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Run away!3

滑る季節。

作者: 貴幸

未だ名前を覚えてないアカラギ。








授業が終わった。


今日は何を理由にして逃げるか…。


そう考えながらも足早に大学をでる。



「おっと…」



今日は足元が滑る。

雪が溶けてツルツルだ。



「アカラギくん!早い!!」



「げっ。」



魔の女の声が聞こえる。

逃げようとするが滑って危険だ。



「わっ!」



転んだ音が聞こえた。

振り返ると顔をあげた女の鼻から血が垂れていた。



「あぁー…」



しょうがなくティッシュを渡す。



「そんな急ぐからだろ…。」



「アカラギくんがはやいからだよ…カッコ悪いとこ見せちゃったなぁ。」



本当、なんでこんないつもくるのか。



「立てる?」



手を差し伸べ立たせる。



「ありがとう。」



しかし、足がなんとなくぎこちない。

もしかしたらケガをしているのではないだろうか。



「こっちこおってないからこっちいくぞ。」



「アカラギくん、手繋いだままなんだけど。」



「で?」



うまく歩けないしコケるだろうからつないでやっているのに。



「いや…なんでもないです。」



「そう。」









「足、見せて。」



「タイツなんだけど。」



やはり脱ぐのはいやだろうか。



「痛い?」



「歩けなくはないかな。」



「本当に?」



嘘をついていると、すぐわかる。

目を逸らすんだ。



「…痛くて死にそうです。」



「どうしてほしい?」



「えっ!?」



なんか違う意味に捉えられている気がする。

別に背負ってもいいけど、こいつはいいだろうか。



「地下鉄おりて、駅からどれくらい歩く?」



「十分くらい…。」



俺の家よりは近いということだ。



「じゃあ、おくってくからおんぶしていい?」



「え!?あっ、うん!!」



大人を持つのは初めてだ。

ヒロキくらいまではいけるがさすがにキツいものはある。



「ごめんね、私バカだから…」



「それ、同じ大学に通ってる俺もバカになるからダメ。」



「学力の意味じゃなくて…。」



変な女だ。



「あー、重い。」



「酷い…。」










地下鉄に乗る。



「もしかして、駅降りてもおくってくれるの?」



「そうだよ。」



「アカラギくん、なんでそんな優しいんだろう。」



「…知らない。」



自分より、他人を大切にしてしまうからだ。

自分なんてどうでもいいからだ。

今だって、大学に通っている理由は良い仕事についてヒロキを大学にいかせるためだ。



「足、骨折とかしてるかな。」



「酷くてねんざくらいだと思う、多分。」



ここで女の服装を見る。

コートはきてるのに、下はタイツにホットパンツだ。



「そんな格好してるから転んで重傷おうんだろ。」



「オシャレ。」



別に男子は冬まで女子の足を見たいわけじゃない。



「寒そうとかしか思わねーよ。」



「好きな人の前では少しでも可愛くいたいの。」



「あっそう。」



会話を無理やりきらす。



「…何も意識しないわけ?」



「何がだよバーカ。」



「ちえっ。」



嘘、すごく意識してる。

でも、嫌だ。



少し空いた地下鉄の中で俺と女の間の席一人分空いたスペースが埋まる事はなかった。











「こっから十分ね…。」



「タクシーとか呼ぶから、いいよ。」



「お金かかるだろ。」



歩き始める。

意外と静かな場所だ。

いつもここから十分歩いてくるのか。



「家に包帯とかはあるの?」



「うん、多分。」



「それとも病院いった方がいいか?」



「家にはお母さんもいるから、仕事から帰ってきたら車でおくってってもらう。」



「そう。」



肩に置いていた手は首にまわされ前かがみに体重を寄せてきた。



「おっも。」



「落ちそうで怖いから。」



「胸当たってるぞ。」



「平気で言わないでよ…。」



正直なんとも思わないけど。

歩いていると意外とはやく家についた。



「あ、ここ。」



「へぇ。」



「お茶とか、飲んでいってよ。」



確かに手が寒い。



「そうする。」









家に入り、コートを脱ぐ。



「あの、アカラギくん応急処置の仕方とか…わかる?」



応急処置をすれと言ってるのか。



「ジャージとかに着替えて来い。」





小さい頃にねんざしたとき、父に教わった。

腫れている場所をいたずらに押す。



「いっ…!!!!」



少し涙を浮かべた。

その表情にそそられる。



「アカラギくん、なんでそんな笑顔なの…。」



「いや、良いいたがりかただな…って。」



「変態…。」



ああ、変態さ。



「こうゆう事くらい自分でできろよ。」



「お母さんいるから…。」



「そのお母さんはいつかはいなくなるんだよ。」



少し悲しそうな表情をした。

ヒロキは、もう既にいないっていうのに。



「そうだね…、その前に誰かと結婚しなくちゃ。」



「お幸せに。」



ムッとする。

包帯を巻き終わった足を叩く。



「っ!!!!!」



「ふふ…」



これはまた転ばせるのもいいかもしれない。



「じゃあ俺帰るから。」



「帰っちゃうの?」



コートをとろうとするが服をつままれる。



「ヒロキがご飯作って待ってるから」



「アカラギくんってヒロキくんの事大好きなんだね。」



間違ってはいない。



「ヒロキがいなかったら俺は死ぬから。」



「そっか…。」



「じゃあお大事に。」



ヒロキを撫でるのがくせで、つい頭を撫でてしまう。



「あ、今日はありがとう、また、今度。」



「はいはい。」



今日は人助けの夜になった。







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