****『――女子に声をかけなさい、これは神命令です』****(6)
一時間目の授業の始まりを告げる鐘の音が鳴り、
俺はようやく怒濤の質問ラッシュから
解放された後の授業は
ある意味いつも通りで眠気ばかり誘うものだった。
「――今日はここまで。
携帯は触ってもいいけど、
チャイムが鳴るまでは外に出るなよー」
生徒たちは先生の話を聞いていないのか
そもそも騒ぎすぎて聞こえていないのか、
何にしても授業が早く終わったことに
はしゃいでいるようだった。
うちのクラスは大学進学希望者が少なく、
大半は専門学校や短期大学への
進学希望者が占めているせいか
〝チャラい〟と呼ばれる生徒が多い。
学年全体で三割に満たない男子でさえ、
パーマやらカラーやらをかけて見目を美しく装い、
女子の七割は化粧をしていて
他クラスに比べてギャルっぽい雰囲気は拭えない。
つまり俺のようなオタクは
居辛い場所であるというわけだ。
しかし女子となった今は別の意味で居辛い。
矢継早に投げかけられる
質問に答えていくのもそうだし、
質問の内容もくだらなかった。
俺が恋愛に積極的になれないのは
そういう事情も関係しているかもしれない。
三次元の女子があまりに理想離れしすぎていて、
そういう対象と認識できなかったのだろうか。
どちらにしても、
もう昼休憩は御免被りたいけど……
そんなちょっと失礼なことを考えて俯いていたら、
ポケットにあるスマホが微かに振動した。
相手はどうやら神らしかった。
『教室の左端の最前列で
一人本を読んでいる女子に声を掛けなさい、
これは神命令です』
文面から神のドヤ顔っぷりが伝わってきそうだ。
こっそり隣の神へ目配せすると、
これみよがしにあざといウィンクと
アイコンタクトで「さっさと行きなさい」と云われた。




