届かない
かわいた道を歩いた
薄暗い部屋に今日も帰る
冷蔵庫を開けて冷えた缶を
飲み干して床で寝転んだ
窓から見えた隣のマンション
同じように並んだ四角い窓
明るく光る部屋の明かりが
遠くぼやけて霞んでゆく
どこからか笑い声が聞こえた
どこからか漂う匂いにお腹が鳴った
届かないと分かるほど
僕の周りに溢れて見えた
かわいた道を歩いた
硬い床で早く目を覚ました
星に光る空いた缶を眺めて
痛む頭と胸
窓から見えていたマンション
前の道路を裸足で歩いた
静まった暗い窓が
揺れて歪んで溶けてゆく
甘い花の香りがした
どこからかまだ笑い声が聞こえる
消えない匂いにお腹が鳴った
届かないと分かっているはずが
心が欲しがって締め付ける
缶の転がる音で朝を知る
古瀬