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顔だけ極悪人な俺はストーキングされます。


 外を見ると、空が分厚い雲に覆われており、太陽からの光のほとんどを遮断していた。

 時期的には五月のゴールデンウィーク前である。

 そう今日学校に行けば明日からはフフフッ……その先何が待っているかは想像に難くない。

 この連休の間多くの人々は自らの住居を離れて遠い遠方の地まで旅行する。

 それによって高速道路はおびただしい数の車で埋め尽くされることになるだろう。

 俺の予想だが彼らは高速道路を埋め尽くすことを喜びに感じているに違いない。

 自分もこの車の列(充実してる人々)の一部であるという優越感を感じているのだ。

 まったくはた迷惑な奴らだ。

 狂っている。

 今日の晩御飯手抜きにしよう。

 俺はそう思った。

 一方、俺の予定はというと買ったはいいがまだ読むことが出来ていない『積み本』を消化したり、家の家事をしたりとわりと忙しい……と思う。

 イッパンピーポーのように遊びに使う時間はないのだ。

 決してゴールデンウィークにどこ行くかを話し合っているグループにさりげなく「あ、そこ良いよね!」と話しかけ一緒についていこうとして撃沈したわけではない。

 明日は今日を乗りきらないと訪れない。

 つまり何が言いたいのかというと、とりあえず学校行けや! ということだ。

 俺は一分程で学校の制服に着替え階段を下りた。



 リビングでは妹がトーストをかじって朝のニュースを見ていた。いや訂正しよう、占いを見ていた。


「……おはよう」


「……おう、おはよう」


「……そこにトーストあるから」


「……サンキュー」


 俺は席に着き妹の用意してくれたトーストを食べる。

 トーストの豊潤な香り、噛んだ瞬間口の中に田舎の風景と一面の小麦畑を連想させるような味わい。

 これこそ小麦 オブ 小麦 なのではないだろうか。

 俺は小麦の神に祈りを捧げながらトーストを食べ終え、マイカップにインスタントコーヒーを入れる。


「まだ学校まで時間あるな……」


「柚子は明日から何か予定あるの?」


 俺はさりげなく柚子のゴールデンウィークの予定を聞く。


「…………」


 マッ◯のドライブスルー並みにスムーズだった。

 え? 流石にお兄ちゃん、かわいい妹にスルーかまされたら傷つくよ!

 お兄ちゃんの HP24/46 だから!

 だいぶ削られちゃってるよ!

 誰か、誰かホ◯ミかけてー!

 どうする? もう一度聞くか? いやでも次スルーされたらお兄ちゃん今日学校休むよ。


「……特にないよ」


 良かった…スルーされてなかったと俺は安堵する。

 俺は少し早とちりしたようだ。

 それにしても妹に予定がないとは信じられない。

 妹は家族の贔屓目を抜きにしてもかわいいというか美人である。

 そんな妹なら友人も引く手あまただろう。


「……私友達いないから」


「……お、おう」


 そうとしか返せなかった。

 いやいやいや無理でしょ、あの空気で他に何を言えと。

 「お前友達いないの? クスクス」といってしまった日には俺はミンチにされてからスーパーに卸され、店頭にて398円で売られることだろう。

 それから俺は重くなったこの空気から逃げるように早めに家を出ることにした。



「何か気配を感じる……そこか!」


 別に頭がおかしくなったとかそういうわけではない。

 はたから見たらそう見えるかもしれないが今は気にしないことにする。

 家を出てしばらく歩いていたら誰かにつけられていたのだ。

 そして今その犯人を特定しようとしている。

 もし敵意があってつけているなら家族が危険晒されるかもしれないからだ。

 俺一人なら最悪構わないが家族にまで迷惑をかけることはしたくない。

 俺はそう考えて次の十字路の角で待ち伏せる。


「……!?」


 かかった! どうやら同じ学校の生徒だったようだ。

 確かめるために驚き立ち竦んでいる人の顔を覗きこむ。


「ん? 男なのか?」


 そう言葉に漏らしてしまうほど男か女かわからない中性的な顔をしていた。

 しばらくじっと見ていると……。


「あの……人の顔じっと見ないでくれますか?」


 そう返してきた。しかしこの声の高さはなるほど女だったのか。と一人納得する。


「……あ、すみません」


 俺はなぜつけられていた相手に謝っているのか、普通は立場が逆なのではないだろうか? そう思いながらもとりあえず謝る。


「……ってそうじゃなくて、何でつけてたりしたんですか?」


 俺は本来の目的を思いだし問いただす。


「あーそのことですか。私はですね。先輩の妹さん佐藤柚子さんとお友達になりたいなーって思ってるんですよ! それで先輩をつけていれば何かきっかけが掴めるかも知れないと思って……」


「……ってあー柚子と同級生だったのか。だったら柚子に直接そう言えばいいんじゃないか?」


「……は? バカ何ですか? 死ぬんですか? そんなことできるわけないじゃないですか。柚子さん普段誰とも話さないんですよ! それなのに急に何話せって言うんですか?」


 話してみて思ったがこの子はだいぶ口が悪い。

 初対面かつ一応同じ学校の先輩である俺にバカやら死ねやらと容赦ない言葉をぶつけてくる。

 まぁ一旦それはいいとして、言いたいことは分かる。

 我が妹は必要最低限のことしか会話しようとしない。

 「おはよう!」と言ったら「おはよう。」、「こんにちは!」と言ったら「こんにちは。」としか返さない。

 妹は言葉のキャッチボールをする気がないのだ。

 まるで某会社の会話型インターフェースのようである。

 今度明日の天気を聞いてみて何て返答するのか試してみようと思う。

 つまりどうすれば妹と友達になれるかだが…………。


「正直俺にもわからない。だけどまずは当たり障りのないことで話しかければいいんじゃないか? 例えば、次の授業のこととか」


 妹は基本無口だが、話しかければ話す。

 だから一方通行の会話から妹のことを徐々に知っていけばいいんじゃないかと俺は思った。


「なるほど! 先輩やれば出来ますね。頑張ってみます!」


 そう言い残して走り去ってしまった。

 しかしまた妙なヤツに目をつけられたなと残された俺は思いながら俺は学校へ向かった。

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