表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/141

『ぼくのこと好き?』

『……?? みかちゃん、』


『なーに、ゆーりくん』


『おっとってなに?』


 幼い俺が尋ねると

 少女はレジャーシートを敷くのをやめる。


『ゆーりくんのおとうさんとおかあさんがいるでしょ』 


『うん』 


 真面目に話を聞いているらしい

 俺はこくんと首を縦に振って、

 続きというのを行儀良く待っている。


 それに対し少女はもじもじと何かを恥じらい、

 躊躇っているらしかった。


『……みかちゃんどうした――』 


『その!』


 少女は奮起したように声を荒げた。


 ぎゅっと固く瞑られた目と両の拳は

 勇気を振り絞った証かもしれない。


『おとうさんがおっとになるんだけど、

 おっとっていうのはね……』


『おんなのひととおとこのひとが

 けっこんしたときの

 おとこのひとのことをいうんだよ』


 少女は頬を真っ赤に染め上げて、

 俺の方を見上げる。


 その仕草は確かに乙女のものであった。


『へえー、そうなんだ!


 みかちゃんってものしりなんだねー』


 さて、幼いながらも

 乙女心を無碍にされた少女はというと、

 頬を膨らませて目を赤くしていた。


『ふーん……??


 わ、分かったならさっさとしようよ』


『うん! みかちゃんのおっとだね!』


 向日葵のような笑顔が眩しい。


 少女は感情を惜しみもなく出している。


『っ!!?


 そうだよ、ゆーりくんはみかのおっとで、

 みかはゆーりくんのつまなの』


 そう言って握ってきた手を、俺は握り返していた。


 そして、とんでもない言葉を吐き出すのだ。


『みかちゃん、』


『なーに、ゆーりくん』


 みかちゃんは愛らしく首を傾げた。


 幼くてもやっぱり可愛い。


『みかちゃんはぼくのことすき?』


 彼女は茹で蛸さながらに

 顔を火照り上がらせた後、もー!


 と泣き出してしまった。


 一度泣き出すと抑えが利かないらしく、

 しゃくりを上げてひっくひっく涙を流してしまう。


『みかちゃんどうしたの?』


『ゆーりくんこそ、どうなの……?』


 少女は顔を覆っていた手を離し、

 目を擦って涙を拭うと俺の顔を見上げた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ