****腰部と下腹部に鈍痛****(3)
そうして目が覚めると、
俺と健志を殴り倒したであろう犯人が
胸の辺りでふよふよと浮遊しては、
くすくすと嗤っていた。
「あら~?
ようやく眠り姫のお目覚めですかねぇ」
そいつは一応人間の形をしている。
しかし、
頭部には二本のアンテナのごとき触角があり、
中性的な顔立ちに淡藤色の髪をしていた。
おまけに服装は巫女服で、
手の平サイズの宙に浮かぶというカオスだ。
「お前、一体だ……何者なんだ?」
俺が問い掛けると、
頭からアンテナを生やした謎の生命体は
「はぁ?」とでも言わんばかりに怪訝な顔をして見せた。
しかし少し考える素振りを見せると、
にぱっと子どものような笑みを浮かべる。
「そんなことよりぃ、
大事な話をしましょうよぉ……
ほら、君の身体のことについてとか~。
まあでもまずは、
その前にあの変態を起こすとしましょう」
そう言うと、そいつは健志の方へ飛んでいく。
彼の額へ着地すると、
身体の数倍はありそうな
手鏡か何かを思いきり振り下ろしていた。
「ぅおおおっ!!?」
すると健志は雄叫びを上げて、
むくっと上体を起こしたのだった。
「ふぅー全くぅ、
骨を折らせないでくださいよねぇ」
いやいやお前が殴り倒したんだろ、
と思ったが俺たち二人を失神させた
相手にそんなことが言えるわけもない。
しかもその手鏡は背にさっと収納していた。
どこに収納したんだよ。
「あ、楪。
服、着替えたんだな……」
健志は俺が服を着てしまったのを見て、
些か残念なのか名残惜しそうな声を漏らした。
「え、似合ってな――」
「お黙んなさい!!
それ以上のBLは看過しませんよ!!!!」
と言うと浮遊生命体は
鏡をくるくる回しながら呪文を唱え、
俺に指を指したのだった。
次の瞬間俺の心臓がドクリと反応し、
そこからゆっくりと重みというものが全身に循環し始める。
二秒と経たぬ間に腰部と下腹部に鈍痛が走り、
俺はあまりの痛みに耐えきれず床に倒れ伏すこととなった。