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わらしべ長者の行き先。  作者: 松山リカ
山本の一人旅。
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山本、旅に出る。

ずっと、書こう書こうと思っていたのに、なんかめんどくさくなっちゃって、全然手を付けれていなかったお話です。

飽き性なので、途中で更新止まっちゃったら、軽く叱って下さい。


人生に、平等なんて一つもない。







 12月26日。秋の少し冷たい風が一気に勢いを増し(多分)外にはすでに雪が少しちらつき始めた(きっと)頃。クリスマスには寄り添って歩いていたカップル達(知らんけど)もそれぞれの現実へと戻り、世の中は忙しなく、正月の準備に勤しんでいるみたいだ。

 締め切ったカーテンから外は見えないけど、でも多分きっとそうなのであろう。知らんけど。


 高校受験に落ち、絶望の淵に立たされ、なんとなく引きこもり生活を送っていたが、いつの間にかドップリ浸かってしまい、早いもので今ではもう3年と少しの時が流れてしまった。

 俺の部屋のカーテンは、締め切り、一切開けていないせいで、薄っすらとほこりが被っているように見える。明りは、3年と少し前に買ってもらった低スペックPCの画面の明りのみ。天井に揺れているペンダントライトは明るすぎてあまり好きじゃなく、ほとんど点けていない。洗濯物や食事は母親が面倒を見てくれている。俺が汚れた衣類を扉の向こうに置いておくと、いつの間にかその衣類は綺麗に仕上がった状態で扉の向こうに帰って来ている。食事は朝の7時と夜の8時。昼は母親が仕事に出かけているため、食事は置かれていない。父親は早くに亡くなったし、兄弟もいないので、昼間は僕一人。誰も昼食を作ってくれる人はいないからだ。昼食は食べないことに慣れているので、部屋から出るのは用を足すときのみ。その行為以外に、部屋から出る意味は正直「ない」と思っている。

 そういえば、母親と最後に口を聞いたのはいつだっただろう。


 我ながら、完璧な引きこもり生活だ。自分でも分かっているのだ。親に迷惑をかけていること、このままじゃいけないこと。でも、俺は部屋から出られないでいた。

 引きこもり1年生の間なら、外に出るのは容易なことだったと思う。でも、今はどうだ?あっという間に3年生だ。3年間一回もしていないことを、今になっていきなり実行など出来るもんか。一年生だった頃、外に出る必要のあることをしていれば、何かが変わっていたのだろうかと、二年生のときは毎日悔やんでいたが、三年生になって少し経った頃には、後悔すらもしなくなっていた。


 俺には、生きている意味などあるのだろうか。そう思い始めたのだ。

 半年前くらいに、久しぶりに電源を入れたテレビでたまたま放送していた番組は、新社会人の特番だった。男女代わる代わるにインタビューをしているらしく、社会人になるにあたってのこれからの抱負や、意気込みを聞いて回っていた様子を纏めたような内容で、自分と同い年の彼らは、年中スウェットを身に纏い、虚ろな目をした自分とは違い、揃ってスーツを身に纏い、嬉しそうにキラキラと笑っていた。

 彼らと違い自分は、社会になんの貢献もしていない。完全に隔離されているこの部屋で人生を過ごし、誰の役に立つ?誰の記憶に残る?これからどう生きていくか、今の自分に明るい未来は見えない。友達もいない、家族にすら見放された自分に、生きている意味などありはしないと思った。

 だから、死のうと思った。誰にも迷惑のかからない、ここよりずっと遠くの場所で。


「五千円…。もっとお年玉、置いときゃよかった…」

 だがしかし!現実とは、やはり残酷なものである!遠くに行くにしても、五千円ぽっきりじゃ遠くってほど遠くにはいけない。夜行バスに乗って、ここよりそこそこ遠くへ行けても、それだけで金は底をついてしまい、とてもじゃないが死に場所なんて探せないだろう。きっと駅から然程遠くない場所で、凍えてぽっくりだ。

 電車…夜行バス…車…は運転出来ないし…俺が運転出来て、そこそこ遠くへ行けるものなどあっただろうか…。…待てよ、あるじゃないか。すぐそこに。玄関に。いや、でもあれは…。


 そう。自転車である。マウンテンバイクではなく、クロスバイクでもなく、ましてやロードレーサーでもない、世間一般で使われている、あの普通の自転車である。中学校の卒業祝いにと母親が買ってくれたものだが、その自転車は数回しか人に乗られることもなく玄関に寂しく放置されていた。


「背に腹は代えられん・・・自転車でも結構遠くに行けるってテレビでやってたし、交通手段はチャリとして・・・あ、リュックどこやったかな」

 ずっと使っていなかったリュックは思っていた通り、押入れの二段目の奥の段ボールの一番下にぐしゃぐしゃに詰められていた。見た目は悪いが・・・まぁ使えるので問題はないだろうそのリュックに、旅に出るにあたって必要だと思う物を放り込んでいく。


 食費、宿代、空気入れに使うには絶対に足りないと思われるが、ないよりましな全財産、五千円。台所を漁って見つけた100円のあんぱん二つ。最悪、金が底を尽きて、野宿せざるを得ない場合にたき火することになったら重宝するであろうライター。あと必要な物は・・・

「特にないかな」

リュックはガバガバである。


 AM11時30分。母親は仕事。よって誰もいない。軽いリュックを背中に担ぎ、靴箱で眠っていた靴を無造作に玄関に放り投げ、足を突っこむと、外に出るということが現実味を帯び、少しすくんでしまった。それを振り払って玄関のノブに手をかける。


 今日、僕は旅に出る。

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