『もし、願いが叶うのなら――』
『――おかあちゃ、なんでまいにちここにくるの?』
俺がそう尋ねると
母さんは決まってこう言っていたのだ。
『それはね、神様にお祈りするためよ』
『それじゃおかあちゃ、
なんで〝かみさまにおいのりする〟の?』
不意にそう訊いてみたことがあって、
そのときは
『楪が……いつまでも幸せでいられるように、かな』
と母さんは困ったように笑っていた。
『じゃあぼくはおかあちゃのためにおいのりする!』
『そう……ありがとうね』
母さんが目を細めて柔い笑みを浮かべると、
桜が舞うように儚くて、
優しい空気が流れるような感覚をよく味わっていた。
それが十年前のこと。
同じ頃、初恋の女の子「みかちゃん」と
十年後交際することを約束した。
けれど十年以上経ってしまった
今となっては絵空事のようで。
『……もし、願いが叶うのなら
もう一度初恋のみかちゃんに会いたい』
そんなことを頭に描いては、
その考えをくしゃくしゃに丸めて胸の奥に仕舞い込んだ。
どうせ叶いっこないなら夢見るだけ虚しいのに。
寂しくて孤独な現実から逃避するべくして、
俺はギャルゲー
「幼馴染みだって知ったら萌えられませんか?」
の電源スイッチを入れた。