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砂漠の紅華  作者: 馬来田れえな


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帰還

 私達は国王軍の生き残りと反乱軍を従えて

 メーレの都へと駆け戻った。


 メーレがティファンに制圧され、

 どのような状況になっているのか想像もつかない。


 侍女たちが無事に身を隠せているか

 気がかりだ。


 ライリカ達と合流して

 みんなの安否をこの目で確認したい。


 私の気持ちを理解しているのだろう、

 アディスはひたすらに馬を走らせる。


 時折、アディスが小さく呻く。


 左目の傷が痛むのだ。


 一刻も早く、医師に診せて

 適切な治療を受けさせなければ。

 

 私は無意識に歯を食いしばった。


「……これが、メーレ?」


都にたどり着いた時、

私達は全員言葉を失った。


砂漠で栄華を極め、

喧騒にまみれた賑やかな都は

ひどく荒れ果て様変わりしている。


建物は崩れ、

街は瓦礫に溢れている。


民が避難していた事は不幸中の幸いだ。


しかし、メーレを襲ったティファン兵の死体が

あちこちに転がっている。


倒壊した建物の下敷きになって命を落としたのだ。


ハゲタカが死体をつつき、

辺りには腐敗臭もただよっている。


宮殿が大きく損傷していることも確認できた。

  

「とにかく、生き残った者を探せ」


 アディスがハビエルに伝える。


 ハビエルは素早い動きで

 兵士たちへ端的に指示を出した。 


 兵士たちを見送ってから

 ハビエルとアディスが私を手招きする。


 二人に促され、進むと見覚えのある場所に着いた。

 

 ルツとリャオが捕らえられた東の牢だ。

 私はここから彼らをシャフィと共に逃がした。


 あの日の記憶が迫ってくる。


 あのあと、シャフィが……


 暗い記憶をかき消すように

 ハビエルが静かに言った。

「マリナ様、この先でライリカ達が身を隠しています」 


「え!?みんなは無事なの!?」


「はい、参りましょう」


 あの時は気が付かなかったが

 牢の奥には通路が伸びていたのだ。


 その先は入り組んだ迷路のようで

 進むうちに私は方向感覚が分からなくなった。


 アディスとハビエルは

 この迷宮の地図を頭に叩き込んでいる様で

 迷いなく進む。


 私は彼らの後をひたすらついていった。


「皆、無事か!?」

 アディスが声をかける。


 闇の中から人の気配がする。


「……アディス様だ!」


「ナダ!」


 大好きな友の声。


「マリナ様もご無事で!」


「ライリカ!」

 

 侍女たちが泣き出した。


「みんな!無事でよかった!」


 私は彼女たちのもとへ駆け寄り

 全員を抱きしめた。


「怖かったでしょ!?ごめんね。

 でも、もう大丈夫!

 アディスが守ってくれるから!」

 

「マリナ様とアディス様のご無事を

 お祈りしておりました。

 マリナ様、お怪我はないですか?」


「私は大丈夫。でも、アディスが……」


 私の言葉に

 ライリカが眉をひそめ

 アディスの顔をながめる。


「まぁ!お顔をどうなされたのですか!?

 早く医師を!」


「なんでもない。かすり傷だ」


「ですが、見えていないのではないですか!?」


「……うるさいぞ、ライリカ!

 今は私のことなどどうでもいい」


 アディスが大きな声を出すと

 侍女たちは頭を下げ、黙った。


 アディスは都の安全が確かめられるまで

 治療は受けないつもりだ。


 早く、状況を把握して

 アディスをお医者さんに診せないと。


 「アディス様!ハビエル様!」


 一人の兵士が走ってきた。

 息を切らせながら、ハビエルに報告する。


「1名ティファン兵の生き残りを発見いたしました。

 かろうじて話はできますが、瀕死の状況です。

 尋問するなら、今しかございません」


「わかった。その者のところへ案内しろ」


 私達もアディスの後に続く。

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