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砂漠の紅華  作者: 馬来田れえな


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35/58

王妃のわがまま

ライリカに私は告げた。

 

ミアの故郷のこと。


ミアの結婚式のこと。


私もハレの日は真紅の衣装を着たいこと。


正直ダメもとだ。


ミアの息子は罪人として処刑されている。


前代未聞の異例、

アディスの独断で

罪人母子を宮殿の敷地内に埋葬した。


それだけでも

とんでもないお情けをかけてもらっている。


その上、王妃となる女が

罪人の出身地の伝統衣装を着て

婚儀に臨むなど、

ライリカは卒倒するかもしれない。


どうせ、王家の花嫁衣装はこの色で。

とか慣習があるに決まっている。

 

私のワガママが通るとは思っていない。


でも言うだけ、意見を述べるだけ。


後悔はしたくなかった。


ライリカは私の願いを聞くと

呆然とはしたものの

落ち着いてゆっくりと言葉をつむいだ。


「マリナ様のお気持ちはお察しします。

お母様の想いを尊重されたいのは当然でございます。

しかし、花嫁衣裳は王妃として

身につけるべきものが細かに定められておいでです。

かつ、恐れながら申し上げますが

お母様は罪人の母…という見方をされてしまうことも事実です」


そうだろう。


もういいよ、と言いかけたが

ライリカの口は止まらなかった。

 

「しかし、マリナ様からご自身が身につけられるものに

ご意見をいただきましたことも初めてだと承知しております。

いつもマリナ様は侍女が薦めるものを

何もおっしゃらずお召しになります。

王族の皆様におかれましては、こだわりが強い姫君も多く

慣習である装飾品を拒まれる方もいらっしゃいます。

多くの侍女が抱える悩みの一つでもありますのよ。

マリナ様はお立場をしっかりとお考えですから、

ご自身のお好みの前に習わしや慣習を重んじていただいている。

本当に王妃にふさわしい方だと、わたくしは日ごろより

痛感している次第でございます」


いや、それは違う。


衣装の数が多すぎて自分では選べないだけだ。


自分の好みが分からなくなるぐらい

目移りするほど

私は衣装持ちになってしまったから。


侍女に選んでもらう方が気がラクで

いつもおまかせにしている。


ただそれだけだったのに、

ライリカはそんな風に思っていたなんて。


「なので、初めてマリナ様よりお召し物のご意見を賜りました故

このライリカ、ハビエル様に上申して参ります。

ナダ、ついてらっしゃい」


「はーい」と間延びした返事をするナダを従え、

心なしか足取り軽く

ライリカは出ていった。


予想よりも短時間で

話し合いを終えて彼女たちは帰ってきた。


ライリカは清々しい表情をしている。

 

「マリナ様!

素敵な知らせをお持ちいたしましたよ」


珍しく興奮気味のライリカの様子に

私も笑顔になった。  


結論、

半分OK半分NG。


頭から足の先まで

南部の衣装に身を包むことはできないが、

装飾品の一部をミアの故郷のものを

身につけることを許された。

  

ライリカがあの頑固なハビエルを

どう説得したのかと思ったが、

何のことはない。


渋るハビエルに懇願しているところへ

アディスが現れ、

「マリナの好きにさせてやればいい」と

アディスの一声がかかり

ハビエルは「御意」と従うしかなかったということらしい。

 

早速ハビエルが

南部の婚礼衣装を手配するよう

使いの者を派遣してくれた。


みんなには

感謝の気持ちしかない。


彼らの優しさを肌で感じ、

どんな素敵な衣装を身につけることになるのかと

ワクワクしながら

私は床に就いた。

 

その夜はやけに涼しく、星空が澄んでいた。


ライリカは

砂漠の冷える夜は良くないと言って

私に厚手のローブを着せた。


毒を盛られて病み上がりでもある。


免疫が下がっている気もするし、

ライリカの言う通り

冷やさないように注意したほうがいいだろう。


ベッドに入ろうとした矢先、


「マリナ様。

アディス様がいらっしゃいました」

と声がかかる。

 

ライリカの声が

緊張しているように聞こえたのは

気のせいだろうか。

 

(それにしても、こんな夜遅くに訪ねてくるとは

王様もマメというか暇っていうか……)


「は~い、どうぞ~」


私の軽い返事のあとに

アディスが部屋へ入ってきた。


なんだろう。


苦しそうな、何かを抑えつけているような

いつものアディスと様子が違うような気がした。

 

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