「――因果応報という言葉をご存知ですか?」
『違うよ、そんなんじゃないって(笑)
私の友達が瀧川っていう男に騙されて、
酷い目に遭わされたから懲らしめてやりたくて』
送ってから気付いたのだが、
報復することを明言しておいて
手助けしてくれる人なんかいるのだろうか。
しまったと思いきや、
瞬時に返ってきたLINKに俺は胸を撫で下ろした。
『そういうことならご協力します。
自分も彼には報いらねばならない貸しがありますので』
貸しというのは
過去に何かされたということなのだろう。
彼女にまで手を出しているとすれば、
瀧川はその手の汚遊びに
関して相当な手練れだと言える。
『ありがとう!
で、その情報を
教えてほしいんだけどいいかな?』
『ええ、いいですよ。ただ――』
俺は彼女から仕入れた情報と
健志から仕入れた情報を元に神の部屋を訪ねた。
彼は待ってましたと言わんばかりに
ドアに向かって正座していた。
前回は態度が悪かったと言われたからと、
律儀に俺がやってくるのを待っていたらしい。
相変わらず、
サイバー監視は続けられているということだ。
「まあ監視してたから
説明するまでもないと思うんだけど、
瀧川をどうやって懲らしめたらいいと思う?」
元俺の部屋にて作戦会議となったものの、
神はにやにやと調子の良い笑みばかり
浮かべてあまり真剣に取り合ってくれない。
「いやいや~懲らしめるだなんて、
彼にも何か事情があるのでしょう?
執行猶予くらい与えてあげましょうよ」
唇に人差し指を当てて、
ふふと微笑を浮かべた神は
男なのに妙な妖しさがあった。
というのも、彼から滲み出る
腹に一物オーラを感じ取ったからだろう。
「執行猶予って……
じゃあ情状酌量の余地がないと
見なした場合は?」
「それはもちろん、刑の執行ですよ」
当たり前でしょうと一笑して、
彼は作戦進行を耳元で囁いた。
「え、マジで? そんなんでいいの??」
神にしてはあまりに温すぎる
処罰に俺は耳と神を疑った。
しかし彼は悠長にヘアピンで横髪を留めながら、
「ええ。
本当に罰を受けなければならない者には
必ず然るべき罰というものが下ります。
それも、意図しない形でね。
――因果応報という言葉をご存知ですか?」
もちろんそれは知っているけれど、
仮にも神様のあんたが
そんなことを言ってどうすんだ。
今の身分ではそんなこと
おくびにも出せない自分がとても歯痒かった。
この報復計画を立花さんを話し、
なおかつ承諾を得なければ行うな、と神は言う。
許してもらえるわけないと思ったけれど、
月曜日に話し掛けてきたのは彼女の方からだった。
しかも、俺の話にも耳を傾けてくれて
二つ返事で承諾してくれた。
俺にはそれが酷く悲しかった。




