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顔だけ極悪人な俺は過去を語ります。


 俺が恐れられている理由としては目付きが悪い、顔付きが怖いなどの理由ももちろんある、あるがもっと大きな理由は一年前にまで遡る。



 今日は柏崎高等学校の入学式、俺の高校生活初めての登校日だ。

 俺は中学生のころは別の地域に住んでおり、高校から親の都合で今の地域に移り住むことになった。知り合いは一人もいない。

 まぁもともと知り合いと呼べる人がいたかどうかもわからないが……今はどうでもいい。

 今日は早く目が覚めてしまったので早めに家を出ていた。

 俺の家から学校までは徒歩で約十五分程で着く。

 なので徒歩で通学することにしていた。

 もちろん自転車でも良いのだが申請やら何やらでやたら面倒くさいのだ。

 そして現在これからの学校生活はどのように過ごそうかと期待に胸を膨らませて登校している最中である。


「あの、ちょっといいですか? こういうものなんですけれども……」


 突然後ろから話しかけられる。

 学校へ向かう際に曲がる最後の曲がり角を左に曲がったときのことだ。

 世間一般でいう職務質問というやつである。

 なぜ声をかけられたか疑問に思い、その警察官に聞いてみるとそれは登校中の行動に問題があるらしかった。

 俺は登校中これからの学校生活のことで期待に胸を膨らませていた。

 そのとき、俺はニヤついてしまっていた。

 大事なことだからもう一度言おう、ニヤついてしまっていたのだ。

 俺の顔は少々? 怖いらしくその顔と笑みを合わせればそれはとんでもなく犯罪者顔になってしまう。

 まさにジャ◯アン笑うと犯罪者顔理論である。

 それは学生の象徴である制服すら霞む顔であったとかなかったとか。

 そんなこんなでご近所の人に通報されてしまったようだ。

 最終的に事情をわかってもらえて良かったが、この件のせいで随分と時間が経ってしまった。

 なので俺は少し急いで学校へ向かうことにした。

 しばらくして学校が見えてきたと思い内心ホッと息をついていると、またもや声をかけられる。

 先程の警察官と違い声が高めだ。


「あなた、家の隣で毎朝ラジオ体操してる田中くんね!」


 だがしかし、声をかけられたのは田中くんだったみたいだ。


「ちょっと田中くん? 聞こえてるでしょ!」


 ちょっと、田中くん呼んでますよ! 女の子が声をかけているのに無視を決め込むとは中々度胸がある。

 俺の妹だったらミンチになってたよ。

 妹じゃなくて良かったね。

 などと思っていると。


「ぶへっ!」


 突然謎の言葉が聞こえ、それと同時に明らかに転んだであろう音が俺の耳に届いた。

 俺はため息を吐きながら後ろを振り返る。

 だがそこには誰もいなかった。

 今までのは幻聴だったらしい。

 前を向き歩こうとしたその瞬間、俺の制服の足元が掴まれていた。

 足元を見ると顔を擦ったのか顔中が血だらけの黒髪ロングの高校制服を着た女性が笑みを浮かべていた。

 コワイコワイ、何このホラー的シチュエーションは。

 長い髪で目と口元意外上手く隠れていて貞◯っぽい。

 それになんで笑ってるの? 大丈夫なの?

 俺は内心恐怖しながらもその場にしゃがみこみ、今もなお笑みを浮かべている女性に声をかける。


「あ、あの大丈夫ですか?」


 俺はこの状況の恐ろしさに顔がひきつるの抑え、笑顔で対応する。

 するとその女性は次第に疑問顔になっていった。


「やっと反応してくれた、田中くん?」


 その言葉と同時に涙も浮かべていた。

 マヌケな表情に先程までの恐怖が薄れ何とも言えない気持ちになった俺は微笑みながらゆっくり頷いた。

 それはお互いが人違いだという意味でわかりあえた瞬間であった。



 そんなこんなで本日二回目の警察官はなんと先程と同じ人だった。

 どうしてこうなった?

 と俺は少し前を振り返る。


 さっきの状況を客観的に見てみると、学校の前で男子生徒が地面に這いつくばって泣いている女子生徒見下ろし、笑顔を浮かべ頷いているという絵面に見える。

 うん……これが原因だったようだ。

 流石にこれを見て『うお! 貞◯だ! 一緒に写メとってもらおう!』とはならないだろう。

 それに家を早く出たにも関わらず、そのときは随分と時間が経っていた。

 この学校の入学式に向かう人たちに遭遇してもなんらおかしくないだろう。

 そしてこの光景を見たもの達は皆こう思ったに違いない。

 『警察って110だっけ?』と。


 そこまで振り返ったところで思考を現実に引き戻した。

 世の中理不尽だ。

 と退職をやんわり勧められたサラリーマンみたいなことを思った。

 一応先程出会った警察官と同じ人だったので俺は警察官に微笑みながら軽く会釈をする。

 だが一方、警察官はというと睨み返してきた。

 デスヨネ……だって二回目ですもんね、さっき解放されてから一時間も経ってないですもんね。

 楽しかった高校生活、結局アイツらには何も言えなかったな。

 そうして俺の高校生活は幕を閉じた。


 かに思われたがところがドッコイ、そうは問屋が卸さなかった。

 なんとあの俺のことを田中、田中呼んでいた女子生徒が俺の無実を証明してくれた。

 それはそうだよね、俺何もしてないもんね。

 カムバック、俺の高校生活! ありがとう、名も知らぬ女子生徒! 早くシャバの空気が吸いたかったぜ!

 と自分でもビックリするくらいテンションが上がっていた。

 あ、そういえば……と思い女子生徒に声をかけようとする。


「あの、もし良かったら一緒に入学式にいき……あれ?」


 だが俺の周りには誰もいなかった。

 どうやら女子生徒は何も言わず先に行ってしまったようだ。

 早く行かないと入学式間に合わないもんね。

 時間がそれだけ大切だったってことだよね…………たぶん。

 と少し俺は凹んでいた。

 だがそうはしていられない、早く行かないと入学式に間に合わないからだ。

 俺は少し焦りつつ学校へ向かった。

 もちろんいつボロが出るかわからないので無表情を貫き通した。



 誰が予想出来ただろう、いやこれは俺でさえ予想出来た。

 無事入学式に間に合い、その後教室で待機していたときのことである。

 俺は視線が自分に集まっていることに気づいた。

 別に自分に自惚れているわけではない。

 周りの態度があからさまに怪しいのだ。

 俺が振り向けば不自然に顔を反らし、俺が顔を前に戻せば再び視線を俺に向ける。

 もう軽く『だるまさんが転んだ』状態である。

 まぁ原因は朝の一件だろうと大方当たりをつける。

 学校の目の前で警察沙汰になれば自然と噂になるものだ。

 珍しいものがあれば興味が涌く、人間はそう出来ている。

 時期が過ぎれば次第に収まるだろう。

 担任の先生が来てからは一時間程ホームルームを行い 、その日の日程は終了となった。

 その後家でダラダラしたいがために足早に昇降口に向うとそこには朝の一件の元凶であるあの女子生徒がいた。

 そういえば、名前聞いてなかったな。

 でも朝の一件は結局人違いだったわけだし気にすることないのか?

 とその女子生徒の横を通りすぎる………ことは出来なかった。


「ちょっと! 待ってください。少し話があります」


 始めは何か興奮していた様子だったが次第に落ち着く。

 その変化に何かを感じ取った俺は話を聞くことにした。


「何のようですか?」


「ちょっと、そんなに睨まないでよ」


「いや、睨んでいるつもりはないんですが……」


「そんな嘘で誤魔化さなくても私は大丈夫。とそれより本題に入りましょう! いや、それより自己紹介が先かな。私は田中詩織よ」


「それで、本題のことですが……」


「私は田中詩織よ」


 どうやら俺が自己紹介するまでリピート再生のようだ。


「……佐藤俊です」


 実は相手に自己紹介するのがとても…いやかなり苦手である。

 まだすれ違い様に腹パンを決められる方がマシだ。

 自己紹介をするのが何となく気恥ずかしいのだ。

 例えば、ある人と友人になるのにわざわざ「友人になってください!」とは言わないだろう。

 それと同じである。


「じゃ名前も分かったことだし田中くんって呼ぶわね」


 ん? 俺の聞き間違えでなければ田中と聞こえたんだが。


「あの……佐藤です」


「あ、そうよね。ごめんね。これにはちょっとした理由があって……」


「理由?」


「これは今回の本題とも関係してるんだけど……」


「実は私相手のこと田中としかいえないの……」


「へ?」


 驚きすぎて少し変な声が出てしまった。

 穴があったら入ってそのまま地下二十メートルまで掘り進めたいと思ってしまうほどに恥ずかしかった。

 それにどゆこと? と俺の頭の中ではどこかの刑事が前頭葉から後頭葉まで聞き込み調査をしていた。


「言葉が足りなかったよね……私的には名前を呼んでるつもりなんだけどなぜか他の人には『田中』と聞こえてしまうみたいなの」


 デタラメを言っているようには見えなかった。

 なぜなら彼女がまっすぐ俺の目を見て話していたからだ。

 しかし本人は辛いな。だって考えても見て欲しい本人がある人の名前を呼んだとしても誰を呼んでいるのか周りは混乱するだろう。

 聞く人みんな『田中』だ、もはや誰を呼んでいるかわからないし、もしその人が田中さんだったとしても本当に自分を呼んでいるのかさえわからない。

 伝えたいことを特定の相手に伝えることが出来ないのだ。

 それはきっと悲しいことだろう。

 俺はこのような悲劇が起こらないようにという願いを込めてこの症状を『田中病』と呼ぶことにした。

 俺には詳しくはわからないがきっとこれまでも大変だったに違いない。


「……それは大変ですね……そういえば……」


 今の俺には同情することしか出来ないので早々にこの話を打ち切った。

 辛い話をしてても辛いだけだろう。

 その後しばらく雑談をして田中詩織と別れた。



 その後、問題の『田中病』だが、その噂は瞬く間に学校に広がり、その病の凶悪性を知らしめた。

 それと同時に入学式前のあの出来事や入学式後に話しているところを見かけた生徒が勝手な解釈をし、俺が田中詩織さんにそうなってしまうほどに暴力を加え、今もなお脅し続けているという噂も流れた。

 この噂、主に後者の方の噂に顔の怖さが助力して俺は第一級S級危険人物に認定されてしまった。

 もう第一級なのかS級なのかよくわからないと正直思う。

 認定されてから一年経った今でもその称号を欲しいままにしている。

 これで分かっただろうか? 俺が恐れられている理由が。

 まぁ他にも小さい出来事があったりしたのだが、それはまた別の機会だ。


 とにかく俺は高校生活のスタートダッシュに失敗した。


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