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砂漠の紅華  作者: 馬来田れえな


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二重包囲網

予定していた時刻より少し早く

沈黙の砂丘群に到着した国王軍は、

本陣を固めた。 


さすが、砂漠の民というべきか。


砂丘の独特な地形を活かして

敵から身を隠せるような場所を選び、

各部隊がそれぞれの配置につきはじめた。


今のところ問題はなさそうだ。


私はアディス、ハビエル、

数人の護衛兵とともに

本陣から戦の行方を見守る。

 

本陣は、後方に位置していて 

全体の陣形がよく確認できる場所だった。

 

騎馬隊が囮となり、

真正面から反乱軍と対峙するという作戦が

あまりにも安直な気がして

不安はぬぐえない。


私の心配を見抜いたのか、

「北方の戦士は、

敵に対し真正面から立ち向かう。

何者も恐れずにぶつかっていく。

それが北の戦士の誇りなのです」

と、ハビエルが教えてくれた。


なるほど。

 

北方の戦士で集められた反乱軍は

真っ直ぐ突っ込んでくるに

決まってるってことか。

 

「……じゃあ、アディスの考えた

挟み撃ち作戦は

ちょっとずるい気がするね。

相手の行動を利用する感じっていうか、」


私の文句が聞こえたのだろう、

作戦の言い出しっぺが声を荒げる。


「真っ直ぐにしか走れない

時代遅れの戦など、

このアディスがやるわけないだろう?」


不機嫌さを露にしながら、

アディスは

左右から総攻撃を仕掛けるタイミングを

軍隊長と各部隊長へ指示を始めた。

 

ハビエルはそんな私たちのやり取りを見て

苦笑気味。

 

でも、そんなハビエルも

昨夜は私の脱走にかなりキレていて、

どうやってライリカの目を盗んで抜け出したんだと、

散々問い詰められた。

 

彼の小言をBGMにして

沈黙の砂丘群へやってくる羽目になるとは思わなかったが、

文句を言いながらも

侍女たちが私の失踪に気づき大騒ぎする前に、

王宮へ伝令を飛ばしてくれた。


戦が終われば、

ハビエルとアディスからは

きついお説教をくらうだろう。


「全軍、準備は整った!

これで反乱軍は袋のネズミだ!

全員心してかかれ!!!」


アディスの号令に

軍隊長たちは敬礼をして

持ち場に散った。

 

「反乱軍をここで一気に掃討する。

瞬きの間に、戦は終結するだろう」

 

アディスは軍隊を眺めてつぶやいた。


その時、 

遠くの方から

怒号と地鳴りが響き始めた。

 

「申し上げます!反乱軍です!

まっすぐ北の方角より

反乱軍が攻めてきています!!」


伝令が飛んできて、

早口で報告する。


「十分に引き付けろ!」

アディスの命令に、皆が従う。

  

地響きが

だんだんと近づいてくる。

馬の駆ける音、

兵士の叫び、

砂丘が彼らの怒りと共に

揺れ始めた。

 

心臓にずしり、ずしりと

重たくのしかかってくるようだ。


「アディス様!

反乱軍、約7万程度の軍勢と

見受けられます!」


伝令が知らせを届けに

本陣へ転がり込んでくる。

 

(7万の反乱軍!?

国王軍は1万しかいないのに……)

 

数では絶対に勝てっこない。

 

いくら精鋭の集まりである、

シュメシュの国王軍だとしても

無理がある。

 

私は反射的にアディスを見上げる。

 

しかし、我らの氷の王は

「よくこれだけの人数を

この短期間で集めたものだ。

統率も一応は取れているようにも見える。

父もなかなかやるではないか」


と、感心している始末。


呑気の極みだ。

 

こちらの気が抜けてしまう。

ここ、戦場だよ。

もっと緊張感持てないのかな。


何気なく、後ろを見やる。

 

砂丘が美しい稜線を描いている。

 

こんなロマンがある場所で

戦争なんて

するべきじゃないのに。

 

あれ?

 

なんか違和感がする。

 

砂がものすごく舞い上がっているような……

地鳴りも感じ始めた。

 

ハビエルも怪訝な顔つきで

後方を見つめている。


「アディス?

なんかおかしいよ?

後ろ、東の方が……」

 

私の言葉は、

血相を変えた伝令にかき消された。

 

「アディス様!!!」

東からも軍隊が押し寄せています!」


「なんだって?」


「我々、国王軍は……

挟まれています!」


伝令は動揺して上手く喋れていない。


「あの旗……ティファン国ですね」

 ハビエルが感情のない声で言い放った。


「ちょっと!どういうこと!?

ティファンがなんで!?」


もう後がない。


反乱軍は、すぐそこまで来ている。


このままじゃ、国王軍は

やられてしまう……

 

「アディス様、

我々が袋のネズミだったようです」

 

ハビエルはこの状況下であっても、

冷静さを崩さなかった。

  

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