冒険者パーティー養成学校、はじまる
追放されてから一週間。
マチと出会い、いくつかのモンスターハンティングをこなした。毎日がワクワクして楽しかった。
今朝もギルドでマチと朝ごはんを食べている。そのとき、マチがなにやらチラシを机の上にたたきつけた。
「ライト、アタシといっしょに冒険者パーティー養成学校に入るわよ!」
「え?」
オレはジュースを飲みながら、チラシに目をやる。
『領主直轄・冒険者パーティー養成学校 受講料無料 修了者には冒険者およびパーティーランクC認定』
「……なにこれ。」
「いいでしょ!モンスターハンティングの実習もあって、そこで稼いだお金から学費が出るみたい。しかも卒業したら冒険者ランクとパーティーランク、両方でCがもらえるのよ!場合によっては警備隊への就職もできるって!」
「警備隊……案外、ちゃんと将来のこと考えてるんだね、君。」
「うるさいわね!」
マチは顔を赤くしながら続ける。
「アンタだって、基本魔法しか使えないままだと大きな仕事とれないでしょ。アタシも、剣術の基礎を、いえ……剣術のさらなる高みを目指したいのよ!」
あ、この子、そもそも剣術まるで素人だったのか。
周りを見渡すと、同じチラシについて話し合っているメンバーも多い。そりゃそうだ。パーティーランクDとCの差は、実際かなり大きい。ソロでCをとれてもパーティーでCになれるかは別の話で、しかも学校なら命の危険もはるかに少ない。
「パーティーランクまでもらえるのは、たしかにすごいな。」
「でしょ!途中で解散したらダメだけど、卒業まで一緒にいればOKなの。アンタとアタシなら、うまくやれそうじゃない?」
そう言われると、素直にうれしかった。
アイアンベア戦以来、オレたちの連携はすっかり板についていた。マチが弱点を見つけ、オレが補助と魔法で畳み掛ける。シンプルだが、これが恐ろしく噛み合う。弱点のないやつは全力で避けるというのも、息ぴったりだった。
「うん、おもしろそうだ。」
「そうでしょう!じゃあ、一緒に申し込みに行くわよ!」
こうしてオレとマチは冒険者パーティー養成学校に申し込んだ。
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「おい、ヨウジ、エティ、これを見たか!」
ダイが二人に冒険者パーティー養成学校のチラシを突きつけた。
「見たけど……まさかアンタ、私たちに入れって言いたいの?」
エティがいやそうに眉をひそめる。
「そうだ!これに入れば一気にパーティーランクがCになる。おまけに、ここで新しい仲間を探すこともできるぞ。」
「いやよ!めんどくさい!」
エティが腕を組んで即答する。
「だがな、エティ、少し考えてくれ。」
ダイが続ける。
「ライトがいなくなってから、魔道士を何人か入れ替えたせいで、今の俺たちの財布はかなりきつい。」
「だからアタシは最初から反対してたじゃない!」
「してねえよ!アイテム代を節約したいって言い出したのはお前じゃねえか!」
「……あいつに、もう一度声をかけるというのは、どうだろう。」
ヨウジが静かに口をはさむ。
「「絶対にいやだ(いやよ)!」」
ダイとエティの声が重なった。
「……わかった。」
ヨウジは黙って引き下がる。
「まあ、技術を上げながらお金ももらえるというのは、お得といえばお得ね。それにもしアンタたちと別れることになっても、冒険者ランクはCになるみたいだし。」
「はじめから別れる前提かよ!」
「そんなこと言ってないわよ!アンタが途中で逃げ出すんじゃないかと心配してるだけよ!」
「その言葉そっくり返してやる!」
怒鳴り合う二人を見ながら、ヨウジはぼんやりと思った。
ライトがいた頃、こんな口喧嘩は——なかったな。あいつはいつも、気づけば間に入っていた。オレがやっていたのと、同じように。
それが当たり前すぎて、誰も気にしていなかった。オレも含めて。
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「じゃあ、一緒に申し込みに行くわよ!」
ギルドの受付カウンターに向かうと、窓口の前に見覚えのある背中が三つ並んでいた。
ダイ。エティ。ヨウジ。
「……。」
オレは何も言わなかった。
「知り合い?」
マチが声を出しかけた。
「……まあ。」
「あー、そういうこと。」
マチは一瞬キョトンとしたが、すぐに察してくれた。
三人はまだこちらに気づいていない。エティとダイがいいあらそっている。ヨウジが受付に申し訳なさそうに立っていた。
オレたちは別の窓口へ静かに移動した。
「冒険者パーティー養成学校への申し込みをお願いします。」
「はい、お二人ですね。こちらにメンバーのお名前とパーティー名をご記入ください。」
パーティー名、考えてなかった。
あー、これか。あいつらが言い争っていたのは。
「どうする?」
おもわずマチに視線を送る。
「んー、難しいわね。」
オレは少し考える。
「”クエスター”ってどう?」
「探究者か、ありがちだけどいいんじゃない?覚えやすいし。」
マチは快諾してくれた。
「以上で申し込み完了です。入学式は来週の朝、ギルド前広場にお集まりください。」
「ありがとうございます。」
振り返ると、三人はまだ揉めていた。エティとダイの声だけが、ギルドの中に響いている。
「なんなのよ、ダイの考えた『サンバルオン』って!ださすぎるわよ!」
「うるさい!お前の『プリティア』こそ、男が名乗れるか!」
「行こう。」
オレはマチに声をかけた。
「……いいの?」
マチが小声で聞いてくる。
「何が?」
「あいつら、アンタの元パーティーでしょ。なんか言わなくていいの。」
「ほっとく。」
「え?」
「関係ない。それより飯でも食べよう。申し込み記念で何かおごってよ。」
「なんでアタシがおごるのよ!」
マチが声を上げた瞬間、ダイがこちらを振り向いた。
目が合った。
一瞬だけ。
オレは視線を切って、出口に向かった。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
マチが慌ててついてくる。
外に出ると、心地よい風が頬を撫でた。
後ろから、エティの声が聞こえた気がした。でも振り返らなかった。
もう、関係ない。




