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新たな友

あの夜からシャフィとはギクシャクしている。


極力互いに顔を合わせず済む様意識しているのは分かった。


ミアも私たちの様子に気づいているようだが

悲しい顔をしただけで特に触れてこなかった。

 

彼女に辛い思いはさせたくない。

 

そろそろ普通にコミュニケーションを取らなきゃな、と考えながら

市場でのおつかいを終え、家までの道のりをとぼとぼと歩いている最中だった。


「マリナ!」

 

左手の路地から呼びかけられた。

 

声がした方向に目を向けると、シャフィが遠慮がちに手招きをしている。

 

シャフィの横には大柄な男性二人組がいて、こちらを見ている。

 

初めてみる顔だ。

 

彼らの元へと向かい、挨拶をした。

 

二人組は体型にそぐわない繊細で柔らかい挨拶を返した。

 

一人は腰まで届くほどのストレートの長髪を持ちきめ細かな純白の肌をしている。


彼は「ルツ」と名乗った。

 

もう一人はシャフィのように髪をポニーテールでまとめ、筋肉隆々。


彼の名は「リャオ」

 

二人はシャフィの友人で私の話はシャフィから聞いていると言った。

 

なかなか会えなかったのは、行商に出ていたからで

数日前に戻ってきたばかりだそうだ。

 

ルツはリャオにぴったりとくっつき、

リャオが話すたびに彼の顔をしっかりと見つめていた。

 

リャオはそんなルツを気にしていない。

 

彼らは友達以上の深い関係なのかと感じさせられた。

 

私の視線に気づいたのか、ルツはにっこり微笑んで話した。


「僕とリャオは恋人同士です」


「あ、やっぱりそうなんだ。うん、見てたら分かるよ」


あっさり返す私を見ながら

リャオは焦った表情で、ルツを諫めた。


「……ルツ。みんなに俺たちの関係をべらべらしゃべるのは良くないって

 いつも言っているだろ。」


「なんで?僕はリャオの事が大好きだし、

素敵なリャオが僕の恋人ってみんなに知って欲しいんだよ。

それにマリナは家事手伝いなんて言ってるけど、

シャフィの義姉と言ってもいい。

マリナに隠す必要ないじゃん」


ルツが甘えた子どもの様に言う。


「マリナの事を信用していないわけじゃない。ただ俺は…。

 とにかく誰にでもこんな話をするなよ。

 マリナ。気を悪くしないでくれ。色々あるんだ…。」

 

「うん。分かってるよ。大丈夫」


 この国で同性愛はご法度だとミアから聞いた事がある。

 

憲兵に見つかれば有無を言わさず処刑される。


しかし街中には明らかに同性カップルと思われる者たちは存在していて

彼らは命を懸けて愛を貫いている。 

 

私は「誰にも言うな」と言われた時のルツの悲しげな表情に心が痛んだ。


それまで黙っていたシャフィが口を開く。


「まぁまぁ。痴話喧嘩はやめてくれよ。

ルツもリャオの言う事がもっともだって分かるだろ。

けど、リャオもリャオだ。言い方を考えろよ。

ルツに悪気はないんだから」


大柄な男性たちがシュンとして、一周り小さくなったように見える。

 

「うん…シャフィありがとう」

ルツはそう言いながら泣きそうだ。

 

リャオもぼそっと「すまん」と言った。


そこからはシャフィが話題を変えて、二人の行商の話になり盛り上がった。

 

時間がたつのも忘れてついつい話し込んでしまった。

 

私はおつかいの帰り道だったことを思い出し、 

二人にさよならを告げてシャフィとともにあわてて家に帰った。

 

シャフィとの気まずさも、いつの間にか無くなっていた。

 

その日からルツたちと食事をしたり遊ぶことが増えて、

私達四人は暇があればつるんだ。


シュメシュの日常にまた一つ楽しみが増えて

不安な気持ちも彼らと過ごす間は忘れられた。

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