お題:夏の花⑥
世界が氷と闇に閉ざされていた頃のお話。
「ファイアウォール!ファイアランス!くらえ、ヘルフレイム!」
俺は、ただただ必死に戦っていた。
この永久凍土の大地に住むモンスターは炎に弱い。
炎魔法が得意な俺は、そのおかげで何とか持ち堪えていたようなものだ。
「“我に従いし契約者よ、姿を現せ”…!灼き尽くせ“死鳥”!!」
ここは白銀龍の巣。
レベル的には格上でも無いが、数が揃えば話が違ってくる。
迷い込んだ俺も悪いが、寄って集って喰おうとした白銀龍も悪いと思うんだ。
よって戦闘。
苦戦に次ぐ苦戦の末、ようやく今、白銀龍の巣を殲滅した。
「白銀龍って倒しても何も残らないから嫌なんだよな。」
ドラゴンの角や鱗は高く売れるというのに、この白銀龍ときたら水になって溶けて消えてしまうのだ。
各種、ステータス異常に耐性のある俺でも、疲労には勝てない。
汗だく、疲労困憊で倒れていると…
『夏の使者よ、封印を解いてくれてありがとう。』
声のした方を見ると、植物が水を得た勢いで成長し、みるみるうちに大きくなった。
身構える間もなく、根を張って凍土を割り、巨木のようになっていく。
すぐには手が届かないほど太く高い茎の先に花が咲き、ギラギラと輝き出した。
その不思議な炎の花は、次第に明るく眩しくなり、熱を帯び、力強くなるほどに地上から遠ざかる。
やがて茎からも離れてゆっくりと空へと昇っていき、全ての大地を照らし出したのだった。
――「こうして太陽は封印から開放されたんだ。太陽のおかげで昼と、季節ができたんだよな。
地熱に頼って地下で活動せざるを得なかった、冒険者以外の人類も外で活動できるようになったんだ。」
俺が言うと、ガキ共は目を輝かせながら聞いていた。
うんうん、こんな時間が俺には何よりの癒しだ。
あー、ガキってのは素直でいいな。・・何、もっと聞かせて欲しい?
そうだなぁ・・・次は、俺が火炎竜を仕留めた時の話を・・・――
「いいからお前は勉強しな。」
俺は、何よりも素晴らしい日常という名の癒しを堪能していたんだ。
姉に耳を引っ張られて連れ去られるまでは。
title:夏の花 ~そして伝説へ~