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砂漠の紅華  作者: 馬来田れえな


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奪われど燃え上がる

「ふざけた真似を!」

 

アディスがこんなに怒り狂うのを見たのは

いつぶりだろうか。


ティファン国が

上皇率いる反乱軍と同盟を結び、

共闘する意志を明らかにしたとの情報が

入ってきた。

 

ティファン国が

シュメシュを攻める理由は明白だ。


アディスと許嫁関係にあった

ティファン国第三王女ファトウマとの婚約破棄、

かつ彼女を罪人として処刑したことは

いまだに和解できていない。


ティファン国王は

アディスを憎んでいる。


この挙兵は、ファトウマの敵討ちだ。


「全軍!一旦引け!!」


アディスが撤退命令を出した。


「ダメです!アディス様!

間に合いません!」


7万と1万の軍勢が

砂塵を巻き上げ、ぶつかった。


そこからはあまり覚えていない。


アディスは私を抱きかかえて

馬に飛び乗り、 

これまでにない位の全速力で

馬を走らせた。

 

アディスの腕の中で、

土埃と喧騒にまみれて

砂丘を抜けた。

 

たくさんの血が流れ、

兵士が次々と倒れていくのを

何度も見た。


地獄のようだった。

 

沢山の兵士が、

私とアディスを逃がすために

身を挺して戦った。

 

彼らは


「マリナ様をお守りしろ!」

 

「アディス様とマリナ様に

 この身を捧げるんだ!」


と口々に叫び続け

散った。 


みんな

私たちの為に

命を捨てたのだ。


涙が止まらなかった。


後に分かった事だが、

ティファン国王軍10万。


ティファンは、

ありったけの兵士をかき集め、

この戦に臨んだ。

 

ティファン国の

圧倒的な武力に押され、

シュメシュは

手も足も出せなかった。


メーレの都に帰還できたのは

たった900人。


現実は無慈悲なもので、

さらに悲劇は続く。


私達がやっとの思いで

メーレに帰った時、

そこはすでに

ファティン国に制圧されていた。


「ねぇ、アディス。

どうなってるの?

都は?王宮は?

ライリカたちは!?」


もう最後は言葉になっていない。

涙と鼻水でめちゃくちゃだ。


メーレの外れで

数日間身を隠して過ごしていた。


私達と行動しているのは

ハビエルと軍隊長、護衛の数名だけだ。


生き残った兵士たちも

戦場の混乱でバラバラになってしまった。


「マリナ様、落ち着いてください。

ライリカたちは大丈夫です。

有事の際、宮殿の地下より避難することを

王宮に仕える者は皆心得ております。

必ず、無事に合流できますから」


ハビエルがパニックになる私をなだめる。


「私のせいで!私を守ろうとして

沢山の兵士が……!」


「王妃様がそのようなことで

どうするのですか!?

この状況だからこそ、お気を強く

持たなければなりません!」


それまで無言を貫いていた

アディスが重い口を開いた。


「今の我々に、

王宮奪還の気力は当然ない。

メーレを逃れ、

シュメシュ西部へ撤退する」


なんて?

もう私たち帰れないの?


「アディス!バカな事言わないでよ!」   


私に怒鳴られても、叩かれても

アディスは抵抗しない。

ただ目をつぶって、

私の怒りが収まるのを待っている。


「メーレには、たくさん思い出があるんだよ!?

王宮を捨てるの!?

それに……私

シャフィたちを置いていけない!」

 

身勝手な事を言っている自覚はあった。

もうどうしようもないことも分かっていた。

でも、黙っていられない。


「マリナ様……」


「おい、マリナ。

 黙って聞いていれば……

 勘違いもいい加減にしろ。

 誰が、メーレを捨てると言った?

 これは一時撤退に過ぎない。

 西に移動し、そこで時を待つ。

 俺を誰だと思っているんだ?

 シュメシュの王が、

こんな舐めた真似をされて

 黙って逃げるわけがないだろう」

 

 そう言って、

アディスは白い歯を見せて笑った。


この絶望的な状況で

笑う。


それが私たちの王様。


私が愛したアディスという

男だ。


アディスの言葉を受けて、

みんなの顔に安堵の表情が広がる。


「しかし、アディス様。

問題がございます。

追手が迫ってきているとの報告、

この人数でも

太刀打ちできるか甚だ疑問です。

我々の身をもってしても、

アディス様とマリナ様お二人が

逃げおおせるか……

厳しいところですね」


ハビエルがとんでもないことを言い出した。

 

「やめて!

もう誰も死んでほしくないの!

お願いだから、

みんなで生き延びる方法を考えてよ!」

 

私の言葉に誰も返事をしない。

 

アディスがため息をついた、その時だった。

 

「やぁ、アディス。

待たせたね」


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