1話「日常」
緑が美しい森の中で、1人の少女が大きな木の根を枕にして眠っている。
「ん……」
葉の隙間から光が差し込む、その光で私は目が覚めた。
「ふぁ〜」
私は体を起こして、まだ眠たそうなあくびと共に背伸びをした。
「見つけた!」
「うわぁ!ごめんなさい!!!」
後ろの草むらからもうひとりの少女が飛び出してきた。私はその声に驚いて思わず、声を上げてしまった。
「ハル!まーたサボってる!」
「いいじゃん別に〜とうさんもかあさんも、ベルにいさんもやってるのに、1人だけサボっててもねぇ?それに知ってる?働きアリとサボっているアリの話?」
「そういうのがダメなんだけど……」
ハルと呼ばれた少女はやれやれと言わんばかりに、腕を組んでニヤニヤしている。その様子を見た、草むらから出てきた少女はため息をつきながら、頭に手を置いた。
「そ・れ・に?ユユねぇさんは何やってるの?」
「ばっ……」
ユユと呼ばれた少女は顔を真っ赤にしながら、少し黙り込み、ハルの脳天に一撃ゲンコツを繰り出した。
「いてぇ!何するんだよ!」
「バカハルが居ないから探しに来たんでしょうが!畑にも家にもいないし……探したんだからね!!」
「頼んでないし!!」
「……!!」
ハルはユユの言葉に少し強めに怒ってしまった。ハルは言いすぎたと思い、振り返ると、ユユは少し泣きそうな顔でこちらを見ている。
「バカハル!!もう知らない!!」
「……あ………ご…」
ユユは怒りながら、森を走って出ていってしまった。
ハルは謝ろうとしたが、心の中で何かが邪魔してこれ以上言葉が出てこなかった。
ハルは少し言いすぎたな、でもまぁ後で家に帰ってから謝ろう。と思った。
すると後ろの方から気配を感じた。後ろを振り返るとベルにいさんととうさんがいた。
「ハル〜また姉妹喧嘩か〜?」
「ちょ、やめてよ!あはは!ベル…にいさん!あはは!!」
ベルと呼ばれた青年は目の前の妹をくすぐりまくった。ハルはずっと笑いながら「ベルにいさんやめて!!」と叫んだが、ダメだった。
「たく、お前たち姉妹はなんでこんなに違うかねぇ」
ハルがくすぐられているのを見て、とうさんはしゃがみこんで、口を開いた。
「女の子なのに男っ気があるハル、可愛いもの好きなユユ……どうしてかねぇ」
「し、知らねぇよ!!あはは!!」
ハルはベルにまだくすぐられている。ほんとにそろそろしんどい。
しかし、とうさんの言うとうりだ。
自分自身でもわかっている。どうして私はユユみたいな女の子になれないんだろうって。なんでお花詰んだり、おままごとするより、外で全力で遊んだり、木刀をベルにいさんに作ってもらって、近所の男の子たちと戦いごっこするのが楽しいんだろうって。わかってる。
そんなことを思っているうちに、ベルにいさんはくすぐる手を止めた。マジで辛かった。
「まぁ、けどそれがお前のいいとこなんだかな?」
「なにが……ぜぇ、ぜぇ」
「さぁ、それは自分で見つけるこったな」
意味わかんない?どこがいいところなの?
そういうと、2人は立ち上がり、森の出口に向かって歩き出した。
「帰ったらちゃんとユユに謝れよ〜」
ベルにいさんはそういうと、私が見えなくなるまで、手を振っていた。とうさんは何も言わず、まっすぐ森を出ていった。
私はふたりが見えなくなると、また木の根っこを枕にして寝そべった。
「帰ったらちゃんと謝ろう……ごめんって……」
そういうと私は目を閉じて眠ってしまった。




