「ゔっっ、い、いだぁぁ……いだいいだいいだいいだい!!」
「ゔっっ、い、いだぁぁ……
いだいいだいいだいいだい!!」
「おい、楪? 大丈夫か! 楪!!」
健志の声は聞こえているが
反応するだけの余力がない。
なぜなら、
腹の中で暴れ回る何かが内臓の全てを掻き乱し、
踏み潰し、すり潰していくようだからだ。
腰には鉛版が二枚でも入れられたかのような
重々しい負荷がかかり、
腹痛と相俟って気でも狂ってしまいそうなまでの
痛みに襲われている。
寝転がってごろごろしたり、
暴れたりしていなければそれに負けてしまいそうで、
そのうち失神してしまうのではと思った。
「ま、これぐらいでいいでしょう。
解いてあげます」
そいつは俺に近寄ってきて、
そっと額を撫でるとのたうち回っていたのが
嘘みたいに止んでしまう。
けれど、暴れ回ったせいで
相当な体力を奪われてしまい、
やっぱり俺はそのまま床に伏していた。
「お前、俺に何したんだよ……」
「いいえ、大したことは。
ただ……
あまりにも気色の悪いBLを
見せつけてくれたので
君に生理痛というものを体験させてあげただけですよ」
そいつは事も無げに、そして満足げに笑った。
「お前っ、
一体何の権利があっ……んぐぅ??」
「楪、
ここは従っておいた方が賢明そうだぞ」
健志の手で口を塞がれて、
仕方なく目を向けると
そいつはまた手を振り下ろそうとしていた。
「あーあ、なんで言っちゃうんですかぁ。
もー怒っちゃいますよ、ぷんぷん……なんてね。
彼のお陰で話が進んで嬉しい限りです」
進行役が見せるような
営業スマイルによる無言の圧力をかけられ、
俺の肺が押し潰されそうになる。




