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うんこっっっ!

うんこっっっ!


 朝目が覚めると、横向きに眠る京一の腹部辺りで、白髪の少女が丸くなって眠っていた。


 淡い期待もかなわず、京一は昨日までの出来事が現実だったのだと思い知る。

「ん」

 起き上がろうとすると、眠るキリカが京一の服を掴んで離さないのに気づき、起き上がるのをやめた。

 こうして大人しく寝ているところを見ると、キリカが神秘的な何かに見えてくる。

 特別な存在なのではないかと、そう勘違いしてしまうほどに美しい。

「ん……」

「起きたか」

「……うんこ……」

「前言撤回だ。起きろ」

 京一は掴むキリカの手を振りほどくようにして身体を起こした。


「うまっうまっ」

 がつがつがつ、と丼ぶり屋で見かける休憩中の建築現場の兄ちゃんたちのように豪快にご飯を口にかき込んでいくキリカ。彼女はカレーがたいそう気に入ったようで、一晩寝かせたカレーをこれでもかというくらいほおばっている。

「まだあるわよ。おかわりは?」

 そんなキリカを見て、母・聖華はいつになく張り切った様子で台所から顔を出す。

「よこせっ!」

「お願いします、だろ」

 スパーンと頭を叩いてツッコム京一。

 この少女、遠慮というものを知らないらしい。

 ――と、頭を叩かれたキリカが、瞳をうるうるとさせていく。身体もプルプルと震え出し、今にも泣き喚きそうな態勢に入った。

「泣いたらおかわり無しな」

「うっ……うっ……」

 我慢している。少女にとってご飯は何物にも代えられないご褒美なのだ。

 だがせめてもの抵抗にと、キリカは言葉を絞り出す。

「はげっ」

「ちび」

「うんこっ」

「くそがき」

「うんこっっっ!」

「それしかないのかよ!?」

 朝からうんこを連呼しないでほしい。

 聞きつけた台所から聖華が出てきて、「あらあらあら」と泣きそうなキリカを抱き上げた。

「けいいちがぎゃくたいする!」

「よしよし。京一くん。小さな子には大人な態度で接しなければだめよ」

「まずは虐待につっこめよ……」

 聞こえるか聞こえないかの声でぼそりと呟き、京一は立ち上がる。

「すみません。キリカのこと、少しだけ頼んでいいですか」

「あら、京一くんどこかに行くの? もしよかったら、年明けのおせちを作るために、一緒に買い物にと思ったんだけど……」

「……じゃあ、帰ってきたら」

「ほんとに!? じゃあ待ってるわね」

 まさかの返答だったのだろう。聖華は驚いたように目を見開き、喜びを見せた。

「昼には帰ってきますから」

「わかったわ」

「キリカ、大人しくしてろよ……キリカ?」

「寝ちゃったみたい」

 スヤスヤと、聖華の腕の中で眠るキリカ。

 それはまるで本当の母娘のようで――。

「行ってきます」

 しかし京一はそれを見ていられないと言わんばかりに、逃げるようにしてリビングを後にした。


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