愛にすがる
血相を変えたハビエルと兵士が
私たちを迎えに来た。
落馬した時に、馬が怯えて逃げてしまったのだが
主を失った馬は混乱して
離宮のそばでうろうろしていたそうだ。
馬を見つけた兵士が
私たちの身に何かあったのだと気づき
探しに出ようとすると
大地が揺れた。
捜索が遅くなり申し訳ないとハビエルたちは
何度も何度も謝罪した。
離宮には、非常時のために
食料や物資が整えられていた。
アディスがしっかりと管理していたので
内部の設備も問題なさそうだ。
少しは皆休息がとれるだろう。
とはいえ、せいぜい1週間程度の備蓄しかない。
幸いにも私の足は捻挫で済んだ。
しかし、アディスの左目の傷は深刻だ。
ハビエルが応急処置をしてくれたが
できるだけ早く医師に診せたほうがいいという結論になった。
アディスは皆を集めた。
「上皇アルフォスは死んだ。」
全員が息をのむ。
「先ほど、伝令を送った。
反乱軍ならびにメーレを占拠するティファン軍に
アルフォスの死はまもなく伝わるだろう。
統率者を失った軍の勢いは失われる。
相手が弱ったところに入り込むぞ」
「アディス。
さっきの地震もあったし、
メーレが心配。
私、ライリカたちに会いたい」
「案ずるな。
我々はここで一夜を過ごし
明日メーレに戻る」
「ティファン軍と戦わなきゃいけなくなるよ。
……どうするの?」
「戦う必要はない。
以上だ。
明日に備えて、今日は皆休め。
交代で見張りにつくように」
それだけ言って
アディスは、その場を後にした。
メーレに戻れば
ティファン軍と衝突する。
ここにいる誰もが分かる事だ。
しかし、
王は何か考えがおありなのだと
そう皆確信していた。
誰もアディスに意見する者はいなかった。
この場にいる全員が、
王を心から信頼している。
――
砂漠の夜は相変わらず冷える。
私はケープを体に巻き付け
寝床を出て庭に出た。
今夜は眠れなさそうだ。
戦をしていても
メーレの都が占領されていても
今夜も満点の星空。
美しい。
血生臭い光景をいくつも見た。
優しいナイルを失い、
守ると決めたアディスを
危険にさらした。
自分の力不足だと感じざるを得ない。
夜は魔物だ。
何事もネガティブな方向へと
思考を持っていかれる。
暗い考えを払い落とすかのように、
私は首を振った。
「こんなところにいては
風邪をひくぞ」
真横にアディスが立っていた。
包帯を巻いた左目が痛々しい。
「アディスこそ、少しは眠らないと
体がもたないよ」
私を小馬鹿にした様子で続けた。
「俺を誰だと思ってる?
シュメシュ国王だぞ。
戦に出れば休息など
あるわけがないだろう」
良かった。
いつものアディスだ。
「そうだったね、アディス様~
国王様~失礼しました~」
「くだらない事を言っている暇があるなら
王妃としての務めを果たせ」
出た。
王という立場を利用した
変な要求。
「なんだ?
その不満気な顔は。
早くこっちに来い」
何をさせられるのかと思ったら、
自分に抱き着けということのようだ。
これが王妃としての務めだとは
全く思えないけど、
拒否すればまた小言が始まる。
観念して私はアディスの腕に
包まれる。
「あったかい……」
「だから来いと言ったんだ」
どちらからともなく
唇を重ねる。
舌が互いに絡みつき
まさぐり合う。
呼吸が乱れてくる。
「やっ!……アディス!」
アディスの指が
私の太ももを這い、
秘部を撫で上げる。
「……唇を奪うだけで潤う様になったな。
愛おしい」
「誰かに見られたらどうするの!?
……やめてよ!」
「見せてやればいい。
本当にやめていいのか?
ここ《・・》は、求めているようだが」
アディスは
私の中を優しく、ねっとりとかき混ぜ始めた。
おかしくなりそう。
私は声を押し殺して、アディスにしがみつく。
アディスは私の蜜で濡れた指を
厭らしく舐めた。
「甘いな……卑猥だ」
そうつぶやくと
アディスは私の両足を無理に開かせ
昂ぶった彼自身で私を貫いた。
甲高い叫びをあげた私に構わず、
アディスは腰を打ち付ける。
深く激しく。
アディスがたぎるように熱いものを
私の奥深くに注ぎ込んでも
まだ収まらず、
何度も何度も
私達は一晩中愛し合った。




