俺の願いはたった一つでいい。
その後、新学期初日から
俺はHRの時間で転校生として教団に立たされたのだった。
「閑柚子です。みなさん仲良くしてくださいね」
という月並みな挨拶を済ませ、
神の隣である中央の最後尾に腰掛けると
見慣れたクラスメートの女子たちに周囲を囲まれた。
メイクは控えめ、だけど隠すところは隠し、
すっぴん風を装っている風に見せている。
身だしなみもそこまで派手さはなく、
開襟は第一ボタンだけ、イヤリングやピアス、
ネックレスなどの装飾品も身に着けていない。
髪は誤魔化せる程度の焦げ茶色くらいで、
スカートも膝頭が見えるくらいだった。
一軍、二軍でいうなら二軍くらいの女子たちが
「どこから来たの?」とか「出身は?」とか
「趣味は?」とか「好きなバンドは?」とか
あらゆる手の質問をしてきて、
俺はその度に神から用意された
設定を思い出していちいち答えていったのだった。
地味に地獄だよ。
女子に手を出そうものなら、
「粉々にすんぞ」と脅されているので
下手なことは言えないし。
――結局俺、なんで女子にされたんだっけ?
まあ、今は考えるだけ無駄か。
戻れたらそれでいいし、
何より一つだけ願いを叶えてもらう
という約束をしているのだ。
それで全てを赦そう。
俺の願いはたった一つでいい。




