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序章 甘酸っぱい記憶

ずっとずっと好きだった人。

中学生の頃

入学式で彼の斜め後ろの席に座った。


かっこいい・・・・


そう思って、もしかしたら一目惚れだったのかも。

彼の名前は宮沢泰弘やすひろ

最初は名前が読めなかった・・・


でも私は素直になれなくて

ヤスに痴話げんかばっかりふっかけていた。

そのくせ校庭で毎日走っている彼を

ずーっと目で追っていたっけ。


半年間の健気な片思いの末

中学2年生の3月、私はヤスに告白された。

顔は整っていてかっこいいけどそれでいて謙虚で

面白くて意地悪なくせに真面目で、

でもとっても不器用な奴だった。


それから私たちは4年間付き合った。


本当の彼はひがみっぽくて、

それから高校卒業までの4年間、ホントに辛い思いもした。

私の方が高校で進学率のいい学科に進学したことで

彼は付き合ってはいたけど

学校では全く話してくれなくなった。


それでも


二人で学校の裏の秘密の場所で話しているのが幸せだったから

ずっとずっと付き合っていた。

彼の笑顔が大好きだった。

いつか、学校でも普通に振る舞ってくれることを信じて、辛くても別れなかった。

まあそうなることは無かったけど。


そんな私たちも高校卒業後の進路はバラバラになった。


「俺は東京にいくよ」


そう言って彼は東京の大学を受験した。


私は・・・・・・

ずっと教師になるのが夢だった。

だから地元の国立大学を受験した。


彼は合格したけど

私は不合格。


私は行くところが無くなって浪人することになった。


私たちは別れた。


「俺と付き合ってる場合じゃないよ。

 俺のことは忘れて頑張って。

 いい報告待ってるからさ。」


そう言って泣きじゃくる私を抱きしめながら彼は言った。

あの時、彼がどんな顔をしていたか覚えていない。


私も一緒に大学生になりたかった・・・・

でも大好きな彼をこんな浪人生に縛りつけておくつもりは無かった。


そうはいっても浪人生時代は辛かった。

大学生の楽しそうな報告を聞きながら、私は泣きながら、

地元に残って勉強した。


6月、辛くて辛くてどうしようもない時に

忘れていた元カレに電話をしてしまった。


電話の向こうでずーっと話を聞いてくれた。


あの時の安心感・・・・


私がただ甘えていただけなのかな。

それから元カレは

離れていたけどずっと味方でいてくれた。

友達もみんな離れていく中で、

彼はそうやって支えてくれた。おかげで乗り越えられた。


今度は私も東京に行こうと思いだしていた。

彼の元へ。

彼の近くで、今までとは違う私たちになりたいって思っていた。


でも、そうはうまくいかなかった。

受験は失敗し、私は去年と同じ、

地元の国立大学を受けて、そこに進学することになった。



大好きな彼だった。

支えてくれた恩返しがしたかった。

でも東京には行けない。


新学期を迎える前に

私は元カレを追って東京に遊びに行った。


本当はこれからどうするかを話し合うために。


ずっと話し合った。

はっきりさせるのが嫌で先延ばしにしていたけど


私たちはまた別れることになった。

今度は今まで以上に

別れる。


泣きながら

『はじめて』をあげた。

気がついたら高校時代よりももっと好きになっていた。


でももしかしたら

私よりももっと


彼の方が辛かったんじゃないかな。


自由な世界の中で待っていてくれたんだから。


でも当時はそんなことは全然わからなかった。

こんなに好きなのは自分だけだと思っていた。



あれから

彼はどうなったんだろう。

時々寂しくもなるけど

私は


やっと


これもいい思い出と思えるようになってきた。



あれからもう10年。

私は夢を叶えて教師として教壇に立つ日々。

憧れだった教師、

そのためにこの地元に残ったようなもん。

彼とは成人式でちょっと見かけたきり。

もういいんだ、向こうも幸せを見つけているはずよ。


そんなことを思い出すところから

この物語ははじまる。

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