見かけは女×男/中身は男×男
「で、でも!
健志さっき〝楪の妹か何かなのか?〟
って訊いたじゃん、あれはどういう意味なのさ」
掘り返してはみたが、
健志は歯切れ悪く「いや、だって……なぁ?」と零した。
しかもまた今度は俺の顔の辺りをじぃっと見つめ、
その細部をじっくり観察しているような
眼を向けてきたのだった。
その視線があまりにも熱っぽく、
そのうえ鼻先が擦れそうな程
距離が近付いたので些か不愉快な念を抱いた。
だがそうも言っていられない状況だ。
「た、健志、近いってば……それと、何?」
彼は少し火照ったような
赤い頬をして真っ直ぐに俺を見上げる。
「楪に似てるのに、か、可愛いから、さ……」
健志のおふざけモードから繰り出される
「カワウィイ」は幾度となく聞かされた。
しかも大半がちょっと女顔っぽいのを
コンプレックスにしている
俺を皮肉ってのことだった。
しかしこれは違う。
真剣な顔付きと熱い視線から送られる賛美だ。
そういう感性を持ち合わせていない
俺でもちょっと恥ずかしくなってしまった。
それは言った本人も同様らしく、
言った傍から照れてしまった次第らしい。
二人して気まずさ故に互いの顔が見られないだなんて、
可笑しなことだろう。
しかも見かけは女×男なのに中身は男×男なんだから。
「そ、そんなに可愛いなら俺も確認したいなー!
俺まだ鏡見てないしさー」
と軽い調子で
この押し倒し体勢を改めようと思ったのだが……
「いや、僕はまだお前のこと楪だって
認めたわけじゃないからな。
お前が僕に楪だって認めさせられるまで離さないぞ」
脅しにも似た言葉を掛けて、
健志は俺の両手首を掴んできやがった。
くそ、これじゃあ振り解けもしない……。