表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
砂漠の紅華  作者: 馬来田れえな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/58

歓声の先に待つ月夜

その後、

私達は再び輿に乗り、

護衛に守られながら王宮へと戻った。


倒れた下級兵も無事に帰る事ができて

ほっとした。


「私たちのマリナ様は本当にすごい!

下級兵士の命を救うんだもの」


「わたくし共、お優しく愛に溢れたマリナ様に仕える事は

最高の幸せにございますよ」


ナダとライリカは道中ずっと私を褒めたおし、

自分たちがいかに恵まれた従者であるかを延々と語り続けた。


大きな歓声と音楽が聞こえてくる。


メーレの都に帰ってきたのだ。


「マリナ様!民が出迎えていますよ!」


ナダは興奮気味だ。


メーレの都の門には、

人々が詰めかけていた。


婚儀から戻った王と王妃を一目見ようと、

集まってきたのだ。


皆口々に私とアディスの名を呼んでいる。


(愛おしいシュメシュの人々……)


シュメシュの人々からは愛と元気を

もらえる。


私は出迎えに来た民衆に手を振り、

感謝の笑顔を向けた。

 

本当は一人一人の目を見て

挨拶がしたいくらい。


それは叶わないほどの人が集まっていて、

私はできる限り多くの人へ視線を交わし

民の歓声に笑顔で答えた。


(あなた達一人一人を愛しているという

この気持ちが皆に伝わりますように)


そう祈った。


輿が止まると、

アディスが私を降ろしに来た。


毎度のことだが、

私を軽々とお姫様抱っこで抱え上げる。


冷やかしの混じった歓声が上がった。

 

いつまでたってもこれだけは慣れない。

 

「マリナ。民へ我らが夫婦となったことを伝えるぞ」


私は改めて周囲を見回し、驚いた。

 

民に開かれた今日の宮殿には、

アディスが結婚宣言をした時より

何倍もの人々が集まっていたのだ。


シュメシュ全土から民が、はるばるメーレへ

やってきたといってもおかしくない。


私は今更ながら

自分に課された責任の重さを肌で感じる。


アディスの腕の中で私は決心した。


(私がここにいる人たちを守るんだ)

 

アディスが民へ語り掛ける。


「シュメシュの民よ!

我はマリナを正式に妃として娶った!

これを以って、マリナはシュメシュの王妃となる。

我らの婚姻はシュメシュの神がもたらした祝福とともに、

シュメシュをますますの繁栄へと導く事になろう!!」

 

これまで見せた事がない、少年の様な

屈託のない笑顔のアディス。


民もみんな笑顔だ。


私は王宮に集まった人々に向けて

力の限り手を振り続けた。


――

その夜、月は満ちていた。


満月の日には、心を揺さぶられるような

獣のように感情を乱される、

そんなことがよく起こる。


月は、呼吸を荒げて乱れる私を

静かに、でもあたたかく見守っていた。


神秘的な月夜、

アディスは私の寝所を訪ねてきた。


私達は無言で向き合ったあと、

当然の様に互いの衣を脱がせ合い、

抱き合った。


言葉なんか必要なかった。


恐ろしさはない。


私はこの瞬間を待っていたのだから。


私以上に息を荒くしている砂漠の王は、

絹のシーツの上で

私を何度も何度も鳴かせた。


純白のシーツは

私から漏れ出た艶やかな蜜で

じんわりと湿る。


「アディ……ス!アディス!」


うわごとのように愛する人の名前を呼んだ。

  

一度は仇として憎んだ相手だ。


まさかこの人の腕に抱かれる日が来るなんて、

あの頃は想像できなかった。


抵抗して自分も周りも傷つけた日々。


いつの間にかアディスを愛し始めたことに、

とめどない罪悪感を感じ自己嫌悪を繰り返した。


それでも

氷の王からの愛を無視することはできなかった。


「愛おしい……我が妃、マリナ……」


「んっ!いや!!あっ……ん!!!」


恥ずかしさと

気持ちよさが交錯して

快楽の渦に堕ちていく。


できることならば、このまま

夜が明けなければいい。


このままアディスと

まぐわり続けたい。


ずっとこうして、

王と王妃であることを忘れ

ただの男と女として。


快楽のままに。


「マリナ……

そなたはどこまで俺を狂わせるつもりだ……

昼間は咲き誇る花、

夜は艶やかな蝶のようなそなた……

愛している!……」


アディスが私の中で激しく動く。

 

「アディス!ア……ディス!ああ!!」

 

私達は同時に達した。


下半身の痙攣は収まらない。


余韻を感じながら口を開く。

「アディス……愛してる……」


「俺もだ」

 

このやり取りは今夜何度目だろうか。


アディスが私の胸を優しく触り続ける。


終わりは始まりだ。


今宵、何回アディスに潤され、鳴かされ続けるのか

見当もつかない。


ただ分かる事は

今私は世界一幸せな王妃であるという事だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ