第9話:これが本当の『特進クラス』
生徒会長と名乗る神楽の手によって明日香は連れ去られてしまった。
しかしその事態を知るよしもないバナナマンは蜜柑ばっかり食べたがる。これはマズイと思ったスミス博士は今まで嫌がっていた内職を仕方なく始めた。
だがメロメロドラマチックなその他Aの合唱と共に、何とも奇妙なエキゾチックワールドと化した別名『渚』の踊りが一瞬にして爆発。だから全てはここから始まったのだと、村長は一人呟いた……。
「大丈夫?」
え?作者の頭がですか?と言いかけて僕は止めた。
「あ、はい。えっとここは……」
僕は長椅子から起き上がり辺りを見回した。見覚えのない古びた教室だ。前後の記憶が定かじゃないって事は、どうやら僕は軽く気を失っていたらしい。
「安心して。ここは生徒会役員室だから」
神楽は僕の眼前でにっこりと笑う。
「あ、はい」
何だ、さっきは突然で分からなかったけど凄く綺麗な顔してる。好青年です!って感じだし、髪の毛もサラサラでほんの少しシャンプーの匂いがして。この人、凄くカッコイイんだ。
「この人何者なんだろ……って思ってるでしょ?」
神楽は僕の足元にしゃがみ込んで僕の目をじーっと見つめる。
「はい」
僕は正直に言った。狂夜先生が見せた動揺といい、生徒会の別名といい、四天王といい。この人の発言には余りに謎が多過ぎる。
「君は最近まで本館にいたんだよね。じゃあ別館の事は詳しくないと思うけど……この学校を牛耳っているのは教師でもなければ校長でもない、この生徒会役員なんだよ」
僕は耳を疑った。生徒が学校を支配するなんて……聞いた事ない。
「もちろん君を別館に呼んだ校長もお飾りで、決めたのは僕なんだよ」
校長がお飾り……でも僕が本館に居た時は生徒会なんて存在、噂でも聞いた事なかった。
「僕達は影の支配者なんだ。余程の事がない限り表に出る事はない。けど、最近の特進クラスは目に余るものがある」神楽は俯いてため息を漏らした。
「こういう事はあまりしたくなかったんだけど……『特進クラス』は二つも要らないからね」
神楽は苦しそうな表情を見せながら僕の手をぎゅっと握る。
「と、特進クラスが二つってどういう事ですか!?」
僕は身を乗り出した。
「知りたい?君にはあんまり教えたくないんだけど」
「教えてください!」
僕は渋る神楽の肩を揺さ振った。
「生徒会の別名、特進クラスっていうんだ。2年前に色々あってね、二つに別れたけど……こっちが正しい特進クラスだ」
そんな……特進クラスが二つあったなんて!!
まぁあんまり驚くような事でもないけど。
でも2年前に色々あったって、狂夜先生とかな?それに四天王って、まさか。
「あ、あの……四天王って何ですか?」
「それはまだ分裂する前に特進の生徒の間で呼んでいた通称だ。僕を含めて後三人いるんだが、特進上位に君臨した者にだけ与えられた称号だった。今となっては僕達を示すキーワードみたいになってしまったけど」
そうか、じゃあこの人も特進クラスの生徒なんだ。そいでもって上位に君臨した四天王でもあって。尚且つ生徒会長。なんか紛らわしいな……。
困惑する僕を見て神楽は笑った。
「ごめん、ごめん。いっぱい名前があって理解できないよね。まぁ簡単に言うと、特進にも階級があるんだよ。で、上位に上りつめた者は四天王の称号を得られる。そして四天王になった人間は生徒会役員となりこの学校を操れるって訳さ」
うーん、なるほど。特進クラスの裏にあったもう一つの特進クラスか!まぁ、だから何?って感じなんだけどね。
「まぁ色々と紛らわしいから、僕達の事は通称で呼んでよ。『生徒会四天王』ってね」
笑った神楽の目がどことなく挑戦的に見えたのは僕の気のせいだろうか?
「まぁそんなつまんない話どっちでもいいや。今日君をここに連れて来た理由はね、僕達の仲間になって欲しいからなんだ」
神楽は無邪気に笑いながら僕の手にキスをした。はっきり言って嫌がらせ?としか思えなかった。
「気に入らなかったの?」怒った僕の表情を見て、神楽は目にうるうると涙を溜めている。
「僕は男ですよ?」
「違うよ!!!」
別に性別が全てじゃない世の中だけど、そこまで否定されると僕の明日は涙で見えませんよ。
「君は今日から僕の彼女になるんだ。おっと、嫌とは言わせないよ?もし変な真似でもしたら普段真面目に働いてる44人のSP、まぁ仕事の内容を詳しく言えばクリーニング屋でタオルを畳むだけの係なんだが……その真面目にタオルを畳む彼らが一斉に君を呪い潰し、更に爆発する!いいね?」
なんかよく分からないけど……怖い!もの凄く怖い!!
そして僕はかなり強制的に神楽の彼女にさせられてしまった。
神楽に拉致された明日香はまんまと馬鹿みたいに彼女になってしまった。そしてオカマが苦しんでいる時、特進クラスではまだ決着のついていなかった山下gameが続行されていた。
早く助けにこんかいっ!バトルしてよ、バトル!と突っ込む声が聞こえたような気がしたが、多分そこらへんの怨念かなんかだろうと三人は聞き流していた。