西方帝国の貴族制度
●西方帝国における貴族制度の成立と、その意義
西方帝国が成立する以前、大陸においては「貴族」と呼ばれる強大な力を持つ個人また勢力が相争っていた。この場合における「貴族」という語は、主として「晶術に優れるもの」という意味で用いられる、所謂「生来の貴族」である。
この晶術をよく用いる生来の貴族は、それ以外の一般人(平民と呼ばれる)と比較して、圧倒的な戦闘能力を有する。
西方帝国が成立していく過程で、彼ら「生来の貴族」を体制の内側に取り込み、貴族同士の無秩序な衝突や、貴族による平民の虐待などを防止するために創設されたものが西方帝国の貴族制度成立ちである。この生来の意味での貴族は、西方帝国における「武門貴族」に相当する。
またさらに西方帝国の成立に伴い、社会が安定してくると商業活動が盛んになり、非常に多くの資本を持つものが出てくるようになった。彼らを体制の内部に取り込み、保護し管理するための手段として「商家貴族」の制度が設けられた。商家貴族の場合、爵位は資産の多寡に応じて決定される。
さらに学問・芸術・発明などの分野で活躍したものを称揚してインセンティブとするために学芸貴族の制度が、行政や政治の分野で尽力した高官に恩典を与えるために文官貴族の制度が、その他何らかの功績があったもののために、勲功貴族の制度が創設された。
西方帝国における「貴族」といえば、正式には、この「貴族制度によって貴族に叙せられたもの」という意味になる。
●貴族の種類
西方帝国の貴族には以下の5種がある。
①武門貴族
成立が最も古く、また最も正統的な意味での貴族である。晶術の行使に優れた者が叙せられる。
晶術行使の能力の優劣は遺伝する可能性が高く、晶術の行使能力に優れた者の子は、晶術の行使能力に優れていることが多いが、絶対ではない。
しかし、爵位および領地の相続には爵位の位階に応じて一定の晶術行使能力すなわち戦闘能力が求められる。
そのため貴族の相続人となるものが一定以上の戦闘能力を有していない場合、爵位と領地は相続人の戦闘能力に見合ったものへ縮小・格下げされるか、あるいは帝国に返納されることになる。
そのような、実子が晶術の行使に優れていない場合に備えて、領地や爵位の相続対象者は子や兄弟姉妹のみならず、かなり遠くの親戚までが認められるが、全くの他人を継嗣とすることは認められておらず、武門貴族は一定の割合で新陳代謝する。
②商家貴族
豪商と呼ばれるような人々が任ぜられる。爵位の位階(領地を任されていれば領地の規模)は、純資産の多寡や商売の規模、社会への貢献度等で決定される。当然、商売に失敗して没落すれば爵位の位階の降格(領地の帝国への返納)があり得る。爵位や領地は、事業を譲り渡すことで、任意の相手に相続させることができる。高位の爵位を持つものがその事業を分割し、より下位の爵位複数へと替えることも可能である。
③学芸貴族
学問・芸術・発明などの分野で特に功績のあったものを貴族に任じ、恩典や名誉を与えるための制度である。爵位や恩典の世襲は無い。
④文官貴族
武官のみならず、文官にも出世や恩典を受ける機会を与えるために創設された制度である。
文官貴族は爵位に応じた領地を治めるが、それは封建的な制度に基づいて下賜された領地というよりも、帝国の直轄地に派遣された代官としての色彩が強い。爵位や恩典の世襲は無い。
⑤勲功貴族
その他勲功あるものが恩典として叙せられるものである。爵位や恩典の世襲は無い。
●帝国法上の身分序列一覧
:皇 帝:身分制度の最上
:副 帝:国王の上位、皇帝の直下にある皇帝の代理。
過去に一度だけ設けられた。通常は存在しない身分序列
:国 王:皇帝より冊封を受けている属国の国王
:大公爵:公爵のうち、大きな勢力や力を持つものを特別に任ずる。
皇帝より冊封を受けている属国の国王と、身分序列では同格とされる。
:公 爵:侯爵のうち晶術行使能力が高いもの。有能な陪臣を多数抱えているなど、
勢力の強いエース格に与えられる序列。
:侯 爵:伯爵のうち晶術行使能力が高く勢力の強いエース格に与えられる。
:天竜候:黒竜の騎士にのみ与えられた特別の序列
通常は存在しない身分序列。侯爵と同格。
:伯 爵:貴族制度の基本単位
:天竜伯:天竜の騎士に自動的に与えられる序列。伯爵と同格。
:城 伯:子爵と殆ど同じであるが、城などの拠点を有する。
多くの私兵を持っている。晶術の行使能力が高い。
など軍事的重要性が高いものに与えられる身分序列。子爵のエース格。
:子 爵:大きな都市の統括者であるとか、
ちょっとした町や村を複数統治している領主程度。
高位の行政官僚に与えられることも多い。
:男 爵:田舎の村などを二つ三つ束ねている領主程度。
:勲爵士:ちょっとした名士程度で一代限りの序列
:平 民:通常の権利義務を持つ一般人
:奴 隷:戦争時の捕虜のうち捕虜交換の対象にならなかったもの、
また債務の支払いのため自ら身売りしたものである。
奴隷はすべて国有であり、道路建設・清掃・魔獣討伐等の
公共的な労役を能力に応じて課される。
※他に飛竜騎士、走竜騎士、独立自営農、世襲代官などの下級貴族が存在するが、それは帝国法で定められた公式の身分序列ではない。
※爵位についての説明は武門貴族の場合のものである。
●副爵の制度
伯爵以上の者は、自らの領地や勢力などを裂き与えることで、裂き与えた相手を自分よりも下位の爵位に任じ、陪臣とすることができる。しかし、その任じた爵位の頭には副の接頭辞が付き、宮廷序列も一段階下の扱いになる。
例えば、伯爵が自分の領地を裂いて自分の下に子爵を任命すると副子爵となり、帝国の宮廷序列では男爵相当として遇される。