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砂漠の紅華  作者: 馬来田れえな


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45/58

覚悟

 至って冷静だった。


 有能な大臣たちが青ざめながら

 作戦会議の用意をするのを、

 俺はまるで芝居を鑑賞するかの如く

 眺めていた。

 

 父を告発し、宮殿から追い立てたあの時に

 心の底ではこうなることも

 予想できた。


 獰猛な獅子のような父だ。


 あのような屈辱を味わったあとで

 大人しくしているわけがない。


 皮肉なもので、

 あの男の息子であるがゆえに

 相手の思考は

 いとも簡単に読み取れてしまう。


 「アディス様、我ら軍隊は

 いつでも進軍可能です。

 いかがいたしましょうか」


 軍隊長が口を開く。


 反乱軍迎撃のため、国王軍は

 すみやかに軍備を整えている。

 ハビエルの指示が的確だからだ。


 軍隊長の後ろには

 弓兵隊長、戦車隊長、騎馬隊長が

 真剣な眼差しをこちらに向け

 俺の命令を待っている。


 「反乱軍を決して

 メーレに踏み込ませるな。

 砂漠で奴らを叩き潰す」 

 

「こちらの思惑は読まれているでしょうね」 


 相手は父だ。

 当然、シュメシュの戦法は把握されている。

 

「反乱軍は、北から攻めてきているんだな」


「はい!国王様、

最北セメトより反乱軍はまっすぐに南下。

とにかく最短距離で、

都メーレを目指している模様でございます!」

 

 若き弓兵隊長が地図を指し示し

 緊張した声で告げた。

 

 軍隊長からの熱い推薦を受け、

 弓兵隊長に選ばれた有望な若者だ。

 彼の初仕事でもある。

 

「全く、呆れてものが言えないな。

 相手は周りの見えなくなった動物にすぎない」

 

「アディス様、つまり……」

 

 軍隊長が納得した面持ちで頷く。

 

 軍隊長も俺と同じことを考えていたようだ。

 そうでなくては、軍隊長など務まらない。

 

「ああ、因縁の場所で決戦だ」


「そうなると、ここですね」


 軍隊長が地図の一点を指さした。

 

 砂漠はただの平原などではない。

 

 砂丘と呼ばれる大きな砂の壁は、

 砂漠を越える旅人を阻むのだ。


 「ああ。「沈黙の砂丘群」で奴らを囲い込む」


 沈黙の砂丘群。


 シュメシュ王国メーレの都より

 北東側に広がる、広大な砂丘地帯。


 見事な景観が望めるが

 古来より戦場として

 多くの血が流れたいわくつきの場所でもある。


「我を忘れた怒れる獅子であったとしても、

 父は沈黙の砂丘群には警戒しているはずだ。

 歴代の王が戦い、国土を守った砦でもある砂丘群で

 シュメシュ王国へ反旗を翻した愚かな父を葬ることは

 父への報いであり、歴代の王の誇りを守ることだ!」


 家臣も軍隊長たちも上皇を討つことに

 恐れを感じているのが

 肌で分かる。


「我々の勝利は、シュメシュ王国のためだ」

 

 俺の言葉に

 全員の目に再度輝きが戻った。


 全員が覚悟を決めた合図だった。

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