『ぼくのこと好き?』
『……?? みかちゃん、』
『なーに、ゆーりくん』
『おっとってなに?』
幼い俺が尋ねると
少女はレジャーシートを敷くのをやめる。
『ゆーりくんのおとうさんとおかあさんがいるでしょ』
『うん』
真面目に話を聞いているらしい
俺はこくんと首を縦に振って、
続きというのを行儀良く待っている。
それに対し少女はもじもじと何かを恥じらい、
躊躇っているらしかった。
『……みかちゃんどうした――』
『その!』
少女は奮起したように声を荒げた。
ぎゅっと固く瞑られた目と両の拳は
勇気を振り絞った証かもしれない。
『おとうさんがおっとになるんだけど、
おっとっていうのはね……』
『おんなのひととおとこのひとが
けっこんしたときの
おとこのひとのことをいうんだよ』
少女は頬を真っ赤に染め上げて、
俺の方を見上げる。
その仕草は確かに乙女のものであった。
『へえー、そうなんだ!
みかちゃんってものしりなんだねー』
さて、幼いながらも
乙女心を無碍にされた少女はというと、
頬を膨らませて目を赤くしていた。
『ふーん……??
わ、分かったならさっさとしようよ』
『うん! みかちゃんのおっとだね!』
向日葵のような笑顔が眩しい。
少女は感情を惜しみもなく出している。
『っ!!?
そうだよ、ゆーりくんはみかのおっとで、
みかはゆーりくんのつまなの』
そう言って握ってきた手を、俺は握り返していた。
そして、とんでもない言葉を吐き出すのだ。
『みかちゃん、』
『なーに、ゆーりくん』
みかちゃんは愛らしく首を傾げた。
幼くてもやっぱり可愛い。
『みかちゃんはぼくのことすき?』
彼女は茹で蛸さながらに
顔を火照り上がらせた後、もー!
と泣き出してしまった。
一度泣き出すと抑えが利かないらしく、
しゃくりを上げてひっくひっく涙を流してしまう。
『みかちゃんどうしたの?』
『ゆーりくんこそ、どうなの……?』
少女は顔を覆っていた手を離し、
目を擦って涙を拭うと俺の顔を見上げた。




