願い叶うとき
航太にそう言われた瞬間、教室が音もなく崩れ始めた。
「えっ?なにこれ?」
私がビックリして教室の隅にしゃがみ込むと
掃除用具入れが私に向かって倒れてきて―
「うわあああぁぁぁぁっっ!!」
目を覚ますとそこは病院の1室で私のそばには涙目のお父さんとお母さんがいた。
「彩葉!よーく聞いて、陽夏ちゃんを助けようと川に飛び込んだ貴方を航太くんが助けようとして
そのまま…」
「ねぇお母さん、これ何の冗談なの?
あ!どっかからドッキリ大成功!!とかプレート掲げた人が入ってくるんでしょ?」
「彩葉!!ふざけないで聞いt…」
「ふざけてないよ!!ふざけてないよお母さん…
ねぇ航太は?」
「航太くんはお前を助けようとしてなくなったよ」
何が何だかわからない私に告げられたお父さんのその一言は鋭く私の心を突き刺した
それでいて夢の中の航太の言葉を思い出させるのには十分だった。
ミンミンと蝉がうるさく鳴いて
ジリジリと太陽が照りつける今日、航太の7回忌が始まった。
「あ!彩葉お姉ちゃん!久しぶりっ!お兄ちゃんに顔見せてあげてよ!!」
「陽夏ちゃん久しぶり、お言葉に甘えて挨拶しようかな。」
友達から聞いたあの話は間違ってなかった
願いが叶う時大切なものを失う―
私は自分の罪を消す代わりに愛しい君の存在をうしなってしまったよ。
なんで君はあの時あんなに優しい顔で私に愛してると言ったの?
忘れられなくなっちゃったよ、
忘れたくないよ
私だって君…航太の事をずっとずっと愛してるからね
願い叶う時―
私は大切なものを同時に失った。
そして、
「神様お願いです。航太を生き返らせてください」
―私の願いが増えたときでもあった。