだけ注意するんだ。引きとめたら、それが原因でもっといじめられることが分かっているから……。






「ハッ……ハッ……ハッ」


 だいぶ疲れてきたが、やっと1階渡り廊下についた。ちなみに、僕の教室は東棟の4階の一番奥。

そして購買は西棟の1階の一番奥だ。校舎の形はコの字型だった。

 つまり、僕の教室から購買は、一番遠い位置にあるのだ。あまり体力がない僕には、この距離が結構辛いんだ。


「なんで……なんで、こんなことに、なったんだ、よっ!」


 なんで!と、叫びながらも走る足は止めない。ちらっと、時計を確認するとすでに教室を出てから、3分ぐらい経っていた。このままじゃ間に合わない。

 僕はおもいっきり地面を蹴り、スピードを落とさずに曲がり角を曲がった―――――ら盛大に転んだ。


「―――っでぇ!?」


 足首を捻って、顔面から地面に突っ込んだ。このタイムロスは痛い。足も怪我をしてしまっては、走ることもできない。……もう間にわない。


「あ、鼻血でてるし……」


 なんでだろうな……。僕は普通に高校生活を送って、普通のサラリーマンになって、普通の人と結婚して、普通に暮らして、普通に死ぬ。

それだけでよかったのに……。普通が壊れていってる。1ヶ月経ったのに友達もできてない。

 クラスメイトで話したことあるのは、僕をいじめている不良3人だけ。


「はぁ。また、なんか言われるんだろうなぁ」


 特別になるのは難しいと思ってた。普通ってのは簡単だと思ってた。でも、違った。

普通に過ごすのも、以外に難しい。もしかしたら特別になるほうが簡単なのかもしれない。

 だって、現に僕は特別ってやつになってるからね―――――



「あ、あの……大丈夫?」


 ―――――だからなのかもしれない。


「……え?」


 声をかけられて頭を上げると、女の子がいた。

整った顔立ちに、髪を一つにまとめたポニーテール。背はすらっと高く、大人びた雰囲気。

 美しいとしか言いようがない女の子。普通がいいって言ってる、僕の理想とはかけ離れた存在だ。でも……


「顔、打ったよね。ほら……鼻血出てる」


「え……っと」


「動いちゃダメ。今拭くからね」


 そう言って、女の子は優しく微笑んだ。その笑顔を見て、僕は思ったんだ。




 ―――――特別ってのもいいかもしれない





誤字脱字の報告、アドバイス等してくれると嬉しいです。



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