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第8話:謎の男、登場

終わりのない山下gameを続ける狂夜とお宅。そして外見に似合わずしょんぼり君になってしまった幹。しかしこの後物語は急速な展開を見せる!




「そういえばマリア。第1話から気になっていたんだが、どうして君は男子の制服を着てるんだ?」

狂夜先生は前髪を掻き揚げる練習を止めて僕に向き直った。


先生、それを指摘してくれるのを待ってました。僕は言った。

「みんな誤解してるみたいですけど、僕は男なんです!」

よしっ。バシッと言ってやったぞ!

しかし狂夜先生は僕の言葉を聞いて鼻で笑った。

「Boy?君が?それはNoだろ」

あなた本当に教師ですか?なんですか、その英語力。


「信じてくださいよ!確かに僕は女の子に間違えられるけど……でも正真正銘男なんです!」

「ふん、ナンセンスだね。君はGirlだよ、オレのエンジェルGirlだ」

何がナンセンスなんだ!?僕の発言がか?

「御主人様、そんなにムキにならなくてもあたしは一生御主人様のメイドですから」

近づいてきたお宅さんが僕の手をぎゅっと握りしめる。

いやいや!そういう話じゃなくって!


「そうだ、お前が女なら俺も悩む必要はない。明日香、いい加減素直になれよ」

しょんぼり君だった幹君が突然立ち上がり、僕に近づいてくる。

いやいや!かなり素直に生きてきたつもりなんですけど?困惑する僕の眼前に狂夜先生はセーラー服を突き出した。

「今の君でもプリティだ。だがこれを着る事によって君は更にプリティになる。略してさらプリ」

何で略したんですか!?っていうか、可愛くなんてなりたくないよ!僕は男なんだ!!


「やや止めて下さい!先生!みんな助けてよ!!」

幹君とお宅さんが僕の体を両側から掴む。そして目の前にはセーラー服を手ににじり寄ってくる先生。ダメだ。このままだと僕はセーラー服を着させられる!

「誰か、誰か助けて!嫌だぁ!」


――ガンッ!


僕が叫んだと同時に物音が耳を掠めた。嘘?本当に誰か来てくれた?僕はゆっくりとドアの方に目をやった。


「狂夜先生、レディは丁重に扱ってくださいね」

壁にもたれたまま足でドアを開ける男の人が視界に入った。

神楽(かぐら)か。何の用だ?」

狂夜先生の声が突然低くなる。そして僕は、やっとまともな名前の人が出てきた、と思った。


「そこのお姫様が嫌がってたものだから、助けに来ただけですよ」

神楽という男の人は、そう言ってにっこりと微笑んだ。


「オレはマリアをいじめていた訳じゃない。ちょっと遊んでただけだ。お前こそ、特進クラスの生徒でもないのに勝手に入ってくるな」


ちょっと遊んでた?いや、かなり本気だったぞ!

「特進クラス?これが特進クラスだって?笑わせるな狂夜」

神楽は手で口を押さえながら狂夜先生の言葉をおかしそうに笑う。


「ちょっとあなた、何なのですか?あたし達の事を馬鹿にしてるんですの?」

お宅さんが僕から手を離し神楽を睨みつける。


「あっごめんね。決して君達を馬鹿にしたつもりはないんだよ。ただ……君達は特進クラスを誤解しているようだから」

神楽は申し訳なさそうに謝ると、少し声のボリュームを落として言った。

「誤解してるって、俺達が何を誤解してるんだ?」

幹君が神楽に詰め寄る。一瞬沈黙が降りたが、やがて神楽はおもむろに口を開いた。


「自己紹介しよう。僕は生徒会長をしている神楽だ。皆さん生徒会の別名をご存知かな?」

神楽は少し間を置いたが、誰もその問いには答えなかった。


「そうか、やっぱり知らなかったのか。狂夜、あなたという人は――」

「やめろ!神楽、何が目的か知らないが、君達とのDeepな争いは既にFreezeしている!」

狂夜先生の顔がどんどん青くなっていく。何なんだ?生徒会の別名とか争いとか。なんか因縁でもあるのかな。


「狂夜、あなたが四天王の一人に負けた事は僕としても残念だったよ。僕はあなたを見込んでいた。だがしかし、何時までも君達を野放しにはできない。もちろんあのサディスト麗子も例外ではないよ」

四天王!?それに狂夜先生が負けたって……一体どういう事なんだ?

僕は狂夜先生と神楽の顔を交互に見比べた。ふっと神楽と目が合った。


「まぁいいか。今日の目的は彼女をさらう事だったし。狂夜、次まで生かしてあげるよ。それまでその命大事に使ってね」

神楽は不適な笑みを浮かべながら僕に近づいてくる。

「おい、てめぇ!黙って聞いてりゃ調子乗りやがって!明日香は渡さねぇぞ!」幹君が怒声を上げながら僕の前に出る。


「幹孝久。レベル152……ふっ、君も特進クラスには値しないな」

「な、なんだと!」

っていうかレベルって何!?


「特進の生徒をナメないでください!」

取っ組み合いになっている幹君と神楽に向かってお宅さんが突進していく。

「君はレベル1082か。なかなかいい線だけど……残念だね」


神楽がにっと笑った瞬間、凄まじい光線が視界を遮った。なんかまた世界観ズレてませんか?これじゃあただのバトル小説ですよ。あ、そういえばバトル小説なんてジャンルあるのかな?今度104に電話して聞こう。


なんて悠長な事考えている場合じゃなかった!光が収まり、僕はきょろきょろと辺りを見回した。なぜか教室が横向に見える。


「お姫様、王子と一緒に来てくださいね」

僕の顔の上で神楽が囁いた。うん?これってもしかして……お姫様抱っこされてる?

「てめぇ!明日香を返しやがれ!俺もまだ抱っこしたことないのに!!」

「御主人様はあたしの御主人様です!ラブ萌えアタックしますよ!」


なんかよく分からないけど、僕はとりあえず誘拐されそうになってるらしい。


「悪いが君達と遊んでいる暇はない。それと狂夜、(うるは)から伝言を預かっている」

神楽を睨みつけていた狂夜先生の顔が一変した。


「う、麗だと……!」

「どうしてもあなたに伝えて欲しいと頼まれたからね。『哀れみの狂想曲……貴女がオレの傍にいない事は分かっていた。なのに、今日もオレは貴女の幻影を夢見ている。狂夜、可憐に舞う一輪の花の如く、夜を生きるオレの下で朽ちるがいい』ですって。確かに伝えましたよ」


狂夜先生は額から汗を流しブルブルと震えている。よく分からない伝言だけど確かに凄い!色んな意味で。


「ではお姫様、行きましょうか♪」神楽はそう言って優しく笑うと、教室のドアを蹴破って猛スピードで廊下を走り出した。

別に特進クラスに戻りたい訳じゃないけど、その場の勢いに流されて、僕はへるぷみーと叫んでいた。

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