顔だけ極悪人な俺は相談にのります。
人間は誰しも必ず罪を犯す。
罪とはなにも『会社の金を横領してやったぜ!』、『今日は盗んだ金でパーティーだ!』などのような必ずしも事件になるようなこととは限らない。
『橋の下の壁に落書きするの楽しい! ヒャッホー!』や『お、今の人、諭吉さん落とした! ラッキー!』、小さなことでは『昨日のメール? あ、ごめん昨日寝てたわ』も等しく罪と呼べるだろう。
人は日々罪を重ねて生きていくのだ。
もし、私は物心ついてから罪を一度も犯したことはございません……とほざくヤツがいたらゴミ箱の中にそいつをぶちこみコンクリートを流して、固めてからプールに沈めても何ら問題はないだろう。
なぜなら人は生きていることだけで身近にいる他の生物を淘汰し、あまつさえ自然環境すらも汚染しているからだ。
救うに救えない状況である。
そんな生きているだけで罪を犯している人間が物心ついてから罪を一度も犯していないと言うこと自体が甚だおかしいことだ。
それと同時にそれは嘘であり、罪であるのだ。
別に罪自体悪いこととは思わない。
罪を犯す人間が悪いのだ。
だが、生きている限り罪からは逃れられない。
なので人間は新たに罪を重ねないように気を引き締め続けなければならないのである……。
という説教を俺はある人物に対して行った。
例の三時限目の事件から復帰した放課後のことである。
そのある人物というのは朝ストーキングをしてきた女子生徒……そういえば名前を聞いていなかったな。
今その女子生徒は俺に色々言われて今はダウンしているようだ。
このことは一先ず置いておこう。
俺がなぜその女子生徒に説教をするはめになったのか……。
俺は起きた出来事を頭の中で整理する。
俺は例の事件で負った傷を癒すため、放課後まで保健室の住人と化していた。
そろそろ家に帰ろうと荷物を纏めていたところで保健室のドアが勢い良く開かれたのだ。
『たのもーう!』と叫びながら入ってきたのは朝の一件で俺をストーキングしていたあの女子生徒だったのである。
俺がそのとき、ここは道場か! と心の中でツッコんでいたのはどうでもいいことだろう。
女子生徒は俺の姿を見つけるとすぐに駆け寄ってきた。
そして泣きながらこう言ったのだ……。
『先輩のアドバイス試しましたけど、全くダメでしたよ。むしろ悪化しましたぁー助けてください』と。
どうも俺の『当たり障りのない会話をしたらどうだ?』というアドバイスを実際に柚子に対して実行しようとした際に間違って『ぐへへ……。柚子ちゃん、今日どんなパンツ穿いてるの?』という下心全開の当たり障りのありまくりな爆弾を投下してしまったことで、柚子に物理的にも精神的にも距離を置かれたということらしい。
つまり自分の不適切な発言で柚子に嫌われたということである。
俺がその事情を聞き、わかったことはその女子生徒がどうしようもない頭の持ち主だということと、ただのエロ親父だということだけだった。
そして話は始めに戻るというわけだ。
俺は今しがたダウン状態から復帰した女子生徒に彼女自身が聞きたいであろうことを問いかける。
「もしかして聞きたいのはどうすれば柚子と仲直り出来るかとか?」
「そうです!」
「それならもう関係改善は無理だから諦め……」
いや待てよ? 柚子とせっかく友達になってくれそうなんだから、これは応援した方がいいんじゃないか? と今朝の柚子の対応を頭に思い浮かべ考える。
柚子の友達第一号が彼女なのは少し不服だがこれも柚子のためだ。
これをきっかけに新たな友達も出来ることだろう。
そう結論づけ諦めさせる考えを放棄した。
「……無理だからどうしろと……?」
「いやいや違うよ。無理だからって諦めるなって言おうとしたんだよ」
俺は途中で言葉を切っていたことに今さら気づき、慌てて否定した。
危なかった……最後まで言っていたら取り返しのつかないことになっていたかもしれない。
「へーそこまで言うんだったら手伝ってくれますよね……?」
「ああ、もちろんだ」
俺は素直にこれはチャンスだと思い、手伝いの申し出を快く快諾した。
「じゃぁ先輩! ゴールデンウィーク中に柚子ちゃんと出掛けたいんですけど大丈夫ですか?」
「ああ、いいぞ!」
「それと柚子ちゃんとお泊まりもしたいです!」
「ああ、いいぞ」
「それとそれと柚子ちゃんとお風呂も入りたいです!」
「ああ、いいぞ?」
「それとそれとそれと柚子ちゃんをペロペロしたいです!」
「ああ、ダメに決まっているだろう」
「チッ、じゃぁ明日先輩の家行きますね!」
今舌打ちしなかった? もしかしてさっきの本気で言ってたの?
流石の俺でも今の発言は恐怖を感じた。
「わかったけど、家は知ってるのか?」
「いつからストーキ……ゲホンゲホン、ここに住んでいると思っているんですか。わかりますよ」
今不穏な言葉が聞こえて来たのは気のせいだろう。
下手に聞き返して、実は一年前から毎日ストーキングしてました、というような新事実がわかり、恐怖するくらいだったら知らない方がマシだ。
そう世の中には知らない方が得をすることがあるのだ。
「そうか、じゃまた明日な……」
「はい、先輩もまた明日ですね」
少しして彼女がいなくなり自分の荷物を持って帰ろうとした時点で俺は気づいた……。
そういえば、名前を聞いていなかった……と。
それに勝手に柚子の約束を勝手に取り付けてしまったが大丈夫かとも思った。
柚子のことについては家に帰ってからゆっくり考えることにしよう。




