修行の成果
学校が始まり1ヶ月がたった。
座学、剣術、魔術の基礎。毎日が充実している。
そんなある日。
「あんた、MPが15にふえてるわよ。」
「え?そうなの?」
「アタシの鑑定スキル【万能分析】で見えてるわよ。ちゃんと成長してるじゃない。」
「そうか、修行の成果がでてるのかもな。」
少しだけうれしかった。MP10からたった5しか増えていないが、この学校に参加してよかった。
「ちょっと試してみたいことがあるんだ。ミコさん、付き合ってくれませんか?」
「ええ、私でよければ。」
ミコさんが快く頷く。
「ちょっと!アタシじゃだめっていうの!?」
「私じゃ力不足だっていうのか!」
マチとクノが同時に食いついてきた。
「いや、最初は魔道士のほうがいいんだよ。クノには後で手伝ってもらうから。」
「まあ、そういうことならしかたないな。」
クノがあっさり引き下がる。
「アタシは今、心は魔道士よ!これでいいわね!」
マチが意味不明な宣言をする。
「気持ちだけもらっておく。」
オレはマチをスルーしてミコさんに向き直る。
「じゃあ、今からミコさんに魔法を打ちます。痛いやつじゃないので安心してください。」
「わかりました。お手柔らかにお願いします。」
オレはミコさんに手をかざす。
「『魔法束縛鎖!』」
魔法の鎖がミコさんの体に巻きつき、自由を奪う。
相手の動きを封じ、魔法を封印し、魔法耐性を下げる、対魔道士用の拘束魔法だ。
「これはかなりの高等魔法ですね。ただ発動に大量のMPを消費して、維持にもMPを食い続けるので、実戦で連発するのは難しい魔法です。」
縛られたままミコさんが冷静に分析する。
さすがだ。
「マチ、今のオレのMPはいくつ?」
「えーと……3。あ、どんどん減ってる。0になった。」
しかし、鎖は解けない。
「どういうことですの?」
縛られたままのミコさんが首を傾げる。
「クノ、次は君にもかけるけどいいか?」
「いいけど、アンタ、MPもうないんだろ?」
「だまって見てて。『魔法束縛鎖!』」
クノの体にも鎖が巻きついた。
「うそだろ!!」
クノが目を丸くする。
オレは二人の魔法を解除した。
「じゃあ、ミコのスキルで拡散したらどうなるんだ?!」
クノが身を乗り出す。
「全員まとめて動きを止めてれば勝ち確定じゃない!」
マチも食いつく。
「じゃあ、やってみようか。ミコさん、お願いします。」
「わかりましたわ!」
『魔法束縛鎖!』
【拡散!】
マチとクノに同時に鎖が巻きついた。
「やりましたわ!」
ミコさんが声を上げる。
しかし。
「くっ、はあああああああ!!」
クノが気合とともに鎖を引きちぎった。
「あー、やっぱりか。」
予想はしていた。
「拡散すると威力が落ちるからね。そうなると思ってたよ。」
「こんなもので私は止められないよ!」
クノが腕を組んで勝利宣言する。
が。
「ちょっと!これどうやって解くのよ!!」
マチは解けていなかった。
……やっぱり精神力の問題か。
「はっはっは!どうやらお前には解けないらしいな!私の勝ちだ!」
クノがなぜか胸を張る。
「きいいいいい!見てなさい!はああああああ!!」
「はっはっは!無理なようだなあ!!」
二人がしゃべっているのをほっておいて、オレはミコさんと話をする。
「ちょっとわかったことがある。オレのスキルは消費MPがゼロになるらしいんだけど、そもそも発動に必要なMPを満たしていない魔法は使えない。」
「なるほど。持続力は無限でも、最大火力が上がるわけではないと。」
「そうなんだ。あと、MPが尽きたら消費ゼロになるスキルのせいで、MPがずっと増えなかったのかもしれない。」
「それは盲点でしたね……。」
「じゃあ、MPを上げれば、どんどん強くなるってことじゃない!」
鎖につながれたままマチがいう。
「ミコ、MPってどうやってあげるんだ?私にはイメージがつかないが。」
戦士、武闘家のクノがミコさんに聞く。
「一般的には、魔法力が枯渇するほど、実践とトレーニングを積み重ねるしか、ないんですが。体力と一緒ですよ。でも、ライトさんの場合は…」
「そうか、おれの場合は、MPが尽きたら消費MPがゼロになるから全くMPが増えなかったわけか…」
こんな弱点があったとは、おもわず空を仰ぐ。
「でも、まったく増えないってことはないってわかったじゃない!」
鎖につながれたままマチが叫ぶ。
まあ、それはそうだ。
「それにこれ以外にもいろいろ使えるようになったんでしょ!試してみなさいよ!」
「……ちょっとやってみる。」
◇
試してみると、かなり驚いた。
火力の高い攻撃魔法、武器強化、防御力上昇。
MPが15になったことで、使える魔法の幅がかなり広がっていた。
「あんたすごいじゃない!!」
マチが目を輝かせる。
「たりゃあああああ!!」
クノがオレの武器強化をかけた斧で大木を一刀両断した。
どごん、と重い音がして、大木が地面に倒れる。
「すごい切れ味ですね。これほど魔法を連発してもなんともないんですか?」
ミコさんが少し遠い目をしながら言う。
「ああ、問題ないよ。」
そう答えながら、ふと思った。
同じ頃に魔道士になったエティは、もうずっと先にいる。
オレがようやく使えるようになった魔法を、あいつはずっと前から使いこなしていた。
まあ、あいつはあいつだ。今のオレには今のオレのやり方がある。
「そろそろ課題が発表されますよ。」
ミコさんが課題が発表される集合場所の方向をみながらいった。
そうだった。新しいパーティー課題の発表がある。
合格できないと赤点。赤点が続くと退学だ。
なお、マチとクノはすでに筆記試験で赤点を出していて、オレは体力テストで赤点を出していた。
全員一度もミスれない状況だ。
「クククク、どんな討伐対象が出るか楽しみだ。」
クノが指を鳴らす。
「アタシも準備万端よ!」
マチが勇ましく声を上げる。
……縛られたまま。
俺たちは集合場所にむかった。
「ちょっとアタシを忘れないでよおおお!」
まだマジックチェーンに縛られたままのマチが叫ぶ。




